小寺信良のメルマガ『金曜ランチボックス』より

就活生へあまりアテにならないアドバイスをしてみる

「ブームに巻き込まれる」という悲惨

「ニューメディア」なる言葉を聞いたことがあるだろうか。「あー、あったあった」とわかる人は、だいぶおっさんである。「ニューメディア」とは、80年代に続々と立ち上がった情報メディアの総称である。具体的には何があったかというと、

・キャプテンシステム
・衛星放送
・レンタルビデオ
・ファクシミリ
・ケーブルテレビ

などだ。「キャプテンシステム」など、みんな知ってるだろうか。電話回線を使って映像や簡易動画を送るシステムだそうだが、僕自身は現物すら見たことない。この中で僕が盛大に巻き込まれたのが、レンタルビデオである。

レンタルビデオ屋をやるわけではない。レンタルビデオで貸すための映画の字幕入れ作業が、大量に発生したのだ。音楽業界ではレコードによって大変革が起こった。それと同じことが映像の世界にもやってきたわけだ。

僕が最初に就職したのは、東北新社グループの技術部門だった。東北新社は映画のアフレコ業務で飛躍的に成長した会社である。成長のきっかけは1960~70年代にかけて、自前コンテンツが少なかったテレビ業界が、洋画やアメリカのテレビドラマを盛んに吹き替えで放映し始めたことにある。東北新社グループは、そのうち映画の買い付けや配給も手がけることになり、テレビと映画、両方の事業部を持つことになった。

レンタルビデオ事業は、アダルトビデオに支えられたという分析ものちに出てきたが、スタート当初は圧倒的に映画だった。最新映画だけでなく、もうどこの映画館でもかからなくなったような旧作、古典もシリーズ化することで、バンバン金を生むようになった。

業態が立ち上がって2~3年も経つと、変なものが流行るのが世の中の常である。ほどなくして「B級ホラーブーム」なるものが巻き起こった。裏方はもう大変だ。たいして面白くもない、気持ち悪いだけの映画に字幕を入れるのは、軽い拷問である。

ちょうどまた悪いことに、男女雇用機会均等法が1985年に施行されたため、われわれ技術屋チームに入ってきた僕の一学年下の後輩は、半分ぐらいが20歳そこそこの女の子だった。怖くて観られない、泣いちゃって仕事にならない、という状態をなんとかなだめすかしながら、仕事を前に進めなければならない。こっちはもう「死霊の盆踊り」とかタイトルで爆笑している場合ではないのである。

1 2 3 4

その他の記事

コタツ記事問題(やまもといちろう)
そんなに「変」じゃなかった「変なホテル」(西田宗千佳)
美食の秘訣は新月にあり(高城剛)
創業メンバーをボードから失った組織の力学(本田雅一)
太古から変わらぬ人間の身体と変わりゆく環境の間を考える(高城剛)
縮む地方と「奴隷労働」の実態(やまもといちろう)
同調圧力によって抹殺される日本式システム(高城剛)
個人の情報発信で考えていること(やまもといちろう)
ゲームにのめりこむ孫が心配です(家入一真)
子どもが飛行機で泣いた時に考えるべきこと(茂木健一郎)
ダンスのリズムがあふれる世界遺産トリニダの街(高城剛)
誰も無関係ではいられない「メディアの倫理」(小寺信良)
変化が予測できない時代(本田雅一)
秋葉原の路上での偶然の出会いこそが僕にとっての東京の魅力(高城剛)
先行投資か無謀な挑戦か ネット動画事業に関する是非と簡単な考察(やまもといちろう)

ページのトップへ