※高城未来研究所【Future Report】Vol.337(2017年12月1日発行)より
今週は、京都にいます。
年間通じた京都の観光ピークは、紅葉目当てに訪れる人々が多い今週と、続いて桜のシーズンの4月、そして7月の祇園祭とバランスよく分かれているため、多くのゲストを呼び込むことに成功しています。
まるでディズニーランドのように年々過剰になる、神社仏閣の紅葉ライトアップの良し悪しは趣味の分かれるところでしょうが、数字を見ると、世界有数の観光都市に成長した京都を訪れる人は、3年連続で年間5500万人を突破。
宿泊客は1500万人に登り、外国人宿泊数も320万人と過去最高を記録していますが、実は、この数字には民泊施設での宿泊客数は含まれていません。
増大する民泊により、年間で最大の宿泊客を獲得できる今週紅葉時の旅館の稼働率は、著しく落ちているのが現状です。
町家の入り口を見ればわかりますが、古い建物に不釣り合いな新型ナンバー式のオートロック装置が取り付けてあれば、まず間違いなく、不特定多数が出入りする「闇宿泊施設」で、近隣住民とトラブルも続出しています。
今週、京都商工会議所は、京都市に悪質な施設への監督・指導を強化するよう正式に求めました。
また、来年6月に施行される「住宅宿泊事業法」(通称:民泊新法)前に、京都市は独自の条例案として、宿泊者の本人確認を行うなどの規制を実施する予定で、これにより、事業者に宿泊者名簿の備え付けを義務づけますが、市はもう一歩踏み込んで、前もって地元住民に民泊が行われる日時や緊急連絡先などを開示するよう事業者に求める意向を示しています。
しかし、このような施策が功を奏するでしょうか。
タクシーを見てみましょう。
現在、京都の「闇観光」でもっとも稼いでいると言われるインバウンド専用の「闇タクシー」(いわゆる白タク)は、オンライン上で決済を行うか、母国ですでに支払いを終えており、日本国内で現金の取引がないため、実態を掴めないのが現状です。
年間で最も稼げる紅葉シーズンの今週、京都のタクシー利用客は激減しています。
その理由は明らかで、「闇タクシー」が増大しているからに他なりません。
京都は、地元タクシー業者が強く、Uberなどのシェアライドが一切ありません。
そこで、海外からの観光客専用の「闇タクシー」が、条例や法律とは関係なく急増しているのです。
日本と違い、京都に来る観光客の大半である東アジア諸国は、急速に現金使用率が少なくなっており、お金の電子化が進んでいます。
かつて、「京都に遊びに行くのに、財布はいらない」と言われ、馴染みのお茶屋が宿泊代金から移動費、食事代にお小遣いまで、すべてを立て替えていたのが、京都の流儀でした。
そのサービスが、諸国の電子決済の普及とともに「サービス移転」しているかのように見受けられます。
もうじきすれば、海外からのゲストこそ、「京都に遊びに行くのに、財布はいらない」と考えるようになってしまうのかもしれません。
政府は、東京オリンピックが開催される2020年に4000万人の訪日客誘致をめざしていますが、法律や条例の整備が遅れているだけでなく、いまの日本が世界の事情に合わないことも多いため、その差を埋めるように「あたらしい闇」が勃興し、観光地はますます混乱を極めることが予測されます。
2020年に観光パニックに陥るのは、1000万人都市東京ではなく、140万人都市京都なのです。
世界有数の観光都市・京都で、いま起きていることは、今後、日本全国で起きるでしょう。
時代は、「反観光」に大きく舵を切るかもしれません。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.337 2017年12月1日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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