やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

アジアの安全保障で、いま以上に日本の立場を明確にし、コミットし、宣伝しなければならなくなりました


 産経新聞に改めて香港情勢の記事を掲載したのですが、お陰様でアジア系の安全保障コミュニティでも取り上げられて、私でも少しは役に立ったのかなという印象です。

【新聞に喝!】「香港の次」見据えた議論を ブロガー・投資家・山本一郎

 というのも、河野太郎外相が比較的こういう問題には強いということもあって、アジアにおける日本の立場や考え方が、米中対立の中で相対的に重要視されてきているというのがあるかもしれません。というか、海外のメディアからの問い合わせが純粋に増えてきました。また、日本はこの問題についてどういう考えを持っているのか、という基本的なところから一定の理解が海外メディアに読み解かれたうえで、より込み入った問題についての日本の対応が注目されてきたとも言えます。

 もちろん、バックグラウンドには中国失望論、中國異質論は広まっていて、ドイツですらも、中国に依存する経済体制がドイツ銀行問題を引き起こし、中長期的にはEUの安定した持続的成長にも大きなマイナスであるということまで言ってくるようになりました。まあドイツの中国評が信用できるかは別としても、いままで御用聞きに徹してきた日本の外交がそれなりにクローズアップされてきたのは、やはり中国対策において、アジアの安全保障でアメリカをバックにしつつも集団的安全保障をやる場合は日本を抜きには語れなくなってきた、というのもあると思うんですよね。

 一方で、香港問題や台湾問題については、日本にできることはそう多くありません。ようやく台湾との間で安全保障の対話ができそうだ、香港にいたっては日本が独立保障をするわけにもいかず、あくまで中国の内政問題として目先の事情において香港人の人権を守るように求めるという以上の対応はとれません。

 韓国については、度々話の出るように日韓関係の再構築は必至としても、恐らくは日米韓の同盟関係強化の方向には残念ながらいかないでしょう。しかしながら、対ロシア、対中国という目線で話を続けるにあたっては、あくまでおかしかったのは文在寅政権なのであって韓国政府ではなく韓国人の問題ではないとデカップリングしたうえでプレッシャーをかけていく必要があり、そのためにも日本の役割は必然的に増大したとも言えます。

 いわゆる日本再評価の流れは、民主主義、人権といった、普遍的な価値観において英語圏各国と共有できる仕組みを有している中で、アジアの安全保障については橋頭保とする議論がベースにあります。ここから一歩でも二歩でも前に出て日本のプレステージを確保するためにも、日本の考え方、立場、コミットする内容を明確にしたうえで、もう少し外に向かって日本は何をしようとしているのかを宣伝できるところまで行ってほしいなあと思う次第です。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.271 これからのアジアの安全保障における日本の役割を考えつつ、サイバー戦争としてのフェイクニュース、韓国情勢、新興金融サービスなどを語る回
2019年8月26日発行号 目次
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【0. 序文】韓国情勢「再評価」で、問題知識人が炙り出されるリトマス試験紙大会と化す
【1. インシデント1】 繁栄から取り残された人々と長期金利の驚くべき低下
【2. インシデント2】終わらないHUAWEI問題、もはや単なる米中対立の問題の具ではなくなる
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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