※高城未来研究所【Future Report】Vol.599(12月9日)より
今週は、ホーチミンにいます。
およそ3年ぶりに訪れたベトナムは、様相が大きく異なっていました。
コロナ政策の失敗と事実上のバブル崩壊と重なって、街にかつての活気がありません。
以前は昼夜問わず行われていた建設工事がストップし、中国同様、ベトナムも不動産市場を巡る危機に直面。
不動産会社の株価急落が雪崩を起こす形でベトナム全体の株式相場が大幅に下落しています。
なかでも不動産業界第2位のノバランドは、今週、株式が大暴落。
続いて業界首位で複合企業ビングループ傘下のビンホームズも大幅下落が止まりません。
実際にビンホームズが鳴り物入りで建てたベトナムかつ東南アジアでは最高層となるビル「ランドマーク81」周辺のタワーマンションを訪ねてみると、完売だったはずがおよそ3分の2の部屋に灯りが灯っておらず、投資目的で購入した不動産の実態が浮かび上がります。
中核施設である「ランドマーク81」は、高さ461.3mの地上81階、地下3階建てで、総床面積は20万5000平方メートルを誇り、5つ星ホテルのほか、マンション、オフィス、ショッピングモール、レストラン、バー、展望台、国内最大規模のアイスリンクなどが併設されていますが、どこも閑古鳥が鳴いています。
ビンホームズの親会社であるビングループ(Vingroup)は、ベトナム最大の私有企業コングロマリットで、事業は不動産、ホテル・リゾート開発、遊園地事業、小売業、病院事業、教育事業など多岐に渡る事業を展開しており、2018年9月末時点でビングループ傘下の子会社数は58社に上る、同国を代表する企業です。
近年、テスラとそっくりの電気自動車「ビンファスト=VinFast」の開発および販売を手掛けており、同じように電気自動車の開発販売を目論んでいた中国不動産開発大手、中国恒大集団とも酷似します。
こうした景気後退の要因は、日本のバブル崩壊を彷彿させるベトナム中央銀行の引き締めにありました。
通貨ドン安阻止に向けて中央銀行のベトナム国家銀行が9月と10月に1%ずつ、合計2%分の急な利上げに踏み切り、総量規制同然の措置も行われました。
政府はローンの抑制策にも踏み切っており、これらの施策と金利高による販売難で不動産各社は頭打ちを食らったうえ、社債の発行難のため用地仕入れの資金調達ができなくなるトリプルパンチにより、不動産会社が相次ぎ青息吐息となっているのが現在です。
さらに、米国FRBなど主要国中銀による高金利政策が新興国からの資金流出を招いており、現在、勢いがあったベトナムからの資金流出が絶えません。
通貨ドン相場は最安値を更新し、商品高によるインフレ懸念も高まり、中銀は利上げ実施を余儀なくされ、このままだとバブル崩壊も否めません。
街の中心地を歩けば、空き店舗が目立ちます。
東南アジアでもっとも伸びが期待されていたベトナム。
この姿は、明日の世界絵図なのかもしれません。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.599 12月9日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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