「現代における男らしさとは何か」というテーマを雑誌『ブルータス』からいただき、反射的に「それは“群れないこと”ではないでしょうか」とお答えしました。群れると男はとたん勇気づきます。そして、これまで世界の歴史では何度となく、「群れたがる男」が時代を混迷に導いてきました。男は弱っちいのです。
では、「群れない」ために必要なことは何か。それは学問であり、文化なのです。
学問というのは突き詰めれば「道楽」です。追求したくて堪らないことを持っている人は、他人と競い合うことによって生じる「摩擦熱」が厭わしくてたまらなくなります。「群れない」というのは単に「孤高を気取る」といったスタイルをとることではなく、自分の純粋な興味と意欲とを守りたいという切実な欲求から必然的に生じるひとつの「生き方」なのです。
その意味で、学問や文化というのは、人間が持つ攻撃性を抑止する、最終兵器といっても良いでしょう。もし「平和」を達成する本質的な道があるとすれば、それは他者を説得するよりも、それぞれがそれぞれの追求心という集中力を人生において獲得することのうちにあるのではないか。そんなことを思います。
学問や文化を大切にすることは、倫理でも規範でもありません。「群れた」ときには有り余る暴力的なエネルギーが生じるという、人間性のダークな側面を正直に認めたうえで、「それをいかに制御するか」をドライに考えた場合に必然的に導きだされる方法論必須なのです。
最近、書籍の刊行数は増えているのに、街の本屋さんが減っていると聞きます。街の本屋さんがなくなる、ということがもたらすひとつの現実は、「自分が意図していない本との出会い」が減る、ということですよね。その結果として、本というものが「情報収集のアイテム」に堕してしまう、ということを危惧しています。(実際、その傾向はアリアリ出ていますよね)
人は、本によって内なる飛躍を遂げます。しかし、それは「自分が読みたい本」によってではありません。そうした飛躍は、中心よりも周辺において生じます。街の本屋がなくなることによって、「周辺的出会い」が減ることを危惧しています。
※
そんなわけで、今週のメルマガは実験企画「天才はなぜチビなのか?」の後編、岡崎さんとの類人猿対談最終回、塾通信は瞑想のことを少し詳しく述べています。カウンセリングルームは、久々にお休み。皆さんからの質問メールをお待ちしています。ラジオ番組でもそうですが、質問を送っておくとメルマガを届いたとき、「紹介されるかな?」というドキドキ感があっていいと思いますよ(笑)。
名越康文メルマガ「生きるための対話」Vol.086(2014年10月20日号)
目次
01 天才はなぜチビなのか?(後編)
02精神科医の備忘録 Key of Life
・ムーミンを読みふける秋
03カウンセリングルーム<今回はお休みです>
04 【対談】類人猿分類の産みの親・岡崎和江さんに聞く『ゴリラの冷や汗』ができたわけ
・第4回 役割として他のタイプを演じる
05 塾通信(53)瞑想は「本気」でやるから意味がある
06講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】
※購読開始から1か月無料! まずはお試しから。
※kindle、epub版同時配信対応!
その他の記事
|
「見て見て!」ではいずれ通用しなくなる–クリエイターの理想としての「高倉健」(紀里谷和明) |
|
アップルの“あえて言葉にはしていない”仕掛け(本田雅一) |
|
これから「研究者」がマイノリティになっていく?(家入一真) |
|
【第4話】キャンプイン――静かな戦いの始まり(城繁幸) |
|
思考実験のための『もし、トランプさんが米大統領になったら』(やまもといちろう) |
|
玄米食が無理なら肉食という選択(高城剛) |
|
風邪は「ひきはじめ」で治す! 葛根湯+ペットボトル温灸の正しい使い方(若林理砂) |
|
「狭霧の彼方に」特別編 その2(甲野善紀) |
|
驚きとは、システムのほころびを愛でること(名越康文) |
|
恋愛がオワコン化する時代の不幸(紀里谷和明) |
|
9月は世界や各人の命運が分かれる特異月(高城剛) |
|
21世紀型狩猟採集民というあたらしい都会の生き方(高城剛) |
|
「すぐやる自分」になるために必要なこと(名越康文) |
|
『戦略がすべて』書評〜脱コモディティ人材を生み出す「教育」にビジネスの芽がある(岩崎夏海) |
|
21世紀の黄金、コーヒー(高城剛) |












