
国内でも報道量が少し増えましたが、Facebookの情報漏洩やその悪用によってアメリカ大統領選が影響を受けたのではないかとされる問題で、アメリカや欧州ではもろに情報管理の在り方を巡って当局マターになるところまで来てしまいました。
ザッカーバーグCEO、Facebook個人情報不正流用について発言。不正アプリ調査やリスク発見時のユーザーへの通知を約束
Facebook、アプリによる個人情報収集対策──5000万人の情報流出を受け
とはいえ、この問題にはいくつか理解するための補助線が必要です。
まず、舞台になったケンブリッジ・アナリティカ(Cambridge Analytica:CA)社については、2013年の「thisisyourdigitallife」というクイズアプリ(自己診断サービス)がヒットし、一年間でおよそ27万人の英語圏利用者をかき集めたことからスタートしています。
しかしながら、この「thisisyourdigitallife」について言えば、実際にはユーザーデータを確保するパーミッションに合意させる仕組みになっていて、5,000万人とも言われるその後の個人情報の流出そのものは当時のFacebookの仕組み上適法であったことが明らかになっています。
問題点としては2つで、ひとつが「このサービスを展開していたアレクサンドル・コーガン教授がケンブリッジ・アナリティカ社にデータを売却していたことと、そのデータを用いてその後のアメリカ大統領選のフェイクニュース問題に紐づいていくことであります。このメルマガでも過去に2度(Vol.192・16年6月12日発行、vol.205・17年10月27日発行)触れ、さらにvol.214・18年1月31日発行でも「なぜ、データがこれらの選挙公報で重要なのか」について説明しています。
つまりは、もはや「データと民主主義」は切っても切れない関係にあるなかで、より選挙情勢の分析に資するデータの確保は選挙戦を制するために非常に重要なファクターとなり、伝統的な政治統計による分析とは比べ物にならないぐらい結果を予測することができる、どころか、結果に直接作用するにはどうすれば良いのかが分かってしまうことに問題があるのです。
カエサル・シーザーが「人間ならば、誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。 多くの人々は、見たいと欲する現実しか見ていない」と喝破したことと変わりありません。政治情報は特にこれらの分野に当てはまる非常に党派性の強いニュースを提供することで、一定のカテゴリーの有権者を特定の陣営に投票するよう誘導できる可能性が高まったり、状況が不利であるならば投票そのものを控えるよう操作することも可能になるであろうことが、このケンブリッジ・アナリティカ社の事例からは垣間見えるのです。
それを支援したFacebookの問題は当然クローズアップされざるを得ないでしょうし、同じように、中国やその他の国々がアメリカほか民主主義を掲げる国家の選挙に介入ようとすることを理解しなければなりません。
中国、「社会信用度」の低い国民の鉄道・航空機利用を制限へ(塚越健司) - Y!ニュース
いわば「データは民主主義なり」であり、さらに「データこそが価値となる」世の中で私たちのプライバシーをどう考えるべきかは一度フラットに考え直す必要があります。中国のように、全ての情報が統制されプライバシーが無きに等しいややディストピアなサイバネテック社会を目指すのか、プライバシーこそ民主主義の根幹(オバマ前大統領)のような普遍的価値を念頭に置いて民主主義を死守するのか、日本もそろそろ真面目に考えるべき時期に差し掛かっているようです。
今回のメルマガでは、この問題にもう少し踏み込んで解説を… と言うところで、事態が次々と更新されていき、混迷を深めていっているようにも思います。
Facebook「プライバシー問題」から何をどう読み解くか(山本一郎) - Y!ニュース
どこまでどうなるか、落としどころがまったく読めない事件に発展してしまいましたが、プライバシーフリーク的にも、またエゴグラムとニュース価値の連動についても興味津々ですので、引き続きウォッチしていきたいと存じます。
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
Vol.219 Facebook情報漏洩事件や出版業界大変動から予感する時代の変わり目を考える回
2018年3月29日発行号 目次

【0. 序文】Facebook
【1. インシデント1】「出版業界大変」取次の沈没とAmazon商法の蹉跌
【2. インシデント2】インターネットでの情報発信は放送と同じように法的制限が求められるべきか
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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