日本は昔から「判官贔屓」が好きなのか、戦略的な理由で劣勢に陥っても、神風のような奇蹟が起きたり、奇襲による一発逆転で勝利できるかもしれないと信じることも多いように思います。
もちろん、実際には劣勢は劣勢のまま、多少の策がハマったところでジリ貧になって敗退することになるわけですけれども、野球は9回二死からであると本気で信じる人たちがふりまく非合理な発想で無駄なリソースが逐次投入される傾向には昔もいまも変わりがありません。
現場の指揮官がメンバーの指揮を高めて潰走しないために「まだ勝負は終わっていない」と奮励するのは仕方がないとして、大本営でそういうことが往々にして起きるのは現場感覚のなさゆえなのでしょうか。
現状を打開するために何か良い策はないかと言われて、その場しのぎだけどこういう方法はありますと献策することは良くあります。でも、それは全体の道のりがハッキリしているならば目の前の窮状は捨て置いても前に進んじゃったほうがいいということもまた多くあります。そこを担当している現場からすれば堪ったものではありませんが、変に手戻りをしたり、現状変更で多くのリソースを投入するよりは、そこで頑張っている人たちを一刻も早く無駄な作業から引き上げてあげて、別の合目的的な仕事に振り直ししてあげたほうがよほど健全です。
それもこれも、以前YouTubeでも語った通り「目標の明確化」と「工数の確認」という、いわゆる工数の割り出しと作業みつもりが重要になります。デスマーチも炎上も、結局これが明確でないからいま突っ込んでいるリソースが最適化の検証もできず、大きく遅延したり中断してから「なんでこんな炎上をしているのか?」と気づくことになるのです。
炎上した後で必ず出るのは「どうにかならないのか」であって、どうにもならないから炎上している現場に対して、もっと頑張れとケツにムチを入れて徹夜してでも仕上げろと強要するマネージメントが少なくなく、さらにこれが精神主義のアプローチである以上、どうしていいか分からない現場が闇雲に仕事をした結果、非常に低いクオリティの仕事が完成してしまうという悪循環に陥ります。
軌道修正しましょうと申し上げてどうにかなるケースは少数です。軌道修正できなくてどにもならないのではなくて、マネジメントをする側がどう軌道修正をしたらよいのか分からないので、今度は修正するためのリソースも割り出さずに「やり方を変えろ」と言い出すことがとても多いのです。
意気軒高なリーダーほど、マネジメントをするにあたってイケてそうな人の首根っこを摑まえてチームに放り込もうとします。もちろん、リソースが増えればそれだけプロジェクトは推進されます。しかしながら、中堅の人たちが増えることで意味があるのは方針を策定したり、できた物事を説明したりという機能に過ぎません。
圧倒的に手足が足りない、戦力になる人がいないのに、指揮官だけ増えた現場はどうなるのか。
どっちにしろ、徹夜して仕上げるんですよね。相談しに行くと「できるまで頑張れ」と言われる。どこの現場でも、必ず同じことを言われるのは、こういう工数もリソースもはっきりしないところで仕事をやろうとするから、みんな何をしたらいいのか分からずに大混乱をしている現場が順調に仕事を遅らせて「できてませんでした」と報告する、の繰り返しになるわけですよ。
「現場の反乱」が起きるころには物事が灰燼に帰していることも多いのですが、本格的にうまくいかないぞとなって、対外的に大見得を切ったリーダーがいい始めるのは「何か特効薬はないのか」「奇策はないか」という、一足飛びに上手くいく方法の模索です。
無いって言ってんだろ。
どうもこの辺から、我が国はやり直さないと駄目なんじゃないかと思います。ローマは一日にして成らずという大前提をしっかりと見据える処から。
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」
Vol.Vol.329 一発逆転勝利が前提の我が国のやり方を憂えつつ、日米首脳会談は大丈夫なのかと気を揉んだり、何かと話題のClubhouseについて言及したりする回
2021年4月1日発行号 目次
【0. 序文】「銀の弾丸」も「必勝の奇策」も世の中にはない
【1. インシデント1】我が国のエネルギー政策とEV化の進む自動車産業の行く末を読む
【2. インシデント2】ClubhouseはかつてSecond Lifeが来た道を辿るのでしょうか
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A
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