高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

英国のシリコンバレー、エジンバラでスコットランド独立の可能性を考える

高城未来研究所【Future Report】Vol.366(2018年6月22日発行)より


今週は、エジンバラにいます。

本来なら今週、仕事で中東各地に行くはずでしたが、都合により延期となりました。
どうやら、僕が考える以上に中東には異変が起きている様子で、以前よりお話ししておりますうように、世界の三大紛争地である東ヨーロッパ、東アジア、そして中東で、まるで順番に戦火があがるように問題が起きます。
現在、ご存知のように東アジアの緊張が解けたため、「紛争のたらい回し」するように、中東情勢が怪しくなってきました。
同行する予定だった機に長けることに関してピカイチのイギリス人たちが、いま渡航を延期するということは、よほどのことなんだと思います。

そこで、中東に行かない穴埋めをテクノロジーで補完できないかと考え、エジンバラにやってきました。
あまり知られてませんが、スコットランドのエジンバラは、米国シリコンバレーのようなシリコングレンがあります。
「グレン」は、スコットランドで話されるゲール語で「谷」を意味し、まさに英国のシリコンバレーです。

シリコングレンが産業集積地となったのは、1950年代にIBMが製造拠点を作ったことからはじまりますが、ここから巣立った人々が、次々と意欲的な企業を作り、欧州のワークステーション製造の80%のシェアを握るまでに成長しました。
僕の知人が営む、暴力的な描写で話題のゲーム会社の開発拠点もここにあり、最近では、まるで増殖するようにAmazon開発センターの巨大化が進んでいます。
いまでは、この地域が欧州一の先端技術地域としてすっかり定着しました。

さて、久しぶりにエジンバラを訪れて驚いたのは、優秀なエンジニアが、いまも続々と世界中から集まっていることです。
リモートワークもできるのではないかと思いますが、僕の経験からお話ししても、ひとつの場所に集まって進めたほうが作業効率が良い、というより、大きな間違いがおきません。
それゆえ、短期的でも東欧などからエジンバラに訪れ、チームの一員となって働くのが、いまでも好まれています。
しかし、いよいよ英国のEU離脱時期が迫ってきました。
そうなると、優秀な技術者が東欧から働きに来るのは難しくなり、ここにもスコットランド独立問題が潜んでいます。

スコットランドの独立は、右派や民族派と呼ばれる人たちの運動だけでなく、優秀な人材を他国から集めないと国際競争力に勝てないシリコングレン全体の問題でもあります。
また、スコットランド独立の経済的な源は、北海油田とシリコングレンにかかっています。
原油価格が低迷する現在、シリコングレンの成長こそが、スコットランド独立の経済的エンジンと言っても過言ではありません。

英国メイ首相は、最近記者団との対話のなかで、スコットランドの独立投票が2019年夏に行われるのを否定しませんでしたが、どちらにしろ、遠からずスコットランド独立の住民投票が行われます。

EUから分断する英国。
英国から分断するスコットランド。
エジンバラも、世界のあたらしい潮流「モザイク化する世界」に向かっていると感じる今週です。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.366 2018年6月22日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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