高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

冬のビル籠りで脳と食事の関係を考える

高城未来研究所【Future Report】Vol.495(2020年12月11日発行)より

今週も東京にいます、とは言っても、実は部屋から一歩も出ていません。

ホテルの部屋の清掃も断って、宅配を受け取ることもなく、ドアを一度も開けていません。

自著にも書きましたように、僕は元来落ち着きがなく、同じ場所にとどまれない性格でしたが、また、少しづつ社会復帰を目指していることもありまして、今年の好機を逃さず、相当深い瞑想と脳のオイル交換を半年かけて行ったことから、最近は、それなりに落ち着けるようになりました(と、勝手に自己診断しています)。

そしてこの年末の一週間(正確には6日と半日)、部屋から一歩も出ない生活をついに完遂。
原稿書いたり、スピーカーのセッテイングしたり、リバーブ三昧だったり、部屋トレーニング&瞑想を行なったりと、相変わらず集中力は40分程度しかもちませんが、一歩もどこにも出かけなくても平気で過ごせるようになりました。

いわば、冬の山籠りならぬ、冬のビル籠り。

また、毎年この時期は東京に戻りますが、その理由は気候が良いからに他なりません。
すでに氷点下に達するニューヨークに比べて、東京は15度前後ある温暖な日が続き、東京の12月は、年間通じてもっとも晴天率が高い月でもあります。
いわゆる西に高気圧、東に低気圧がある「西高東低」の気圧配置によって今週も晴天が続き、毎日決まって良い音楽と共に、広大な皇居の森の向こうに落ちる夕日を、ゆっくりと眺めて楽しみました。

当たり前ですが、このような暮らしは、お金をまったく使いませんし、単なるテレワークとも異なります。
外にも出ない上に、オンラインで買い物をすることもなく、一日1食なことから、事前に買っておいた低音調理用の肉とわずかな玄米などの一週間の食費は、数千円程度。
ただし、ここにはサプリメント代金は含まれていませんが、これを入れても、最近のエンゲル係数は、驚くほどに落ちています。

一方、「ビル籠り」の生産性は著しく上がり、執筆や溜まった写真の現像、夏から秋に撮った映像編集に音楽制作と毎日慌ただしいほどでしたが、問題は、これらの作業をずっとコンピュータを前に座ったまま行なっていることにあります。

近著でも紹介したように、テクノジムのバランスボールを椅子に使っていますが、ダボス会議でお馴染み、ワールドエコノミックフォーラムが最近掲載した最新の論文記事によりますと、「ずっと座ったままだと、脳に悪い」ことが発表されています(https://bit.ly/2IyxMgf)。

脳は体重の約2%程度の重さしかありませんが、安静時でも必要なエネルギーの約20%を使います。
論文によれば、脳の主要な燃料はブドウ糖で供給されており、座りながら糖を補給すると血糖値が急速にあがることから、脳にダメージを与えるとレポートしています。

しかし、これは人間が一日3食と間食等、糖をたっぷり含んだ食事を、それなりの量を食べることが前提となって論じられています。

「糖の取り過ぎ」×「座ったまま」=「頭にも身体にも悪い」のは、言うまでもありません。
だからといって「世界と自分を救うために、一日一膳にしましょう!」なんて、ワールドエコノミックフォーラムがいうわけがありません。
実はこの10年間で、340兆円だった世界中の食品市場規模が、2020年には680兆円まで跳ね上がっているのです。

この背景には、中国やインドなど新興国の台頭があり、この先、2030年の市場規模はさらに倍になる1364兆円まで膨らむと見積もられており、この星に生きる大半の人類は、いよいよ過食とともに健康を損なう時代へと本格突入するのです、内緒ですけど。
ちなみに、医薬品市場も倍増しています。

かくありまして、各人の自制こそが最後の砦。
自分の人生(もしくは健康寿命)を、自分で消費しても仕方がありません。

一見、収入格差のように言われる二極化や分断は、少食こそコストがかからない現実から鑑みれば、糖中毒か否かの違いに過ぎないのではないか、と考えます。

地球人は、糖で生きている。

遠くの星から見たら、もはや、そう見えるのかもしれません。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.495 2020年12月11日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

その他の記事

見た目はあたらしいがアイデアは古いままの巨大開発の行く末(高城剛)
なぜ、日本人はやりがいもないのに長時間労働で低賃金な仕事を我慢するのか(城繁幸)
長崎の街の行方に垣間見える明治維新以降の日本社会の力学(高城剛)
どうなる? 小中学校へのスマホ持ち込み(小寺信良)
12月の夏日を単に「暖冬」と断じてしまうことへの危機感(高城剛)
miHoYo『原神』があまりにもヤバい件(やまもといちろう)
「iPhoneの発売日に行列ができました」がトップニュースになる理由(西田宗千佳)
コロナ渦で大きく変わってしまったシアトルの街(高城剛)
効果がどこまであるのか疑問に感じるコロナ対策のその中身(高城剛)
日印デジタル・パートナーシップの裏にある各国の思惑を考える(高城剛)
カーボンニュートラルをめぐる駆け引きの真相(高城剛)
実態は魑魅魍魎、美味しいと正しいの間に揺れる飲食業界(高城剛)
身近な日本の街並みが外国資本になっているかもしれない時代(高城剛)
「学びとコンピュータ」問題の根本はなにか(西田宗千佳)
父親が次男に事業を継がせた深~い理由(やまもといちろう)
高城剛のメールマガジン
「高城未来研究所「Future Report」」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(第1~4金曜日配信予定。12月,1月は3回になる可能性あり)

ページのトップへ