※高城未来研究所【Future Report】Vol.597(11月25日)より

今週も、東京にいます。
明日から公開の映画「ガヨとカルマンテスの日々」の最終仕上げのため、かつて世界に輝いていた日本映画を支えた調布や成城を、日々、往復しています。
調布はかつて「東洋のハリウッド」と呼ばれ、現在も映画・映像関連企業が集まっており、個人的にも馴染みの現像所や特機屋などが集まる産業集積地です。
都心から離れた場所にあるのは、フィルムの現像には綺麗な水が大量に必要だったこともあって、郊外の水源を求めてこの地に作られました。
その後、映画産業に牽引された調布の美味しい水は、深大寺そばを大きく広めることに貢献します。
雑木林だった「成城」を高級住宅街へとブランディングさせたのも、映画産業の力でした。
しかし、日本映画の衰退と共に、調布を拠点にしていた日活が経営破綻し、今週、東京で唯一フィルムを現像していた東京現像所が、来年で全事業を終了すると発表しました。
東京現像所が手掛けるDCP(劇場上映用デジタルデータ=デジタル・シネマ・パッケージ)と呼ばれる全世界共通の映画マスタリング・フォーマットの作成は、2023年3月31日をもって終了するとのこと。
この一週間だけでも数度通った馴染みの試写室も、見納めまで遠くありません。
実に感慨深いものがあります。
この感覚は、かつてDJとしてアナログ・レコードをリリース出来なくなった時に似ています。
気がつくと、徐々にアナログ用のカッティングやマスタリングができるスタジオが日本国内からなくなり、最後はロンドンで仕上げるようになった15年前を思い出しました。
その後、僕はロンドンに転居します。
また、私鉄沿線の街々を歩けば、新型コロナウィルス感染拡大もあってか、飲食店の「閉店のお知らせ」を目にすることが増えました。
お聞きすると、年末に期待していた大口忘年会のキャンセルが相次ぎ、補助金や協力金、支援制度が打ち切られたこともあって、早めの撤退を決めたと飲食関係者は話します。
しかし、「(仮想)仲間と宴会」という日本式システムを強固にしていた旧型社会の瓦解と、もう何年も前からお話ししていますように、サードウェーブ・コーヒーに代表される「夜型文化から朝方文化へのシフト」や、「お酒」そのものが世界的にトレンドアウト傾向にあるなど、新型コロナウィルス感染拡大とは関係ない要因のほうが強く見えます。
実は、飲食店への補助金や支援制度は店子救済というより実質的には地主への補助金であり、このあたりはゼネコン国家日本ならではだと、他国と見比べて実感するところです。
日本は、ゼネコンを中心とした不動産主義国家ですので、オリンピックを開催&安価で土地を払い下げた見返りに、都庁から大手不動産各社に大量の天下りがいくわけですが、飲食店への補助金や支援制度も本質には同じ構造を孕んでいます。
日本式飲食店「居酒屋」が急増したのは、バブル経済崩壊と共に、安く酒と料理を提供できる駅近な店として、この30年で全国的に定着しました。
大人数で集まることができ、少々騒いでもよく、様々な人の好みにあわせて飲み物や料理を選べる「歌わないカラオケ店」のように沿線都市の駅前に急増しましたが、現在、激減しています。
かつて映画館にとって変わった走馬灯のように輝くレンタルビデオチェーン店が風前の灯になったのと同じく、駅前にある居酒屋チェーン店の寿命も、長いようには見えません。
人出は戻っても、コロナ禍以前には戻らない生活様式と文化。
景気後退と共に、再び時代の曲がり角に差し掛かっていると感じる今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.597 11月25日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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