鏡リュウジ
@Kagami_Ryuji

鏡リュウジのメルマガ『プラネタリー夜話』より

職業、占い師?

それは科学でもあるし、宗教でもある

さて、このデイヴィネーション(マンテイケとかマンシー)という言葉は実に由緒正しいもので、その営みはどんなものか、ということが古典古代からずっと真剣に討議されてきました。

占いは占い、深く考えなくていいじゃん、などといって彼らはすませていなかったのであります。

古代の人々にとっては、デヴィネーションとしての占い術は、神々とのコミュニケーションであり、そしてそれは単に当てものであるばかりではなく、この世界そのもののなりたちや法則を知ることにつながっていたのだ。

つまるところ、それは科学でもあるし、宗教でもあるし、哲学でもあるし、霊的修行といった側面もあり、そのすべての総合だったといっていい。

たとえばローマ時代の哲人であり、ラテン語の模範たる文章を残したことで知られるかのキケロも、ずばり、『De divinatione』という本を残しているほどだ。キケロは占い術についてさまざまな考えを巡らせているのだ。

キケロは、当時知られていた占いを網羅し、哲学者らしい懐疑主義をもちこみながらもローマの政治については決断が占い術によって行われていたことも記している。キケロは最初、占いの信奉者であったがのちには占いに対しての痛烈な批判者となってゆく。

この本は、占い術の擁護者であるキケロの兄弟クィントウスとキケロ自身の対話というかたちで展開してゆく。クィントウスは、過去の占いの的中例をあげ、さらには神々が存在するのであるから、そのメッセージを受け取る方法もあるはずだ、という推論も展開してゆく。

一方、キケロは合理的精神、懐疑主義にのっとって完膚なきまでに占いの根拠を論破してゆくことになる。その口調たるや、反オカルトの大槻教授や現在の占星術批判者の模範となるであろうものではあるが……。占いを愛するぼくたちは、いったん、当たる当たらないの議論はここではおいておくことにしよう。

1 2 3
鏡リュウジ
1968年3月2日生まれ。占星術研究家・翻訳家。国際基督教大学卒業、同大学院修士課程修了(比較文化)。占星術・占いに対する心理学的アプローチを日本に紹介したことで、幅広い層から圧倒的な支持を受け、従来の『占い』のイメージを一新する。英国占星術協会、英国職業占星術協会会員。日本トランスパーソナル学会理事。平安女学院大学客員教授。

その他の記事

FATF勧告でマネーロンダリング日本不合格の後始末(やまもといちろう)
ファーウェイ問題から想像する強者にとっての心地よさ(本田雅一)
受験勉強が役に立ったという話(岩崎夏海)
「定額制コンテンツサービス」での収益還元はどうなっているのか(西田宗千佳)
片思いの恋愛感情、相手に伝えるべき?(家入一真)
週刊金融日記 第270号 <小出恵介美人局事件とベイズ統計学 ~なぜナンパは最も安全な出会いなのか 他>(藤沢数希)
本当に今、自分は仕事を楽しめているだろうか?(本田雅一)
弊所JILIS『コロキウム』開設のお知らせとお誘い(やまもといちろう)
梅雨時期に腸内環境の根本的な見直しを(高城剛)
ネットリテラシー教育最前線(小寺信良)
日本はどれだけどのように移民を受け入れるべきなのか(やまもといちろう)
日本保守党と飯山陽絡みで調査方としていつも思うこと(やまもといちろう)
失ってしまった日本ならではの自然観(高城剛)
冬になるとうつっぽくなる人は今のうちに日光浴を!(若林理砂)
週刊金融日記 第275号 <いまさら人に聞けないビットコインとブロックチェーン・テクノロジー他>(藤沢数希)
鏡リュウジのメールマガジン
「プラネタリー夜話」

[料金(税込)] 550円(税込)/ 月
[発行周期] 月2回発行(第2,第4月曜日配信予定)

ページのトップへ