やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

石破茂さん自由民主党の新総裁に選任、からのあれこれ


 大変なことになりましたが、まずは石破茂さんが自由民主党総裁に選出されました。
 おめでとうございます。心より、深く祝福申し上げるとともに、首班指名ののちに総理大臣に就任されることを踏まえて良い方向に日本を導いていただけることを、一国民として期待してやみません。

 ご祝儀相場というわけではありませんが、いきなりドル円が146円から143円台に突入し、まあみんな考えていることは一緒ですよね、分かります。これから党人事、組閣と官邸人事に移っていくわけなんですが、まず大前提として、正直石破茂さんと具体的な政策や霞ヶ関方面で意向をちゃんと聞いたことがある人、ほとんどいないんじゃないかと思うんですよ。

 良いとか悪いとかではなくて、石破さんが霞ヶ関に対して何をしようと考えている人なのか、本当に良く分からないんです。これから手探りで関係を築いていくしかない。間に入ってどうにかしてくれそうな人、という点では、石破茂さんの推薦人に適任を何とか見つけてそこを窓口に話をし、意向を積み上げていくほか方法はありませんから、重要政策に関しても行われた会見や演説で喋っている漠然としたことを手掛かりに類推するほかないんじゃないですかね。

 一部媒体でも内閣審議官は内定しているんじゃないかとか、官邸実務を担う副人事はゼロベースだとか、いろんなことが書かれていましたけれども、岸田文雄政権の継続性を考えると割と選択肢はないんじゃないのかというのが正直なところです。ところが、肝心の本人が「石破さんも高市さんもほとんど会って話したことがない」ってことなので、その点ですでに不安だなあという感じが致します。

 すでに石破さんが話をしていて重要な政策として見受けられるのは、a. 裏金議員に対する再調査を自ら行い、選挙での非公認も含めた追加処分も辞さないことと、b. 地方経済救済のために国土全体への投資を増やす方向にシフトすることとが大事なポイントになろうかと思います。後者は菅義偉さんの影響もあるし、一連の党人事や組閣においては菅義偉さんから石破茂さんに注文・打診が入るのではないかと見る向きも強くあります。それこそ、組閣の目玉に小泉進次郎さんを重要な閣僚に起用する話は出るでしょうから、その点ではガースー色が強い人事になると見る向きがもっぱらです。

 他方で、石破茂陣営で汗をかいた人たちからの話では菅義偉さんは推薦人集めで苦労している最中にほとんど推挙したり融通してくれなかったこと、総裁選最中は露骨に小泉進次郎陣営に肩入れして石破茂陣営の議員票を切り崩す動きをしたことがあって、菅義偉さんのキングメーカーぶりに不快感を示す人もおられます。

 今回は、首班指名後に総理大臣就任、所信表明演説を行った後で、おそらく衆議院解散の前に災害対応も含めた小幅の補正予算を考えることになるでしょう。選挙の目玉は今回前面に立った小泉進次郎さんと新総理・石破茂さんによる人気者タッグで全国票を掘り起こし、裏金議員を干し、より地方経済復興重視の経済政策で回していくのではないかなあと思います。

 個人的に心配しているのはデータ関連法制とエネルギー関連です。あるタイミングで石破茂さんに話をする機会があってやり取りしていましたが、まだこの方面政策に対しては充分なご理解をいただける状況にはなかったのかなという感覚がありましたのと、エネルギー関連ではやはり原子力発電に関係する政策で余り前向きではないご発言もありましたので、次期通常国会冒頭であれこれされるエネルギー基本計画には一部再生エネルギー関連が盛り込まれる一方で原子力に関しては若干後退が予想されます。

 石破茂さんは安全保障には一家言ある人物ですし、外交にも意欲的な面はあるものの、防衛省方面の皆さまに於かれましてはそこまで石破茂さん万歳という雰囲気はございません。まあ、その辺はいろいろ察しております。また、安全保障とは切っても切れない関係にある外交において、特にアメリカとの関係で石破茂さんがどこまで関係維持・強化を図るのか(そもそもそれが必要だという認識がきちんとあるか)と、東アジアの安全保障においてはアジア版NATOと口走って座が冷えるなど、割とお花畑な感じの政策を打ち出そうとする恐れはあります。

 それでも早期解散が行われる限りにおいては、ボロの出ないうちにしっかりと安定多数の議席を確保し、選挙結果を見て人事再改造も行いながら政権運営していくことになるのは間違いありません。問題山積であることは間違いありませんし、社会保障関係は今回の総裁選であまり争点にならなかったことも含めて着地点を解散挟んで練り込んでいく感じになるでしょうか。

 正直「悲願の総裁に就任されるからには、国民のためになる形でぜひ頑張ってほしい」という気持ちでいっぱいです。何とか頑張っていただけることを重ねて期待したく存じます。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.453 石破茂さんの自民党総裁就任とその後に続く解散総選挙をあれこれ思案しつつ、AI普及時代のリテラシーなどに思いを馳せる回
2024年9月27日発行号 目次
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【0. 序文】石破茂さん自由民主党の新総裁に選任、からのあれこれ
【1. インシデント1】解散総選挙ですね
【2. インシデント2】AI利用が当たり前の時代のリテラシー
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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