高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

コロナ渦で大きく変わってしまったシアトルの街

高城未来研究所【Future Report】Vol.619(4月28日)より

今週は、シアトルにいます。 

この一ヶ月ほど、ニューヨーク、マイアミ、LA、ラスベガス、ポートランドを回りましたが、この街が一番コロナ以前と以後に大きな違いがあります。

数年前まで「Amazonの城下町」と呼ばれ活況を呈していたダウンタウンに、現在、まったく人がいません。
コロナ禍が明けても戻る人たちはごくわずかで、鳴物入りの「無人コンビニ」と話題になった「Amazon Goストア」も次々閉店。街そのものが、無人に向かっています。

2016年、シアトル・ダウンタウン本社近くに初のレジなし店舗を開業した「Amazon Goストア」は、わずか数年でシアトル、サンフランシスコ、ニューヨークで無人ストアを次々とオープンしました。
しかし、時代はあっという間に変わり、今月初旬に全米各地にあった8店舗を永久に閉店すると発表。
昨年もシアトルにあったリアルな書店「Amazon Books」他、米国と英国で68の実店舗型小売店を閉じた大規模閉店に続く動きです。

今年の第一四半期の時点でシアトル中心部のオフィスビルの空室率は25%を超え、依然としてテック企業は従業員を解雇しており、Amazon、Twitter、Metaはいずれもオフィス面積を縮小しています。
かくありまして商業不動産の空室急増に歯止めが効きません。
事実、平日の日中に街中を歩いても人がおらず、オフィスタワーの5本に1本が暗くなっているような状況です。

北米のダウンタウンの回復状況を調査した最新レポートによりますと、シアトルは主要62都市のうち56位にランク。
ちなみに、ポートランドとサンフランシスコはそれぞれ60位と62位と、栄華を誇ったテックの街が大きく変わっているのがわかります。

この背景にはリモートによる勤務体系の変化もありますが、それだけではありません。
米国では、ロックダウンやBLM運動を機に街の荒廃が加速し、昨年の発表では、シアトルが「全米治安悪化都市ワースト1位」に躍り出ました。
Amazon本社でも独自の警備員を配置しているものの、治安の悪化を理由にシアトル中心街にあるオフィスの閉鎖に踏み切りました。

恐らく、対面式のオフィスワークは、もう元には戻りません。
オフィスタワーを埋め尽くし、コーヒーショップやサラダバー、ハッピーアワー・スポットを支え、近隣に快適さと安全性をもたらす活気ある街並みを提供していた都市型勤務体系は過去の話。

そこで、市長や商工会議所はシアトルのホワイトカラー労働者が週5日ダウンタウンに来るという未来はもう望めないと決断し、あたらしい街づくりに舵を切りました。
そのひとつが、ダウンタウンを住居、公園、チャイルドケアセンター、学校、レストラン、食料品店などのアメニティがよりよく混ざり合った「都市村」に作り変えるというアイデアです。
すでにダウンタウンのオフィスビルを住居に変える不動産業者が続出しており、果たしてこれが功を奏すか不明です。

あらゆるものがオンラインに傾倒し、リアルなゴッサムシティとなったシアトル中心街。
ジョーカーの登場は、そう遠くないように思えてなりません。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.619 4月28日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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