※高城未来研究所【Future Report】Vol.307(2017年5月5日発行)より

今週は、米国ラストベルトにいます。
ラストベルトとは地名ではなく、イリノイ、インディアナ、ミシガン、オハイオ、ペンシルバニアなど米国北部五大湖周辺の「錆びついた工業地帯」の通称で、これらの地域の多くの産業が、時代遅れの工場や技術にいつまでも依存していることから名付けられました。
はじまりは1970年代、激しくなる国際競争(主に当時は日本)への価格対抗策として製造業者がラストベルトからメキシコなどに工場を移転。
工場閉鎖にともなって失業者が増加し、多くの人々はこの地域を去りました。
その典型的な「錆びた」都市がデトロイトやフリントです。
イリノイやインディアナは、現在も世界最大規模の製造業の中心地ですが、製造業が衰退していく中で、ニューエコノミーに転換することができずに、地域は停滞しています。
古き良き成功体験を脱することができず、街は疲弊するばかりです。
先週は、トランプ大統領就任100日目ということもあり、日々、500キロ以上走行しながら、ラストベルトの町々を回って、市井の人々の声を直接伺い、米国のもうひとつの側面をより深く実感しようと考えました。
そこで驚いたのは、「この地域に住む人たちが、トランプ米国大統領を誕生させた」というマスメディアの報道と異なっている現実です。
確かに、ラストベルトの失業者はトランプを支持しています。
しかし、もっとも大きな変化は、トランプに限らず共和党にも民主党にも投票しない、かつては無党派層と呼ばれた、政治不信の人々が増大していることです。
これはデータでも現れており、南カリフォルニア大学法学部の教授とヨーク大学博士課程の学生の二人は、「ラストベルトの反乱という神話」という記事で現在の米国を説明しています。(The Myth of the Rust Belt Revolt)
トランプが勝ち、クリントンが負けた理由として、現状に不満を抱える白人労働者たちによる民主党から共和党への寝返りが起きたというストーリーは、神話に過ぎないと、彼らはデータ分析から述べています。
ラストベルトの多くの人々はクリントンにもトランプにも投票することができず、棄権するか第三党に投票し、事実、そのような人たちに道中で多く出会いました。
すなわち、現在の米国で起きていることは、トランプ旋風ではなく、静かに政治から距離をとりはじめ(国家から距離をとりはじめ)、あたらしいステージへの移行です。
そのあたらしいステージを、もう国家に頼らない「自衛」もしくは「あたらしい自由」と彼らは言います。
米国が日本と大きく違うことのひとつに、銃の個人保有が認められていることがあります。
本メールマガジンでも、国家が突如不安定になる前に自衛手段として財産を分散しておくことなどを頻繁にQ&Aでお話ししていますが、米国の場合の自衛とは、まず銃の保有を指します。
現在、トランプ大統領は、ラストベルトの失業者同様に、このあたらしいステージに上がった政治不信の「自衛」する人々を、いかに取り込むのかに必死です。
その顕著な行動は、レーガン以来現役大統領としての全米ライフル協会への出席からも理解できます。
トランプは、この大会で「銃保有の個人自由」を大々的に宣言しているのです。
米国は分断しています。
それは、外から見るほど単純なものではありません。
まるで、形がないリキッドのように。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.307 2017年5月5日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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