藤沢数希
@kazu_fujisawa

結婚は男女にとって等しく最大の“リスク”である

キャリア女性のみなさん、その結婚、本当に大丈夫?


今年の2月に『損する結婚 儲かる離婚』を上梓した藤沢数希氏。藤沢氏は「結婚は男女にとって等しく最大の“リスク”であるにもかかわらず、多くの女性はいまだに結婚の法律を驚くほど知らない」と語る。
 



藤沢数希・著『損する結婚 儲かる離婚』

男女双方とも、簡単に全財産以上の金額が吹っ飛ぶのが結婚という金銭契約です。 「結婚はデリバティブ取引と同じでゼロサムゲーム。こと金に関しては夫婦は食うか食われるかの関係にある」。金融工学と恋愛工学について研究を重ねてきた藤沢数希が、適切な結婚相手の選び方を具体的なケースを元に解き明かす!
 
 

稼げる女性が結婚する際に考えておきたいこと

――いきなりですが、「結婚」とは何でしょうか。人は何を求めて結婚するのでしょうか。

藤沢:結婚というのは、単に金銭の支払い義務、あるいは相手から受け取る権利、破綻したときの財産の清算方法などが書かれている、国家が用意する家族を作るための一つの法的な枠組みです。

中身は簡単にいうと、婚姻届に判を押してそれを役所に届けた瞬間に、ふたりの財布が完全にひとつになって双方が半々の権利を持つということです。専業主婦と結婚したら自分の稼ぎの半分は主婦のもの。法律は男女平等だから、主夫と結婚したキャリア女性は夫に稼ぎの半分をあげないといけない。それ以上でもそれ以下でもありません。

家庭を作るときにこのデフォルトの契約テンプレを使いたい人は使えばいいし、自分たちで自由に決めたいなら、別に使わなくてもいいものだと思います。
 
――生涯未婚率が年々上昇しているとはいえ、「いつかは結婚したい」と思っている人は多いですよね。今年に入って放映された人気ドラマ「東京タラレバ娘」でも、仕事での成功をある程度かなえた上で「結婚したい、幸せになりたい!」と切望するアラサー女性の本音と葛藤が描かれていました。

藤沢:とても奇妙なことなんですが、結婚、正確にいえば国家が用意するこのデフォルトの法律婚の中身を、みんな知らないんですよ。結婚というのは、何かぼんやりした、ふわふわした愛が詰まった幸せパッケージみたいに思っている。

僕が昔、務めていた外資系投資銀行なんかだと、年収2000万円ぐらい稼いでいる女性がふつうにいたのですが、彼女たちの多くが自分より年収の高い男性と結婚できません。別にモテないとかそういう問題ではなく、世の中には、彼女たちより稼いでいる男性がほとんどいなのだから、ある意味で当たり前なんです。しかし、彼女たちは30代半ばぐらいになってくると、妥協して、ぜんぜん稼いでいない男性と法律婚をし始めるんです。
 
こうしたキャリア女性は、忙しいので、忙しい男性がいつも予定を合わせてくれる暇な可愛い女性とつきあうように、暇な男性とつきあうことがけっこう多いのです。恋愛や結婚の相手に「癒やし」を求めているのかもしれません。そして、暇な男性というのは、収入が不安定だったり、仕事よりも夢を追いかけていたり、世間的には「ダメ」なタイプが多いのです。そんなダメな男性と法律婚をした同僚だった女性のひとりが、数年後に旦那と別れようとして、離婚騒動になり、何千万円もヒモの旦那に支払うことになりました。彼女の悲劇が、この本を書こうと思った、ひとつのモチベーションでした。
 

女でも所得が高ければ「コンピ地獄」に嵌ります

――その女性は本に書かれていたコンピ地獄でやられたんですか?

藤沢:そうです。世間一般のイメージだと、「離婚で財産を失う」というと、普通は非がある方、つまり浮気した方がパートナーに慰謝料を支払うイメージがあるでしょう。また、男が女に払うものだ、と思っている人も多いかもしれません。でも、そうではありません。

パートナーの男性に浮気されて「もう離婚したい」となったあと、「いや、オレは別れたくない」と言われて婚姻費用分担請求をされると、大変な試練が始まります。

民法で、夫婦には「お互いに相手の生活を自分と同じレベルで維持し、夫婦の資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する」義務があるとされています。このお金が婚姻費用、通称「コンピ」と言われるものです。

たとえば、あなたの年収が800万円で、パートナーが専業主夫だったら、あなたはパートナーに月額にして12万円、年間144万円払わなければいけない。婚姻費用の計算の仕方は本書に詳しく書いてありますが、知りたい方は、ぜひ下記のサイトでシミュレーションしてみてください。
 
婚姻費用・養育費分析ツール
http://www.kinyuunikki.com/kompi_form.html

別居を始めてから離婚が成立するまでの間、数年〜10年くらいかかると思っていた方がいいでしょう。その間ずっと、相手の生活を維持するためにコンピを支払わなければいけません。コンピ地獄ですね。加えて、最終的に財産分与という形で、結婚後に築いた資産の半分を持っていかれます。

もちろん相手の浮気を立証できた場合は、慰謝料をもらえます。ただ、浮気でもらえる慰謝料の相場は、日本では100万円ぐらい、多くて200万円程度です。これは婚姻費用や財産分与に比べたら、大きな金額ではありません。

――本には浮気した専業主婦と離婚するため全財産を支払った話が書いてありましたね。

藤沢:はい。こちらは友人の男性の話ですが、奥さんの浮気が原因で離婚を決意したものの、いざ離婚しようとすると奥さんが浮気を認めず、離婚裁判が泥沼化し、財産分与と合わせて4000万円ものお金を失ってしまいました。多くの人は、相手に浮気された上に財産も失う可能性があるなんて、結婚したときには1ミリも考えないですよね。でも、今の法律では、十分起こりうるのです。とにかく、結婚という契約は、男女にかかわらず稼いでいる方は、揉めると、全財産を上回る金額が簡単に吹っ飛ぶ契約なのです。

貧乏な男と家庭を作りたい場合は事実婚をオススメします

——「いざ離婚」となったときに、稼いでいる方が損をする、というのはよくわかりました。そして、それは女性であっても同じなのですね。

藤沢:はい。法律は男女平等です。憲法に、男女差別の禁止が書かれていますから。しかし、僕はやはり、稼いでいる女性がこんなふうに結婚によって金を毟られるのは可哀想だと思うのです。というのも、多くの男性は、結婚するときに、妻子を養う覚悟をするでしょう。離婚したら、正確な法律の知識はなくても、大金を失うというのはある程度わかっています。でも、女性はそうじゃない。

女性は、どういうわけか、貧乏な男と結婚しても、損しないと思っているんですよ。金持ちの男と結婚すれば確かに得するけど、貧乏な男と結婚したら、単に得が少ないだけだ、と。稼いでいる女の人も、男性とご飯に行ったらだいたいおごってもらえます。プレゼントももらえます。だから、自分より所得が低い男性と結婚しても、自分はもらう方だと思っている。毎月コンピを支払うことになるとは露ほども思わないわけです。よく考えると、法律は男女平等だから、金持ちの男が奥さんと別れようとすると大金を失うのだったら、稼いでいる女性が離婚騒動になれば、等しく大金を失うのは当たり前なんですけどね。

——それでは稼いでいるキャリア女性はどうすればいいのでしょうか?

藤沢:ここは誤解してほしくないのですが、僕は女性は貧乏な男と恋愛するな、と言っているわけではありません。むしろ真逆で、自分で稼げるのだから、相手の男性の年収なんか気にせず、好きな男性と恋愛して、好きなように子供を産めばいい、と思っているんです。日本人女性はもっと自由になればいい、と。
 
それで、その場合、何をすればいいのかはじつはとても簡単なんです。単に、籍を入れなければいいだけなんですね。法律婚ではなく、事実婚にしましょう。もちろん、事実婚でもさまざまな義務は伴います。しかし、10年も破綻した相手にコンピを払い続けるコンピ地獄などの心配はありません。

この本は結婚と離婚にまつわる金の話ばかりが書いてあります。しかし、逆説的ですが、その結果、ひとつのメッセージが伝わればいい、と思ったのです。それは、自分で稼げる女性は、相手の男性の年収なんか気にせず、ただ愛に生きればいい、ということなのです。

 
 
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藤沢数希
理論物理学、コンピューター・シミュレーションの分野で博士号取得。欧米の研究機関で教鞭を取った後、外資系投資銀行に転身。以後、マーケットの定量分析、経済予測、トレーディング業務などに従事。また、高度なリスクマネジメントの技法を恋愛に応用した『恋愛工学』の第一人者でもある。月間100万PVの人気ブログ『金融日記』の管理人。

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