西田宗千佳×小寺信良対談 その1(全4回)

「ノマド」ってなんであんなに叩かれてんの?

ノマドはなぜこっ恥ずかしいのか

西田 ノマドっていう話だと──ウチに居て仕事をしなきゃいけない時と、ウチに居られない時と、って考えた時に、ウチに居られない時の環境というのが明らかに改善してるわけですよ、昔に比べると。昔は本当に、電源をどうやって確保するかだとか、さらに言うと、静かな環境をどうやって確保するか、というところまで全部含めて考えなきゃいけなかったんで、ノマドとかノマドじゃないとか言ってられなかったんですよ。

で、結局今は、本当にこのまんまポンと机とお茶があって、こうやって原稿打ってて、うるさいと思えばノイズキャンセリングついたヘッドホン着ければいい、っていう形になっちゃったわけでしょ。

他方でね。「オフィスとか、そういうところ要らないから」って言って、わざわざ“ノマド”って言わなくてもいいんじゃねえの? というのは思うのね(笑)。それは、ある意味、こっ恥ずかしいんですよ、単純に僕の場合は。

小寺 (笑)。そういう行為に名前をつけるな、ってことね。

西田 そうそうそう。極論するとそうですよ。だって、昔から、営業マンが移動中に、要は直行直帰で、会社になんて行けずに移動中に全部仕事をしてるっていうのはあったわけで、そういう状況のことを“ノマド”って言うのかよ、って。で、それと、パソコンを使ってスタバでドヤリングしながら仕事をするのが本質的に何が違うのか、と。違わないとしか思えないんですよね。

小寺 多分ね、サラリーマンが会社に帰れずに外でやってるっていうのは、“モバイル”って言ってた。

西田 はいはい(笑)。

小寺 でも“ノマド”って多分、外にいるんだけど、椅子に座っちゃうんですよ、きっと。

西田 あっ、はいはいはいはい。

小寺 “モバイル”は多分、椅子に座る暇もない。それに対して、新しいこの──

西田 そうか、あれだ! 本当に忙しい時に、移動中に電車の中でハードウェアキーボードとか、デカめのスマホ使って原稿書いてるのは、あれは“ノマド”じゃないんだ!

小寺 あれは“モバイル”なんですよ。

西田 “モバイル”なのか!(笑)

小寺 そしてこういう喫茶店でタブレット広げてこういうことしてるのが──

西田 これが“ノマド”か。

小寺 たぶんそこまで細かく状況を表す言葉が多分なかったんじゃない?

1 2 3

その他の記事

2ちゃんねるのスレがニュースになる時代(家入一真)
IT・家電業界の「次のルール」は何か(西田宗千佳)
「こんな死に方もありますよ」と、そっと差し出す映画です ~『痛くない死に方』監督高橋伴明×出演下元史朗インタビュー(切通理作)
『驚く力』から『ソロタイム』へ–『驚く力 矛盾に満ちた世界を生き抜くための心の技法』文庫版あとがき(名越康文)
回転寿司が暗示する日本版「インダストリー4.0」の行方(高城剛)
迷走ソフトバンクのあれやこれやが面倒なことに(やまもといちろう)
「テレビに出ている若手ロシア専門家」が古典派ロシア研究者にDISられる件(やまもといちろう)
コロナで変わる観光客とビジネス客の流れ(高城剛)
ぼくが作った映画を『進撃の巨人』の脚本を担当し『もしドラ』を酷評した町山智浩さんに見てもらいたい(岩崎夏海)
大国の世相変化に翻弄される香港の今(高城剛)
サウンドメディテーションという新しい旅路を探る(高城剛)
「奏でる身体」を求めて(白川真理)
マイナス50キロを実現するためのホップ・ステップ・ジャンプ(本田雅一)
安倍三選と野党支持低迷時代の思考法(やまもといちろう)
あらためて「アメリカ放題」を解説する(西田宗千佳)

ページのトップへ