石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』より

高齢の親と同居し面倒をみていますが、自分の将来が不安です

石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』4月8日 Vol.019より



【Q】高齢の親と同居し面倒をみていますが、自分の将来が不安です

高齢化社会についてご意見を伺いたくメールしました。私自身も高齢の母と暮らしていますが、同居は正直言ってとても窮屈です。自由が削がれます。ある友人は入院中の母や義理の父を見舞い、在宅の父の食事の世話をし、その上、思春期の子どもたちのことでも悩みを抱えている状態です。公的サービスの利用もなかなか難しいようで、身近な人がケアをするしかないようです。

同居している人たちは高齢の親のケアから解放されたとき自分の人生を楽しむ元気があるのでしょうか? 私も最近、この先どうなっていくのだろうと不安を覚えています。

 

【A】くたくたに疲れてしまう前に、ちょっと距離を置いてみては

確かに大変ですよね。特にお年寄りって頑固じゃないですか。自分の思い込みとか生活のパターンを絶対に変えようとしないので、付き合うほうがくたくたになりますよね。なので、手を抜いたらどうですか。

やっぱりこういうことで悩む人、トラブルを起こしてしまう人は、真面目すぎるんですよね。「こうするとよい」とか「こうやったほうが親のためである」みたいなことで、相手を型にはめようとしますから。相手はそういうものでは、どうにも動かしようがないんですよ。例えば、庭に大きな木が生えていたとしたら、それを引っこ抜いてどこかに捨てようなんて思わないじゃないですか。あったらあったで、適当にお世話をして、ときどきに水をかけたりしながら、ごまかしていくじゃないですか。

なので、自分の身内でもそれぐらいのつもりで対応したほうがいいんじゃないですかね。ここに山がある。石がある。川がある。「あ、歳をとった親がいる」というぐらいで、ちょっと距離を置いたほうがいいとは思いますね。

ぼくは両親がもう二人とも亡くなってしまっているし、幸か不幸か介護の経験がまったくないんですよね。母はくも膜下出血で突然倒れて、3日ぐらいで亡くなりました。父は84歳で亡くなったんですけれど、亡くなる3か月から半年ぐらい前まではすごく元気でピンピンしていたので。最後に2週間ぐらい入院して亡くなったのかな。ちょうどみんなにお別れも言えたし、すごくいい形だったんですよね。なので介護に関しては実はよくわからないんですけれど、あんまり頑張りすぎないのがいいとは思いますね。

健康に少々悪いことでも、当人がやりたかったらいいんだよね。もういい歳だから。何もかも型にはめて「これを絶対にやらないといけない」みたいなことをせずに、それこそ「寝たいときに寝て、起きたいときに起きて、好き勝手に暮らせばいいじゃん。もう散々働いたんだから」というふうに思いますけどね。

もう20年とか30年介護している人っているじゃないですか。そうなってしまうと確かにしんどいとは思いますけれど、例えば親が亡くなったあとに、自分の時間ができることを楽しみにしているっていうのは、誰にでもありますよ。

逆にいうと、果てしなく長い時間がまたそこから待っているので。死ぬまでどれぐらい生きるかっていうのは、予測がつかないのでね。なので、そこの部分で将来のことを考えて、今から暗い気持ちになる必要はないんじゃないですか。

それと、本当に親が亡くなってしまうと、フェーズが変わるというか、そのあとの時間を全部自分で使うようになるので。それもまた一つ、楽しかったり大変だったり両面あると思いますね。その先のことも考えながら、「何をしようかな」って楽しみな気持ちを持ちながら続けていきましょう。

 

石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』

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本と創作の話、時代や社会の問題、恋や性の謎、プライベートの親密な相談……

ぼくがおもしろいと感じるすべてを投げこめるネットの個人誌です。小説ありエッセイありトークありおまけに動画も配信する石田衣良ブックトーク『小説家と過ごす日曜日』が、いよいよ始まります。週末のリラックスタイムをひとりの小説家と過ごしてみませんか?
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石田衣良
1960年、東京都生まれ。 ‘84年成蹊大学卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターとして活躍。 ‘97年「池袋ウエストゲートパーク」で、第36回オール読物推理小説新人賞を受賞し作家デビュー。 ‘03年「4TEENフォーティーン」で第129回直木賞受賞。 ‘06年「眠れぬ真珠」で第13回島清恋愛文学賞受賞。 ‘13年「北斗 ある殺人者の回心」で第8回中央公論文芸賞受賞。 「アキハバラ@DEEP」「美丘」など著書多数。 最新刊「オネスティ」(集英社) 公式サイト http://ishidaira.com/

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