※高城未来研究所【Future Report】Vol.669(4月12日)より
今週は、神戸、岡山、東京、浜松と移動しています。
10年前にはそれなりに繁華街だった場所も、シャッターが目立つようになりました。
これにはいくつもの理由があると思いますが、ひとつは2000年の「大規模小売店舗法」廃止によって小売店の商業活動が守られなくなり、大型ショッピングセンターが全国各地に林立したことによって、駅周辺が必ずしも繁華街の機能を持ち合わせなくなったことです。
この点が欧州と日本の決定的なまちづくりの違いであり、欧州では1970年代に大型店などの郊外出店の加速によって街が空洞化した反省に立ち、いまでは大型店の進出にたいする規制を強化して街に活気が戻りました。
また、人々が夜の街へ戻って来ていません。
データを見るとコロナ以前の人出の60%前後まで回復したと言われていますが、20時を前後するとインバウンドばかりが目立ち、体感では30%前後しか戻ってないのだろうなと感じます。
在宅勤務が常態化した企業も多く、いまだ会食を禁止している団体もあるようで、世界に類を見ないマスク着用率の高さを見ても、日本はいまだコロナ禍にあるとも言え、もはやこれが「ニューノーマル」なのかもしれません。
今週移動を続ける太平洋沿岸部は、かつてどの街も海や川を起点にした水上交通を中心に街づくりが行われていましたが、都市交通網が発展して「郊外」という概念が生まれました。
郊外とは「都市の外側にある地区、その中でも特に住宅地区」という英国オックスフォード辞典の定義のように、川から離れ、鉄道に導かれるよう「沿線」へと人口移動が起き、あたらしい街(ニュータウン)が誕生します。
近かった「住」「職」も分離され、誰でも車を持てるようになり、飲食からスーツまで、全国各地のロードサイドに店が立ち並ぶようになりました。
ところが、少し前まで車を持っていなければ不便だった場所が、ライドシェアなどのオンラインサービスによって車を所有する必要もなくなり、そうするとわざわざロードサイド店に行かず、可能な限りオンラインで生活するようになります。
半年ほど前、岡山県内に初のAmazon独自配送拠点が設置されたことで、このエリアも多くの商品が夜9時の注文で翌日配達されるようになりました。
こうなると中心地にあるターミナル駅はおろか、沿線駅前やロードサイドにすら出向かなくなっていきます。
現在、米国主要都市では、金融緩和の影響で都心だけではなく郊外の地価も著しく上がっているため、「郊外のさらに外側にある地区」へと移住する人たちが急増しています。
日本のマンション価格相場を見ますと、東京の郊外と言われていた立川などの沿線都市の住宅価格が、この二年で平均で1億円近くまで跳ね上がり、これから住居を購入するのは現実的ではありません。
こうした現状を鑑みても、いままでの生活が破綻に向かっていると言わざるを得ません。
米国で起きたように、住む場所にたいする考え方を抜本的に変える人たちが急増し、仕事を二つ以上持つ時代に突入しています。
高齢化により、通いやすいなどの「働くため」より「快適に住むこと」に重きが置かれ、Amazonが早く届くなら、もはやそこは「あたらしい郊外」です。
海や川を中心とした街づくりから、ターミナル駅がハブになっていた時代に移り、それがいま終わろうとしているんだな、と、太平洋沿岸都市をまわって感じます。
どの街も小さな公園に咲く桜がとても綺麗ですが、駅前同様、「街」という概念は、これから10年で大きく変わるでしょう。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.669 4月12日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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