やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

ライドシェア問題に寄せて


 現在規制改革会議で議論が進んでいるライドシェア解禁議論について、正直問題自体が超端牌というか、そこまで大問題にするべきものだったのかというのが個人的には引っかかるところですが、とにかく騒ぎになったので着地を目指してあれこれやらんといかんというのが現状なのではないかと思っております。

 私個人としては超党派議連的な勉強会が挿し込まれる前から地域再生の切り札として地域ぐるみでの白タクを制度化する方向で議論する政策は見てきておりましたので、今回ライドシェアだなんだとやる場合は特に総量規制やタクシー運転手の働き方改革(だいたい隔日で勤務シフトが組まれて、ハイヤーや運転代行でない限り就労者にとって歩合含め厳しい勤務体系であるためなり手が少ない)、そして運賃の規制により硬直化しているため賃上げが難しいということでそりゃドライバーさん不足は当然でしょうということで、これは国交省が続けてきた交通行政上の問題と思っておりました。

 ところが、例によって既報の通りDiDiに投資したソフトバンクの資本関係先であるLINEヤフー社がヤフー乗換案内とDiDiを連動させていることなどから事実上のステークホルダーであるはずの川邊健太郎さんが小泉進次郎さん経由で菅義偉さんに話を挿し込んで、すでに地域では買い物や病院への付き添いなどの足として定着しつつあった地域白タク構想を超えて観光客にも応用して配車サービスにしようという流れになったので「なんだそれは」となるのもまあ仕方のないことです。

 これはタクシー議連のような既得権益と扱われてしまった人たちだけでなく、ドライバーさんたちの労働組合にも直撃するもので、しかもそもそもタクシードライバーのような儲からない職業って規制産業ではあるけど既得権益ではないでしょうということで、全然違った方面から騒動になってしまったのはとても残念なことです。一言で言えば、仕掛け方も議論の進め方も雑なんだよ雑。もっと順番を追って丁寧にやっていれば、何事もなく配車サービスの自由化を進めていきましょうってなったはずなのに、何を焦ったんですかね。

 ということで、しょうもないなあと思って一度はお役御免になったので笑って外から見ていたのですが、ここにきてお前詳しいのだからちゃんと槍持って参戦しろという召集がかかって超絶面倒くせえなあという雰囲気になってきております。いや、面倒くさいんだよたいした話でもないのに。これ、国交省と官邸とで調整して着地させてくれれば本来はそれで良かったことなのに、うっかり議連のような勉強会で次期常会の前半戦のネタとしてぶっ込んできたもんだから、12月26日ごろをめどとする方針策定でいったん結論は出ても、その後の進展によってはいろんなものが再度ひっくり返る話になるんじゃないかということで、お好み焼きじゃないんだからひっくり返して右往左往してもしょうがないだろと凄く思うんですよ。

 さらに、メルマガでも以前書きましたし、先日も某所に呼ばれて検討会で前捌きをやらせていただきましたが、そもそも地方ではタクシーが捕まらないどころか、日々の生活に必要であった公共交通機関が死んで、日々の買い物が大変で、学校に通学することも困難で、産科小児科も地元にないので地域で子どもを育てられないぞってのが相当深刻な地方社会の地盤沈下に直撃しておるわけです。しかも、この前も呼ばれて相模原市とか行ってきましたが、まあもう財政がどうしようもないので公共サービスも次々と閉じざるを得ないってことで、そろそろ首都圏の、それもちょっと外れた郊外の自治体から倒れ始めるぐらいの勢いで面倒くさいことが起きてきているわけです。

 昔は自治体から呼ばれてやるような仕事は面白そうだから復興庁でも自治体でもほいほい現地に行って一泊して楽しくやってましたが、さすがに解決の道筋なんて絶対にないのだから私みたいなのが知恵を出したところで実現などできないでしょうということでほとんど断るようになりました。あるとしたら、洋上風力とかそれらしい新産業や投資が集まる自治体の再興でご一緒するぐらいでしょうか。掛けた時間だけの価値はなくなっているのが自治体の仕事になっているのも事実なので、死刑宣告を刷るためだけに省庁紐づきで自治体巡りしてもお互い嫌な気持ちになるし成果も出ないしで、やる気が出なくて面倒くさいのです。

 そんな中で、地方のタクシードライバーのところにだけ焦点を当ててライドシェアだよと言っても旨みなんてゼロですよゼロ。こんなのに議員さんたちの貴重な時間や一日当たりの歳費を使って議論繰り返したところで意味のある政策になんてなりませんって。それなのに、変な官僚OBの人たちが個人の日銭を当てにしてか知りませんがこの重要な政策には日本の規制改革の種が潜んでいるとか風呂敷を広げるものだから、なに言ってんだあいつらという気持ちになるじゃないですか。そんなのが総理直下の会議体でワーキンググループをやって調整してるとか悪夢なんじゃないですかね、意味がありませんから。

 意味がないよって話はほうぼうでして、そりゃそうですねってなって、何よりドライバーさんたちの労働環境をどう維持するのかや、白タク解禁にしたところで保険どうすんだとか、そういう足元の政策の詰めに時間がかかるようなことをしてどうするんだと思うんですよ。ドライバーさんの賃上げをやり、タクシー会社が地場でそれなりに儲かる体制に戻さないといけないんでしょうが、市場がそもそもないんだよ市場が。

 もしやるなら、PHV型ライドシェアですべてはハイヤーにして、アプリ上でどこでピックアップしてどこまでいって幾ら運賃がかかるというものが完結して、現金だけでなくウェブ上で決済が完了するよというぐらいまでだったら大いにやったらいいと思います。むしろワイとか最初からそう言ってますよね。地域白タクだって特段の用事が明示される場合は乗り合いの車を回すのをちゃんと制度化することで、保険も効くし、実需要と配車すべき台数や頻度も分かりやすいからそれでいいじゃないですか。

問題はライドシェアではなく、配車システムの利便性とタクシー運転手さんのお給料の問題

 なもんで、あまり強くは言いませんがくだらねえことしているなあ、無駄なことでみんな時間使って苦労してて馬鹿じゃないのと笑ってたら、まさかお前槍もってこっち来いって言われてしまうとは思いませんでした。えーー。いやあまあ、何かしろとなればしますけど。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.426 ライドシェア問題をどうしたものかと思案しつつ、怪しい宗教法人売買の実態や生成AIと知財権利の有り様に触れる回
2023年12月22日発行号 目次
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【0. 序文】ライドシェア問題に寄せて
【1. インシデント1】宗教法人売買の実態に見る脱税・マネロン組織のエレガントな手口
【2. インシデント2】生成AIと知財権利の行く末をぼんやり考える
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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