メルマガ『人間迷路』より

アーミテージ報告書を読み解く――日本は二等国でいいの?

去る8月15日に出た、アーミテージ=ナイ報告書(第三部)について、概ね日米間での内容評価も固まってきましたので、簡単に本稿でご紹介していきたいと思っております。なんか最近安全保障関連や国際関係の話ばかりになって恐縮なのですが。

日本が一流国であり続けることへの期待

CSISからのレターについてはこちらを参照していただければと思いますが、アメリカの知日派が集って総論としてまとめたものとしては出色の出来ですので、このあたりを参考に、日本とアメリカの関係、それを機軸として領土問題をどう考えるべきかを敷衍したい向きには絶好の教材となっております。

http://csis.org/files/publication/120810_Armitage_USJapanAlliance_Web.pdf

http://csis.org/event/us-japan-alliance-anchoring-stability-asia

安全保障関連のコミュニティではさっそくいろんな反響が出ておりますが、大枠についてはこの辺をご参照のほどを。

http://www.mod.go.jp/msdf/navcol/SSG/topics-column/col-033.html

防衛省がファシリティ関連の部分に強い関心を引く傍ら、経済面での安全保障を考えることの多い民間である私どもの興味は、今回枠組みとして強く打ち出されている「エネルギー面での安全保障」、率直にシェールガス開発および対日輸出の緩和、同じく天然ガス・LNGの対日輸出の緩和、産油国である中東諸国への日本のコミットメント強化と、日本の脱原発路線の放棄によるエネルギー市場の安定などを柱とする日米間でのエネルギー安保への発展的な枠組みの提唱であります。うーん、そこまで踏み込んでくるとはちょっと思いませんでして、ここ一ヶ月ぐらい、あれだこれだと議論が絶えなかった部分でもあります。

そういう日米間の取り組みの強化の根底にあるのは、日本が世界におけるTier-One Country、すなわち一流国であり続けることへの期待であり、また同時に日本のその意欲が感じられるような外交的主体性の部分であります。

1 2
やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

猪子寿之の〈人類を前に進めたい〉 第6回:椅子に固定されない「身体の知性」とは何か(宇野常寛)
「貸し借り」がうまい人は心が折れない(岩崎夏海)
世界情勢の大きな変わり目を感じる今年の終わり(高城剛)
『もののあはれ』の実装は可能か(宇野常寛)
『我が逃走』は日本版ハードシングス?(家入一真)
偉い人「7月末までに3,600万人高齢者全員に2回接種」厳命という悩み(やまもといちろう)
平昌オリンピック後に急速に進展する北朝鮮情勢の読み解き方(やまもといちろう)
快適な心地よい春を過ごすための用心(高城剛)
ゲームを通じて知る「本当の自分」(山中教子)
シーワールドがシャチの繁殖を停止。今の飼育群を「最後の世代」にすると決定(川端裕人)
「iPhoneの発売日に行列ができました」がトップニュースになる理由(西田宗千佳)
FATF勧告でマネーロンダリング日本不合格の後始末(やまもといちろう)
「韓国の複合危機」日本として、どう隣国を再定義するか(やまもといちろう)
20世紀の日米関係がいまも残る基地の街(高城剛)
新型カメラを同時二台買いするための長い言い訳(高城剛)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ