小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

画一化するネットの世界に「ズレ」を生み出すということ

※この記事は小寺信良&西田宗千佳メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」2014年12月26日 Vol.016 <歳は勝手に暮れていく号>の冒頭です。

eff60dc6e7f134a8ca32fec47d974c16_s-compressor

さて、今号で本メルマガも年内最後の発行となる。年内最後の号は、西田がメインを担当する。

合併リニューアルもあり、読者の皆様には色々とご心配もおかけしたかとは思うが、なんとか来年に向けて、何事もなく続けていけそうな雲行きである。合併から4カ月程度で、総括もなにもあったものではないが、ようやくワークフローも落ち着き、2人で回しながら(間に編集担当などの協力者もいるのだが)やっていける目処はついてきた。

やっぱり合併してみて思うのは、「コラボレーションの大切さ」だ。ひとつの話題でも、思っていること・考えていることは色々ある。個人メディアは自由に書けるメリットがある一方で、その内容の妥当性を「自分で問い直す」のはなかなか難しい。しかし、メディアが一人のものでなく「一緒に作るもの」であるならば、自然と「問い直す」行為を繰り返すことになる。

主張することは大切なのだけれど、「その主張が正しいのか」「それを他の人が見るとどう感じるのか」ということに思いを巡らせるのも、また大切なことだと思っている。誰かの意見を読みたい、と思うのは、そうしたことの現れだし、書き手にとっては論の補完でもある。

もちろん、めんどくさいこともたくさんある。自分一人でメルマガをやってた時に比べると、正直作業量は増えた。わりと毎回ギリギリだ。毎週やるのはやっぱり大変だ、と思う。

「メルマガって儲かるんですか?」と聞かれることもあるが、ぶっちゃけ儲からない。圧倒的な「人気者商売」であり、テレビで顔を売っているような人がやって、初めて利益につながる。私達のような(というと小寺さんにちょっと失礼かもだが)局地戦型の書き手では、圧倒的な数を集めづらく、儲けもそこそこでしかない。

しかし、そこで気付かされることから得られる内容を思えば、そこに価値はある、と思うのだ。また読者の方からも「2人の意見を読めるから面白い」というお声をいただくことが多い。

ネットが登場し、世の中はもっと多様になる、と思っていた。1990年に大学で、1994年に個人として初めてインターネットに触れた時、「21世紀は多様性の爆発になる」と思ってワクワクしたものだ。だが、実際の世の中は違った。ネットを楽に使うため、人々は自分が快適と思う枠組みの中で情報を集める仕組みを多用するようになった。SNSはその最たるものだ。ネットを使うようになって、我々の視界はむしろ狭くなっている。

そんな中で、ちょっとでも「このおっさん達、似ている話をしているようでなんかずれてるぞ」という、ズレ芸を楽しんでいただける場として、今後もこのメルマガをつかっていければ、と思っている。

 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2014年12月26日 Vol.014 <歳は勝手に暮れていく号>目次

01 論壇(西田)
イーフロンティア破綻で振り返る「パッケージPCソフト事業」の変化
02 余談(小寺)
最後の買物、4K Vieraの秘密
03 対談(小寺)
PTAとは一体何か (3)
04 過去記事アーカイブズ(西田)
ビデオカメラはどこへ行く
05 ニュースクリップ(小寺・西田)
06 今週のおたより(小寺・西田)

12コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。

 

ご購読・詳細はこちらから!

 

筆者:西田宗千佳

フリージャーナリスト。1971年福井県出身。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。

その他の記事

iPhone6の画面サイズにみる「クック流Apple」の戦略(西田宗千佳)
東京の広大な全天候型地下街で今後予測される激しい気候変動について考える(高城剛)
ネットも電気もない東アフリカのマダガスカルで享受する「圏外力」の楽しみ(高城剛)
DJ用コントローラを作りながら電気自動車を自作する未来を夢見る(高城剛)
安倍三選と野党支持低迷時代の思考法(やまもといちろう)
川端裕人×オランウータン研究者久世濃子さん<ヒトに近くて遠い生き物、「オランウータン」を追いかけて>第3回(川端裕人)
冬の間に眠っていた体内の問題が目を覚ます季節(高城剛)
もし朝日新聞社が年俸制で記者がばんばん転職する会社だったら(城繁幸)
「歴史的」南北会談が東アジアの安全保障に与える影響の有無(やまもといちろう)
「疑う力」を失った現代人(名越康文)
古い枠組みから脱するための復活の鍵は「ストリート」(高城剛)
開成中高校長「『勉強しなさい』を言ってはいけない」教育論の波紋(やまもといちろう)
継続力を高める方法—飽き性のあなたが何かを長く続けるためにできること(名越康文)
柊氏との往復書簡(甲野善紀)
ロシアによるウクライナ侵攻とそれによって日本がいまなすべきこと(やまもといちろう)

ページのトップへ