小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

結局Apple WatchとAndroid Wear搭載Watchは何が違うのか

※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2015年6月5日 Vol.037 <本質はどこだ号>より

a80a10124c297d6cb2ffc54208e129a7_s

4月下旬にApple Watchが発売され、その話を書こうと思っていたのだが、その後ドローン騒動があってそれどころではなくなってしまった。せっかく発売日に買えたのに、何もしないのでは勿体ない。しかも比較のために、Android Wear搭載のスマートウォッチも購入してあるのだ。もう興味も一段落したところだろうが、ここで改めて両方使ってみた所見などを述べてみたいと思う。

見た目としてどっちがかっこいいか、どっちがブランディングとして上手いかという話にもなりがちだが、今回はそういう話ではなく、実際に使ってみてどうか、というところに集中したい。

Apple Watchを実際に使ってみると、利用目的がはっきりしているように思う。以前からNikeと組んでランニング時のデータを収集するなど、デジタルヘルスケアという側面では長い経験がある。アクティビティログが自動的に計測され、1時間に1回は立って歩き回れと催促してくる。

facebookの書き込みや新着Messegeも教えてくれるので、コミュニケーションのタイミングも逃さない。ただ返信は音声入力しかないので、そこまでやるかどうかは時と場合による。音声入力では済まない込み入った返答が必要なケースもあるからだ。

またアプリの存在も、目的を持って使うと言う点で際立っている。クックパッドアプリは、iPhone側と連動して同じレシピが表示され、そのレシピに必要な待ち時間、たとえば8分焼くなら自動で8分間のタイマー機能まで提供してくれる。

iPhoneの機能を拡張する子機として、能動的に使っていくことを目的として作られており、何ができるのかが非常にわかりやすい。

一方Android Wearは、人が生活する上でのアシスタントになるという方向性が感じられる。スマホでAndroidを使っている人はご存じかと思うが、Android特有の機能にGoogle Nowがある。画面を下から上にスワイプすると表示される機能で、メールから自動抽出したスケジュールや目的地までのナビゲーション、天気といった情報が自動的に表される。

Android Wear搭載のSmart Watchは、要するにそれの表示器になるわけだ。もちろんSNSの新着なども知らせてくれるが、Googleカレンダーとも連動しながらスケジュールを知らせてくれる機能は秀逸だ。目的地に時間どおり着くためには、現在時点を何時何分に出ないといけないといった情報を、勝手に計算して教えてくれる。またメールの内容を解析して、Amazonからの荷物が家に配送されたといった情報も表示する。

正直、スマートフォンを使っている時は、Google Nowはうっとうしいので使っていなかった。それは、スマホを使う時には明確な目的があり、特定のアプリを使いたいときにしかスマホを使っていなかったからである。スマホ買ってもらったばかりの高校生じゃあるまいし、大の大人は意味もなくスマホをチェックしたりなどしないだろう。

だがGoogle Nowのディスプレイ装置が腕に付いただけで、表示される情報がとたんに面白く化けたんである。正直いうと、役に立たない情報も少なくないが、次にどんな情報が出てくるのか予想が付かず、コントロールもできないので、逆にそういうところが見ていて楽しいのだ。

僕個人としては、家に居るときはアラームや電話応答などがあるのでApple Watchを付けているが、外出しているときはAndroid Wearを付けている。どのみち1日中は電池が持たないので、2台を交代で使うとちょうどいいのだ。

先日のGoogle IOで、Google Nowに新しい機能「Now on Top」が加わることが発表された。ユーザーが自分に必要だとは気づかない情報を、必要になる前に提示するという。これはまさに、Android Wearが目指す方向と一致する。

人の行動のサポーターとして、AppleとGoogleどちらの方向性が正しいのか、結論を出すのはまだ時期尚早だろう。だが情報をエンタテイメント化することに成功しているのは、今のところGoogleだ。iPhoneにGoogle Now(というかGoogle App)をインストールすればApple Watchでも同じ挙動にできるとはいえ、Apple的にそれは本意ではないだろう。現時点でApple Watchは、いささか優等生すぎるように思う。

 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2015年6月5日 Vol.037 <本質はどこだ号>目次

01 論壇(西田)
携帯電話事業者は「流通」である
02 余談(小寺)
結局Apple WatchとAndroid Ware搭載Watchは何が違うのか
03 対談(西田)
「大江戸スタートアップ」が見る日本のスタートアップ事情(2)
04 過去記事アーカイブズ(西田)
Androidはデジタル家電の夢を見るか?
05 ニュースクリップ(小寺・西田)
06 今週のおたより(小寺・西田)

 

12コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。

 

ご購読・詳細はこちらから!

その他の記事

コロワイド買収のかっぱ寿司が無事摘発の件(やまもといちろう)
4月4日自民党党内処分云々の是非と今後(やまもといちろう)
仮想通貨最先端のケニア(高城剛)
百田尚樹騒動に見る「言論の自由」が迎えた本当の危機(岩崎夏海)
揺れる「全人代」が見せるコロナと香港、そして対外投資の是非(やまもといちろう)
少子化を解消するカギは「家族の形」にある(岩崎夏海)
古市憲寿さんの「牛丼福祉論」は意外に深いテーマではないか(やまもといちろう)
食欲の秋に挑むファスティング(高城剛)
プログラミング言語「Python」が面白い(家入一真)
空港の無償wifiサービス速度が教えてくれるその国の未来(高城剛)
素晴らしい東京の五月を楽しみつつ気候変動を考える(高城剛)
メダルの数より大切なことがある ――有森裕子が語る2020年に向けた取り組み(宇野常寛)
俺たちのSBIグループと再生エネルギーを巡る華麗なる一族小泉家を繋ぐ点と線(やまもといちろう)
『ズレずに 生き抜く』(文藝春秋)が5月15日刊行されることになりました(やまもといちろう)
米国の変容を実感するポートランドの今(高城剛)

ページのトップへ