高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

長寿県から転落した沖縄の光と影

高城未来研究所【Future Report】Vol.678(6月14日)より

今週は、沖縄本島中部にいます。

早くも梅雨入りし、グズついた天気が続く沖縄ですが、観光客はそれなりに戻ってきており、どのホテルも他国の観光地同様混雑しています。

ただし、沖縄は他の地域では見られない現象が起きています。
それは、新型コロナ感染拡大を防ぐため、各地でマスク着用のアナウンスが頻繁に聞こえることです!

確かに新型コロナは夏になると感染者が増えますが、それは日本だけの傾向ではなく世界どの地域でも同じです。
特に観光地は春先から多くの人がやってきて、その影響もあって新型コロナウィルスが感染拡大する傾向が見て取れます。
沖縄も他ではありません。
ここ数年、沖縄県の新型コロナウィルス感染拡大ピークは6月前半、つまり今の時期であり、今回お話を伺った県内の医師によれば、ゴールデンウィークに他県や海外から多くの観光客が沖縄に訪れ、それによって感染拡大するので、感染ピークが毎年この時期になると言うことでした。

だからといって、マスク着用をパブリックアナウンスすることが正しいとは限りません。
いまや、コロナと共に生きる事は世界中の常識となっており、また、オミクロン波の第一波以降、マスクが効果がないことは科学的にも明らかです。
https://www.uea.ac.uk/about/news/article/wearing-face-masks-did-not-reduce-risk-of-covid-infection-after-first-omicron-wave-research-shows)。

しかし、ここ沖縄ではローカルテレビでも公共交通機関に乗る場合は、マスクをつけるようにと頻繁に注意が促されています。
まるで数年前に逆戻りしたようなタイムスリップ感を得るほどですが、県内各地でマスク着用を多言語で公共的にアナウンスしており、それを聞いた海外ゲストは混乱している様子が見受けられます。

いったい、この状況はいつまで続くのでしょうか?
どこか時制が狂ったように感じるほどです。

さて、今回はもともと長寿県だったのに、あっという間に転落した沖縄の光と影について調査に参りました。
1975年の統計以来、沖縄の平均寿命は女性が全国第1位とトップを維持し、男性も85年には1位と、一貫して上位を守り続けてきました。
1995年になると大田昌秀知事(当時)が「世界長寿地域宣言」を出し、メディアはこぞって伝統的な食事、温暖な気候、おおらかな県民性など、「沖縄の長寿の秘訣」を探りました。

ところが21世紀に入ると状況は一変します。

男性が26位と大幅に後退し、後を追うように女性はトップを長野県に譲って3位となってしまいました。
さらには65歳未満(30〜64歳)、いわゆる働き盛り世代の死亡率は男性でワースト5位、女性も同じくワースト4位と、現在の健康状態が非常に厳しい状況にあることが伺い知れます。

なぜこのような事態に陥ってしまったのでしょうか?

一般的には食生活の欧米化と言われていますが、実は沖縄は日本で初めてファーストフードができた地域でもあります。
一般的に日本初のファーストフード店は1971年にできた銀座のマクドナルドだと言われていますが、その10年ほど前、米国の占領下にあった沖縄ではファストフード店が誕生しています。
それとともに肥満が増え、健診の数値も悪化していったことが明らかになっており、つまり沖縄は日本人の健康の先行きを占う「炭鉱のカナリア」とも言える存在なのです。

かつて沖縄は、世界に五つある長寿地域のブルーゾーンだと言われてきました。
ブルーゾーンとは、世界で特に長寿な人々が多く住んでいる地域のことを指し、イタリアのサルデーニャ島、日本の沖縄、ギリシャのイカリア島、コスタリカのニコヤ半島、アメリカのロマリンダなどが知られていますが、沖縄は既に過去の話になりつつあります。

ただし、ブルーゾーンの実態は、世界遺産同様な認証ビジネスの側面も強く、全てを鵜呑みにできるものではありません。
一般的に長寿の秘密を追った研究や書籍は多数存在しますが、もともと長寿だった場所があっという間に短命地域へと陥落する様を描いた書籍はほぼ見当たりません。
それゆえ、今回調査に訪れたわけですが、沖縄県民の健康状態が著しく悪化する様を改めて実感しています。

こうなると絶滅危惧種同様、ブルーゾーンではなくレッドゾーンではないのでしょうか?

どちらにしろ問題ですね、沖縄県だけに限らず日本人の食生活は。
マスク着用をいまだにアナウンスするのと同様、食品スポンサーが多数を占めるマスメディアの功罪は、とても大きいと心底思う今週の沖縄です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.678 6月14日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

その他の記事

ダンスのリズムがあふれる世界遺産トリニダの街(高城剛)
「狂信」と「深い信仰」を分ける境界(甲野善紀)
NYの博物館で出会った「カミカゼ・エクスペリエンス」(川端裕人)
21世紀に繁栄するのは「空港運営」が上手な国(高城剛)
「狭霧の彼方に」特別編 その3(甲野善紀)
「時間」や「死」が平等でなくなる時代到来の予感(高城剛)
開発者会議で感じた「AWS」という企業の本質(西田宗千佳)
暗黙の村のルールで成功した地域ブランド「銀座」(高城剛)
TPPで日本の著作権法はどう変わる?――保護期間延長、非親告罪化、匂いや音の特許まで(津田大介)
新聞業界の斜陽と世迷言について(やまもといちろう)
失敗した「コンパクトシティ」富山の現実(高城剛)
福島第一原発観光地化計画とはなにか――東浩紀に聞く「フクシマ」のいまとこれから(津田大介)
「ローリング・リリース」の苦悩(西田宗千佳)
孫正義さん、周りに人がいなくなって衰えたなあと思う件(やまもといちろう)
自分らしくない自分を、引き受けよう(家入一真)
高城剛のメールマガジン
「高城未来研究所「Future Report」」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(第1~4金曜日配信予定。12月,1月は3回になる可能性あり)

ページのトップへ