※「競争考」はメルマガ「ハックルベリーに会いに行く」で連載中です!
岩崎夏海の競争考(その15)怒り方
「怒り」を前向きに捉える
勝つために必要な感性は、喜怒哀楽を取り戻すことによって育まれる。中でも「怒り」を取り戻すことが重要だ。感性が鈍っている人は、たいてい怒れなくなっているからだ。
手塚治虫のマンガ『火の鳥 鳳凰編』の中で、それまで悪行の限りを尽くしていた我王が、芸術に目覚める場面がある。そこで、我王は「怒り」を感じるのである。それは、これまで悪行の限りを尽くしていたときにはなかった感情だった。悪行の限りを尽くしているときは、むしろ自分の怒りを封印して、どこまでも感性を鈍らせていた。しかし怒りが復活したとき、ようやく生産的な考えができるようになったのだ。
これは、普通に考えられていることとは逆である。普通は、怒りが悪行につながり、冷静さは生産性へとつながると考えられている。しかし実際は逆なのだ。怒りこそ、生産への最も重要なエネルギーとなるし、冷静さは、非生産性、あるいは悪行につながりやすい感情なのである。事実、極悪非道な行いをする人は、たいてい冷静である。冷静というより、感情を鈍らせて、ほとんど何も感じない中でそれを行っているのだ。
だから、人は自らの怒りというものをもっと前向きに受け入れる必要がある。怒った自分を反省するのではなく、むしろ許してやる必要があるのだ。反対に、もし怒れなかったらそれを反省するべきなのである。
どうすれば怒れるのか
では、「怒り」の感情はどうすれば湧きあがってくるのか? これは、実は簡単なようで難しい。人は、なかなか怒れるものではないのである。
なぜかというと、「自信」がないからだ。「怒る」というのは、何かに「憤る」ということでもある。「憤る」というのは、何か正しく行われるべきものが正しく行われなかったときに覚える感情だ。このとき、多くの人は、自分の「正しさ」に自信がないのである。だから、何か正しくない行いに接した際にも、自分の正しさに自信を持てず、素直に怒ることができない。
例えば、遅刻をした人がいたとする。そのとき、怒れない人はこう考える。
「自分もよく遅刻をするし、相手のことを責められない」
このように、自信がない状態だと、正しい怒りの感情を湧きあがらせることができない。
だから、怒るためには普段から自分を律する必要がある。善悪の規範をしっかりと持ち、そこから逸脱しないよう心がけるのだ。上記の例でいえば、絶対に遅刻をしないようにするのである。そうすれば、遅刻という行為に対し、素直に怒りを持てるようになるのだ。

その他の記事
![]() |
スマホVRの本命「Gear VR」製品版を試す(西田宗千佳) |
![]() |
何とかなった日韓GSOMIA「パーフェクトゲーム」の苦難(やまもといちろう) |
![]() |
週刊金融日記 第308号【日本の大学受験甲子園の仕組みを理解する、米国株は切り返すも日本株は森友問題を警戒他】(藤沢数希) |
![]() |
「自己表現」は「表現」ではない(岩崎夏海) |
![]() |
自分との対話として「書く」ということ(高城剛) |
![]() |
大手企業勤務の看板が取れたとき、ビジネスマンはそのスキルや人脈の真価が問われるというのもひとつの事実だと思うのですよ。(やまもといちろう) |
![]() |
人々が集まる場に必要なみっつの領域(高城剛) |
![]() |
口コミ炎上を狙う“バイラルサイト”問題を考える(本田雅一) |
![]() |
ハダカの「自分」を見つめることの難しさ(紀里谷和明) |
![]() |
『悲劇の誕生』ニーチェ著(茂木健一郎) |
![]() |
これから「研究者」がマイノリティになっていく?(家入一真) |
![]() |
意外とまだマイナー!?「二段階認証」をおさらいする(西田宗千佳) |
![]() |
某既婚女性板関連でいきなり情報開示請求が来た件(やまもといちろう) |
![]() |
【号外】安倍官邸『緊急事態宣言』経済と医療を巡る争い(やまもといちろう) |
![]() |
小商いと贈与(平川克美) |