「The London Heist - Getaway」は、カーチェイスをしながらの銃撃戦を楽しむタイトルだ。HMDの他、手にはモーションコントローラである「PlayStation Move」を持ち、両手の代わりに使う。自らが乗る車に追いすがる追跡者を、右手のマシンガンで倒す、という内容で、説明だけを聞くと、昔からよくあるガンシューティングのようだ。実際そうなのだが、自分で体を動かし、時には車の窓から体を乗り出して敵を撃つという体験は、VRでなければできない。
・「The London Heist - Getaway」の画面。アクション映画のように、ハイウエイでの華麗な銃撃戦を楽しめる。

このゲームではかなり派手に体が動くのだが、酔うことはない。自動車の側は自動かつ一定の速度で動いており、「今自分がどういう状態にあるか」「外界の風景がどのように流れていくか」を脳内で把握しやすいためだろう。
動いている感じを出すために、自分自身が動く必要はない。いかに「気持ち良く人間を騙すか」がVRのポイントだ。「The London Heist - Getaway」の場合なら、いかに「自分がかっこいい銃撃戦を戦っている」と思わせれば勝ちなのだ。その実景は、そんなにかっこ良くなかったとしても、本人には関係ない。
・「The London Heist - Getaway」をプレイ中の実景。どことなく情けない絵面だが、本人の脳内では、前出のような手に汗握るアクションシーンになっている。両者の差こそが「騙し」だ。

ゲームはこれまで、人を錯覚させるというより、「より速く」「より強く」「より派手に」見せる方を優先してきた。だがVRでは、より「自分がそこにいる」感じが重要になる。エンターテインメントらしい派手さは大切だが、違和感を持たれるような作り方だと、体が受け付けないのだ。
とすると、やり方はずいぶん変わってきそうだ。自分を中心において、リアルな周囲がいかに「それらしい体験をさせてくれるか」という、遊園地のアトラクションや大掛かりな手品に似たノウハウが重要となってくるだろう。
そうした部分の作り込みには時間がかかる。SCEだけでなく、あらゆるVR関係の製作者は「とにかくはやく始めるべきだ」と話していた。それは、「心地よい騙し方」を見つける試行錯誤にかかる時間を思ってのものなのだ、ということが、筆者にもようやく体でわかってきた気がする。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
2015年7月24日 Vol.044 <様々な射程距離号>目次
01 論壇(小寺)
ロボット革命の中のドローン
02 余談(西田)
VRとは「マジック」と見つけたり
03 対談(小寺)
救急という視点から見たドローンの未来(4)
04 過去記事アーカイブズ(小寺)
"民放VOD"に感じる「上から目線」
05 ニュースクリップ(小寺・西田)
06 今週のおたより(小寺・西田)
07 今週のおしごと(小寺・西田)
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。 家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。
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筆者:西田宗千佳
フリージャーナリスト。1971年福井県出身。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。
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