所有権の明示
“1.これは私の携帯です。私が買いました。月々の支払いも私がします。あなたに貸しているものです。私ってやさしいでしょ?”
これは、携帯電話の所有権を明確にするための宣言である。子どもは携帯の「利用権」を持つ事になる。逆に言えば、もしこの携帯で何か問題があった場合は、親が責任を取るという宣言でもあるわけだ。正直僕も、ここまできっぱり責任を取る宣言をする自信はないが、立派な決意である。
さらにこれは、問題があれば利用を制限できる根拠でもある。これにより、子どもがネットの利用に対して、自覚的になってもらうとともに、ネット利用(キャリア利用)はタダではないことを理解させる目的がある。
“私ってやさしいでしょ?”という一文に対して嫌悪感を持つ人もあるが、これは親子の間でよく交わされる、親愛の印である。“もうママったら……”というリアクションが目に浮かぶようだ。このような細やかな親子の機微が想像できない人というのは、そういう家庭に育っていなかったからと言ってしまうとあまりにも残酷だが、もし子どもがいれば容易に想像できることである。
「アクセス権」が生み出す自重効果
“2.パスワードはかならず私に報告すること。”
パスワードを親も知っているということは、携帯の中に秘密を持つのは難しいということになる。これはMIAUの契約書にも"携帯にはキーロックをかけ、暗証番号は親に教えておく。"という同様の文面がある。
メールの内容など、通信の秘密に関わる部分は、親であろうとも簡単に侵害して良いとは思わない。他の団体では、メールも親が監視すべきという意見を持つところもあるが、僕自身はこれには反対の立場である。
携帯内を常時無断で監視はしないが、いざとなったら親が見ることができるアクセス権はある。これを子どもが自覚することで、自分の行動に自戒が生まれることを期待している。
この考え方は、神戸にある中高一貫の私立須磨学園で導入している、「制ケータイ」を取材したときに学んだ。制ケータイとは学校支給の携帯で、いわゆる企業向け携帯プランを学校向けにモディファイしたものである。ISPはキャリアではなく学校が代行する(サーバが校内にある)ため、通信記録は見ようと思えば見られる。
実際には学校側が無断で見ることはなく、どうしても必要な場合のみ保護者の同意を得た上でアクセスすることになっているが、「何かあったら見ることができる」と子どもたちに警告しておくことで、問題を事前に回避する自重効果が生まれたという。
このように、アクセス権を保護者が持つことは、子ども部屋に鍵を付けるかどうか、ということに似ている。内側から鍵をかけて、いつでも立てこもれるようになっている子ども部屋を与えることを、多くの親は良しとしないだろう。ふんわりとした監視・管理を経て、子どもの自立を促していくわけである。
その他の記事
![]() |
終わらない「レオパレス騒動」の着地点はどこにあるのか(やまもといちろう) |
![]() |
アーミテージ報告書の件で「kwsk」とのメールを多数戴いたので(やまもといちろう) |
![]() |
宇野常寛特別インタビュー第5回「落合陽一のどこが驚異的なのか!」(宇野常寛) |
![]() |
村上春樹から上田秋成、そしてイスラム神秘主義(内田樹&平川克美) |
![]() |
いまそこにある農政危機と農協系金融機関が抱える時限爆弾について(やまもといちろう) |
![]() |
新型コロナウイルスの影響で変わりつつあるスポーツのあり方(本田雅一) |
![]() |
ヒットの秘訣は「時代の変化」を読み解く力(岩崎夏海) |
![]() |
国会議員は言うほど減らすべきか?(やまもといちろう) |
![]() |
年末企画:2019年度の「私的なベストガジェット」(高城剛) |
![]() |
冠婚葬祭に思うこと(やまもといちろう) |
![]() |
国民民主党「部分連合」で迎える石破茂政権で思い切れなかったところ(やまもといちろう) |
![]() |
親野智可等さんの「左利き論」が語るべきもの(やまもといちろう) |
![]() |
週刊金融日記 第271号 <美術館での素敵な出会い 傾向と対策 他>(藤沢数希) |
![]() |
昼も夜も幻想的な最後のオアシス、ジョードプル(高城剛) |
![]() |
ヘッドフォンの特性によるメリットとデメリット(高城剛) |