宇都宮徹壱
@tete_room

海野隆太(浦和レッズサポーター @inumash)インタビュー<前篇>

横断幕事件の告発者が語る「本当に訴えたかったこと」

横断幕事件の告発者が語る「本当に訴えたかったこと」
海野隆太(浦和レッズサポーター @inumash)インタビュー<前篇>

 

※この記事は宇都宮徹壱さんのメールマガジン「徹マガ」2014年05月23日配信号の記事のダイジェストです。

 

浦和の横断幕事件をTwitter上で告発し、これまで見過ごされてきたサポーターとクラブとの不健全な関係に一石を投じた、浦和サポーターの海野隆太さん(@inumash)にご登場いただいた。<中略>

くどいようだが、大切なことなのでもう一度強調しておく。横断幕事件は、決して浦和レッズ「だけ」の問題として取り上げるのではない。愛するクラブを持つ、すべてのサッカーファンが「当事者」として捉えるべき問題として、皆さんと一緒に考えていくことを目的としている。そのことをご理解いただいた上で、読み進めていただければ幸いである。(取材日:2014年4月11日)

 

195_ph01 (C) 海野隆太

 

浦和の第一印象は「面白いチーム」

――今日はよろしくお願いします。本題に入る前に、まずは海野さんのバックグラウンドからお話いただきたいと思います。ご出身は、埼玉ではないそうですね?

 

海野 そうです。神奈川なんですが、もっと静岡寄りの足柄下郡箱根町。箱根駅伝で有名なところですね。

 

――ああ、箱根町ですか! 地理的にはまったく関係ないのに、どうやって浦和レッズと出会ったのでしょうか?

 

海野 えっと、最初見たのはTVで、Jリーグが始まったばかりの頃にやっていた珍プレー好プレーでしたね。

 

――それは珍しい(笑)。当時は浦和がよくネタにされていましたからね。もっとも川淵三郎チェアマンが激怒して、すぐになくなってしまいましたが。でも今にして思えば、ライトなファンを取り込む一助にはなっていたのかもしれませんね

 

海野 そうですね。当時は中学生でサッカーを始めたばかりで、Jリーグにも興味を持っていろいろTV見ているうちに、浦和レッズという面白いチームがあることを知ったんです。だって、素人みたいに酷い失点とか多かったじゃないですか(笑)。

 

――まあ、そんな時代もありましたね(笑)。じゃあ海野さんにとって、浦和の第一印象は「面白いチーム」だったと

 

海野 そうです、そうです。よくわからないけれど、とにかく面白いことやっているチームっていう印象しかなかったんです。

 

――当時の箱根のサッカー少年にとって、どこかJクラブをサポートするとしたら、マリノスですか、それともエスパルスですか?

 

海野 どちらでもないですね。県でいうと神奈川ですが、横浜からはすごく遠いし、次の年にベルマーレがJに上がりましたけど、平塚だって電車で1時間半くらいかかりましたから。それくらい中途半端なところで少年時代を過ごしていたんです。

 

――でも当時は10チームしかなかったわけで、むしろ地元にJクラブがある恵まれたサッカー少年のほうが全国的には珍しかったはずですよ。一方でJリーグが始まった当初は、今以上にTVの影響力が大きくて、何かと話題性の多かった浦和は身近にJがない地域に暮らすサッカー少年たちに少なからずインパクトを与えたんでしょうね。では、海野さんが初めてスタジアムで浦和をご覧になったのは?

 

海野 94年の夏でした。ただし駒場でなく、三ツ沢でのフリューゲルスのホームゲームでしたね。中学生だったので、親にお願いして連れて行ってもらったのが最初です。その後、高校生になってからは自分で行くようになりましたが、やはり浦和が横浜とか平塚に来る時に限られましたね。さすがに埼玉は遠かったので。

 

――そこまでして、やっぱり浦和というチームを見たかったと

 

海野 そうですね。最初は何か「ネタチーム」という認識でしたけど、そのうちギド・ブッフバルトが加入して、95年くらいからブッフバルト効果が成績にも表れてくるようになったじゃないですか。それと監督がホルガー・オジェックになって、ステージ優勝争いに名乗りを挙げるようになると、さらにはまっていきましたね。そういうファンは多かったと思います。

 

――ちなみに、ご自身のプレーのほうはどうでした?

 

海野 プレーは全く向上しませんでしたね(笑)。サイドバックだったんですけど、ひたすら上下運動を繰り返すという感じで、あまり楽しくはなかったです。

 

――するサッカーよりも、観るサッカーのほうが楽しかったと

 

海野 そうですね。もともとロックバンドのオアシスが好きで、それがきっかけで同じ時期に海外サッカーも観るようになりました。そのなかでもイングランドのサッカーが好きで、いろいろと調べたりするうちに「サッカーってこんなに面白い文化なんだ」って気づいたのが98年くらいでした。

 

195_ph02
(C)Tete_Utsunomiya

1 2 3
宇都宮徹壱
1966年3月1日生まれ。東京出身。 東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)、『松本山雅劇場』(カンゼン社)など著書多数。『フットボールの犬欧羅巴1999-2009』(東邦出版)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。2010年より有料メールマガジン『徹マガ』を配信中。

その他の記事

「ふたつの暦」を持って生きることの楽しみ(高城剛)
マイルドヤンキーが「多数派」になる世界(小寺信良)
Googleの退職エントリーラッシュに見る、多国籍企業のフリーライド感(やまもといちろう)
「芸能」こそが、暗黒の時代を乗り越えるための叡智であるーー感染症と演劇の未来(武田梵声)
人はなぜ初日の出に惹かれるのか–数万年の心の旅路(鏡リュウジ)
人は自分のためにではなく、大好きな人のためにこそ自分の力を引き出せる(本田雅一)
リフレ派の終わりと黒田緩和10年の総括をどのタイミングでやるべきか(やまもといちろう)
殺人事件の容疑者になってしまった時に聴きたいジャズアルバム(福島剛)
地方統一選から見える「安倍政権支持者」と「アベノミクス」受益者の錯綜(やまもといちろう)
「罪に問えない」インサイダー取引が横行する仮想通貨界隈で問われる投資家保護の在り方(やまもといちろう)
メディアの死、死とメディア(その1/全3回)(内田樹)
揺れる情報商材 違法化、摘発への流れが強まる(やまもといちろう)
冬の京都で酵素浴によるデトックスに励む(高城剛)
自分の身は自分で守るしかない時代(高城剛)
平成の終わり、そして令和の始まりに寄せて(やまもといちろう)
宇都宮徹壱のメールマガジン
「徹マガ」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(不定期)

ページのトップへ