先日、声優の鶴ひろみさんが亡くなられました。ドラゴンボールのブルマやアンパンマンのドキンちゃんをライフワークとし、気の強い女性を演じさせたらピカイチの声優と言われていました。ショックを受けられた方も多いと思います。
漫画やアニメ、ゲームには神話や昔話、古代芸能の心性や構造は生きているわけですが、ドラゴンボールはまさにその典型とも言える物語であり、ブルマはその核を顕したキャラクターであったと私は考えています。
つまり、ドラゴンボールとは、「再生の水の秘密を知る少女=ブルマ」の物語なのです。これは古代エジプトの死者の書の構造にして、折口信夫が水の女、死者の書の中で解き明かそうとした最も根源的な原初の物語、アーキタイプ的な物語です。
ドラゴンボールの物語はドラゴンレーダーを発明した天才少女ブルマがドラゴンボール探しの旅に出、(表向きの主人公である)孫悟空と出会うところから始まります。
ドラゴンボールから発生する神龍は、象徴論的には水の象徴です。すなわち水、月、蛇、龍、再生……などが象徴的に、アナロジー的に結ばれてゆくのです。ドラゴンボールの場合も、神龍の役割はさまざまではありますが、基本的には再生を司ってきています。
ブルマは常に、この再生の水の秘密を知る少女(すなわちドラゴンボールを探せるドラゴンレーダーの発明家、作り手)として、常に物語の中心にいます。
ドラゴンボールにはおそらくはジブリやディズニー、トキワ荘と同等かそれ以上に神話や昔話しにある物語のアーキタイプを発見してゆくことができます。すぐに思い付くだけでも、
カリン塔→アクシスムンディ
精神と時の部屋→洞窟籠り
元気玉→マナイズム、タマフリ
スーパーサイヤ人とその段階すなわち2、3、4、ゴッド、ブルー等→ゴンフー、ASCの階梯
サイヤ人と地球人のハーフ→エキゾガミ
武天老師→一角仙人やタントリズム的な思考
修行→そもそもこれ自体が籠りや瞑想の特性を持つ
超神水→通過芸能的
魔人ブウの復活→卵生神話
悟空の地球来訪→スデル
そもそも悟空という存在そのものが→トリックスター
ドラゴンボールの下敷きとなった西遊記自体が、ラーマーヤナに源があり、神仙思想が宿っています。また、ドラゴンボールの連載当時はゴンフー(功夫)映画ブームであり、鳥山明はそれを積極的に取り入れていったものと思われます。元々アメコミをルーツに持つ鳥山明ですが、Dr.スランプの初期の頃に現在のスタイルを確立したと言われています。
またジェンダー論やギャルカルチャーの面から見た時にもブルマというキャラクターは画期的であったと言えます。そうした原初の物語りと未来的な物語が交錯したものに魂をアテられた鶴ひろみさんへの鎮魂の想いを込めて、霜月の「野生の声音」に臨みたいと思っています。
人は死の後でも節目節目でタマフリが行われてゆきます。そして最終的には~柳田的に言うならば~祖霊一般となり丘の上から我々を見守ってくれるわけです……。
新規受付中!
武田梵声の私塾「野生の声音」
武田梵声の私塾「野生の声音」は、フースラーの高弟クレッチマーの流派でフースラーメソードを学んだ直系の孫弟子であり、これまで3万人以上に芸能指導、発声指導を行った第一人者である武田梵声氏が、満を持して開講する私塾です。
会員は毎月1回(原則土曜日開催)定例ゼミにご参加いただけます。また、定例ゼミの模様を収録したDVD+αは、翌月、ご自宅に送付いたしますので、ご都合によりゼミに参加できなかった方も、ゼミの内容をご覧いただけます。
定例会の予定
11月定例会 暦と歌唱芸能(1)タマフリ・神楽・王権
11月25日(土)14:30 - 16:30 @台東区鶯谷近辺
12月定例会 暦と歌唱芸能(2)芸能恋愛学試論
12月16日(土)14:30 - 16:30 @台東区鶯谷近辺
2018年
1月定例会 アンザッツメソードの全て
1月20日(土)14:30 - 16:30 @台東区鶯谷近辺
2月定例会 アンザッツとアージ(原初の筋肉と歌う衝動
2月24日(土)14:30 - 16:30 @台東区鶯谷近辺
3月定例会 JPOP3万年の歴史とドライヴ~3万年JPOPの根源に流れていたモノについて
3月24日(土)14:30 - 16:30 @台東区鶯谷近辺
詳細・お申し込みはこちらから!
月1回の少人数講座&DVDを自宅にお届け!
武田梵声の私塾「野生の声音」
https://yakan-hiko.com/meeting/bonjo/top.html
武田梵声著『フースラーメソード入門〈DVD付〉』
フースラーメソードとは、「アンザッツ」と呼ばれる7つの声を真似ることで、幅広い音域、豊かな声量、ビブラート、自在な滑舌といった、
プロの歌手や声優・俳優のような多彩な声を、誰でも手に入れられるボイストレーニングのバイブル。
本書は、喉の筋肉のしくみや、発声のメカニズムを解き明かしつつ、最高の声、理想の声を出すための科学的トレーニングであるフースラーメソードのエッセンスを凝縮した1冊。
その他の記事
アカデミー賞騒ぎを振り返って〜往年の名優を巻き込んだ「手違い」(ロバート・ハリス) | |
高解像度と景気の関係(高城剛) | |
責任を取ることなど誰にもできない(内田樹) | |
リモートワーク時代のエンタメを考える(本田雅一) | |
“日本流”EV時代を考える(本田雅一) | |
喜怒哀楽を取り戻す意味(岩崎夏海) | |
緊張して実力を発揮できない人は瞬間的に意識を飛ばそう(名越康文) | |
大揉め都議選と「腐れ」小池百合子の明るい未来(やまもといちろう) | |
深まる米中対立の大波を迎える我が国の正念場(やまもといちろう) | |
俺たちの立憲民主党、政権奪取狙って向かう「中道化」への険しい道のり(やまもといちろう) | |
イベントの「行列待ち」に解決方法はあるのか(西田宗千佳) | |
リピーターが愛してやまない世界屈指の炭酸泉(高城剛) | |
スープストックトーキョーの騒ぎと嫌われ美人女子の一生(やまもといちろう) | |
メガブランドの盛衰からトレンドの流れを考える(高城剛) | |
「日本の電子書籍は遅れている」は本当か(西田宗千佳) |