高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

ヘッドフォン探しの旅は続く

高城未来研究所【Future Report】Vol.581(8月5日)より

今週は、金沢、長野、山梨、東京、姫路、岡山と移動しています。

今週に限りませんが、僕は人生の大半を乗り物のなかで過ごしてまして、
必然と道中仕事することが多々あります。

近年は、車内などで利便性の高いワイヤレスのブルートゥース・ヘッドフォン(アクティブ・ノイズキャンセリング機能付き)を長く普段使いしていましたが、先日、スタジオに入って良質なヘッドフォンでモニタリングすると、すっかり安価なブルートゥースヘッドフォンに耳が慣れ、解像感が失われてるのを実感し、大きなショックを受けました。

言語の習得もそうなのですが、普段聞いている帯域に集中できるよう耳が自然とチューニングされてしまいます。
日本語と英語の違いは文法などもさることながら発声帯域に大きな違いあり、ロンドン大学やNTTコミュニケーションズなどが共同で発表した研究によれば、日本語は1500ヘルツ以下の周波数に対し、英語は2000ヘルツ以上の周波数を使って会話されています。
例えば時報でいうと、最初の「ピッ、ピッ、ピッ」という音は440ヘルツ、「ポーン」という音は880ヘルツ。
わずか440ヘルツの音の違いでもあれだけの音域の差がありますので、普段聞き慣れない周波数である英語がなかなか聞き取れないはずです。
一見、ただ周波数が違うだけで大した問題ではなさそうにも思えますが、実は日本語の周波数に慣れている日本人の耳は、英語の2000ヘルツ以上の周波数を「ノイズ」として処理するように後天的に形成しているのです。

つまり、日常聞いている音が、誰もの耳を作っていると言っても過言ではありません。

かくあって、利便性に溺れ、ワイヤレスのブルートゥースヘッドフォン(アクティブ・ノイズキャンセリング機能付き)を長く普段使いしていた結果、落とされた周波数帯域を聞く力が衰えてしまい、さらに加齢も加算されているのが現在の僕の耳の状態です。

そこで、久しぶりに日本に戻ってきた二週間ほど前から、まず、加齢で失っただろう周波数チェックを日々行い、秋葉原や中野にあるヘッドフォン専門店や高級オーディオ店に日参して、普段使いする解像感のあるヘッドフォンを探し求めました。

実は、コロナの影響でヘッドフォン業界は大きく躍進しています。
考えれば理解できるところですが、オンライン会議の急増や自宅で過ごす時間が増えたことから、市場ニーズが何倍にも増えました。
この十年、ヘッドフォン業界はスマートフォンの普及とともに大きく飛躍しましたが、コロナ禍でさらに大躍進。
次々と新製品が登場している珍しく勢いある業界です。

特にクラスターが発生しやすい密閉されたスタジオに行けないアーティストは、自宅で最終段まで仕上げなければならないことになり、しかし、家では大きな良音でチェックすることがなかなかできません。
そこで、スタジオでモニタリングする環境と近い高解像度を持つ高額な(日本円にして50万円程度の)ヘッドフォンが続々と発表され、また、スタジオのモニタリング環境をシミュレートするソフトウェアやサブスクリプション・サービスも各社から発表されました。

結果的に視力回復に大いに貢献したAppleのXDRディスプレイ同様、高解像度を持つヘッドフォンとダイナミックレンジを引き出すためのヘッドフォンアンプ、そしてモニタリングのためのソフトウェアを現在、徹底的に選んでトレーニングしています。

目に見えるディスプレイと違い、なぜか店頭で散々試聴したあと持ち帰っても、エージングなどもあるのでしょうが、同じ音で再生されないことも多々あります。

こうして、毎日のようにヘッドフォンやアンプを購入して、飛行機や新幹線のなかで試しながら、自分にとって良い逸品を探し求める「ヘッドフォン迷子」な今週です。

ちなみに今週、自動車運転免許の更新がありました。
視力検査はまったく問題ありませんでしたので、視力は衰えていません。
これも良質なディスプレイを愛用してきた成果だと考えます。

たぶんこの夏いっぱい、僕のヘッドフォン探しの旅は続くでしょう。
トレーニングに励み、聴力の解像度を以前に増して高めたいと思っています!
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.581 8月5日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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