やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

26年早々のJILISコロキウムでは、前デジタル大臣の平将明さんをお呼びしてあれこれ


 年明け早々からヘビーなテーマでございますが、やるのでございます。

JILISコンサルティング主催「コロキウム(談話会)」26年1月度 平将明先生

 今回お呼びいたしますゲストは、前デジタル大臣にして初代サイバー安全保障担当大臣を務められた平将明さんをお迎えし、『日本の民主主義をどう守る? サイバーセキュリティ最前線』をテーマに議論を展開したいと考えております。言い方としては変ですが、いやほんと当職も最前線ど真ん中で頑張ってるところですんでその点では言いたいことは山ほどあるテーマではございます、はい。

 折しも、12月23日に「重要電子計算機に対する特定不正行為による被害の防止のための基本的な方針」が閣議決定されました。あ、いや、まあ中身についてはいろいろお考えが皆さんあるところですんで、何があっても私のせいじゃないですよ。世の中「まあこんなもんか」という緩い感じの受け止めが重要です。内容について詳述したいところではありますが、概要だけ申し上げますといわゆる能動的サイバー防御に関する基本方針でございまして、これは令和4年の国家安全保障戦略で打ち出された「サイバー安全保障分野の対応能力を欧米主要国と同等以上に向上させる」という方針を具体化したものであります。法律としては令和7年5月に公布されておりまして、いよいよ本格的な制度運用に向けた段階に入ってきたわけですね。

 攻撃力に全振りしたい私から申しますと、もう一声と申し上げたいところですが、しょうがないのかなとは思います。はい。

 基本方針を読みますと、なかなか興味深い内容が盛り込まれております。通信情報の利用に係る制度として、事業者との当事者協定による同意に基づく通信情報の取得や、一定の条件下での同意によらない通信情報の取得が規定されています。また、特別社会基盤事業者からの特定侵害事象等の報告義務、官民連携のための協議会の設置、そしてサイバー通信情報監理委員会という独立機関による監視体制の構築などが含まれております。「その監視体制って誰がやるもんなの」という素朴な疑問は百出しそうな気がしますが、その辺は見なかったことにしましょう。

 本件において議論が分かれるところで特に重要なのは、みんな大好き通信の秘密との関係でございます。基本方針でも「憲法第21条第2項にその保障が規定されている通信の秘密は、いわゆる自由権的、自然権的権利に属するものであり、最大限に尊重されなければならない」と明記されており、自動選別による機械的情報の抽出や非識別化措置など、さまざまな制約が設けられています。まあ非常に重要な個所でございますね。で、国家を背景としたサイバー攻撃への対処能力を高めつつ、国民の権利をどう守るのか。このバランスをどう取っていくのかは、まさに民主主義国家としての試金石と言えるでしょう。

 平将明さんは、まさにこの制度設計の中核を担ってこられた方であります。デジタル大臣としてはマイナンバーカードの普及促進や行政のデジタル化を推進され、初代サイバー安全保障担当大臣としては能動的サイバー防御の法制度整備に尽力されました。現在はいろんな意味で大変残念ながら大臣の職を離れておられますが、だからこそ忌憚のない議論ができるのではないかと期待しております。

 当コロキウムでは、現在のサイバーセキュリティの観点からどのような危機が認められているのか、法整備の進捗状況はどうなっているのか、AIの急速な進化など技術の変化によって守るべきフィールドにどのような変化が生じているのか、今後10年というスパンで考えたときにどの部分の強化が必要になってくるのか、といった点について具体例や具体策も含めて議論をする予定です。正直、割と面倒くさい前提条件や国際情勢もある中で、後手に回ることになった我が国のサイバーセキュリティやACDに対して適切な政策、人員と予算、やるべき内容と組織、チェック体制あたりはそろそろ真面目に考えないといかんでしょうという感じになりますでしょうか。

 昨今の国際情勢を見ておりますと、重要インフラへのサイバー攻撃は質・量ともに増大の一途をたどっております。あんまり表には出しませんがいろいろ起きてて面倒くさいんすよね。本件基本方針でも「サイバー脅威は国民生活・経済活動を脅かすまさに災害のような存在となっている」と表現されておりますが、まさにそのとおりでございまして、電力、通信、上下水道、金融、医療、公共交通機関など、我々の生活を支えるインフラがサイバー攻撃によって機能停止に追い込まれるリスクは年々高まっております。

 当日は、平さんに加えまして、みんなお馴染みJILIS理事長の鈴木正朝さん(新潟大学法学部教授)、JILIS理事の板倉陽一郎弁護士が登壇し、司会をJILIS上席研究員の私・山本一郎が務めます。ミニシンポジウム形式で活発な議論を行い、技術・法律・政策それぞれの観点から多角的にサイバーセキュリティ問題を掘り下げます。結局、官憲でできないことは全部官民組織に降ろされ、蓋を開けてみたら私らが手に手に槍や斧を持って攻撃側サーバーに闖入して無害化処理を泣きながら徹夜対応する、なんてことになるかもしれませんけども。

 JILISコンサルティングでは、毎月、各界の第一線で活躍されるゲストをお招きし、デジタル社会における諸課題や政策問題について、産官学民が垣根を越えて議論する場を提供しています。

 これまでも、公職選挙法改革、プラットフォーム規制、ファクトチェック、詐欺広告対策、アニメ産業政策など、時宜を得たテーマで充実した議論を重ねてまいりました。

 会員の皆様には、都内会議室でのリアル参加に加え、Zoomによるオンライン参加、アーカイブ視聴などご参画の方法を複数ご用意しております。遠方の方や多忙な方も、ご自身のスタイルに合わせてご参加いただけます。コロキウム終了後には懇親会も開催し、会員同士の情報交換や専門家への個別相談の機会もございます。

 日本の安全保障とデジタル社会の未来について、制度設計の最前線に立ってこられた方々やそれを支える蛮族の皆さんと共に交流を深め、細やかな問題について考える貴重な機会です。政策形成の現場を知り、これからの日本のサイバーセキュリティのあり方について議論したい方のご参加をお待ちしております。

 詳細およびお申し込みは、JILISコンサルティングのウェブサイトをご覧ください。

https://yakan-hiko.com/meeting/jilis_consulting/top.html

https://www.jilis.org/

 多くの方のご参加、心よりお待ち申し上げております。
 

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Vol.499 サイバーセキュリティをテーマとした議論へのお誘いをしつつ、我が国の来年度予算案やAIを巡る電気と水の問題に憂える回
2025年12月28日発行号 目次
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【0. 序文】26年早々のJILISコロキウムでは、前デジタル大臣の平将明さんをお呼びしてあれこれ
【1. インシデント1】来年度予算さあ… という感じになる年末
【2. インシデント2】AIバブル真っ盛りな裏で気になる電気と水の問題
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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