ゆっくり走りのポイント
編集 今回の本では「ゆっくり走り」を徹底的に解説していますね。
中村 やっぱり多くの人が「蹴り出しちゃう」んですよ。凄くゆっくりで歩幅も狭くしているんだけど蹴ってしまう人が多い。
編集 それは何故でしょう?
中村 脚から進んでしまうからです。本当は上体から進んで脚がついてくるのが理想なんですけど、それが出来ずに脚で上体を動かそうとするから蹴ってしまうんですね。ゆっくり走りは守らなければいけないポイントが幾つかあるのですが、最初はなかなか難しいのでしょう。
編集 今回、モデルを務めて頂いた入江先生は、バスケットボールの練習を開始する前に必ずやられているそうですね。
中村 (ゆっくり走りを)するのとしないのでは全然違うと言いますね。
編集 なかなか上半身の重みを股関節から外すというのが難しいみたいですね。
中村 やっぱり支えがないと恐いんですよ。そこで土台・趾が重要になるんですけど、どうしてもすぐ胴体・カラダで考えてしまうんですね。よく「カラダの使い方」と言いますけど、使える状態や土台がなければ何をしても意味がないわけです。だからカラダが使える状態を作るリハビリが趾エクササイズです。
もちろん中にはいきなり裸足で歩いているうちに趾が効いてくる人もいるのかもしれませんが、なかなか難しいでしょう。やっぱり接地の衝撃を和らげてくれる趾を回復させるのが先でしょう。慣れている人は愉しそうにやっていますね。それにカラダ全体が弛むのでアップには最適だと思います。
編集 実際にやってみると骨盤の傾斜でスピードが変わるのが凄く面白かったです。
中村 それが上体が前に出ている「前傾」ということですよ。よく背中から前傾している人は居るのですが、体幹部というのは骨盤からのことですから、「前傾」というのは股関節から前に傾かせることをいうはずなんです。結構、「自分は前傾している」と思っている方でも骨盤を後傾させたまま背中から前傾している人も少なくないですよ。
編集 最初はそれほど考えずにやっていたのですが、20分位をすぎた頃から、骨盤の傾斜で脚が出るスピードが変わるのに気がついて、とても面白かったです。
中村 それは良かったです(笑)
編集 普段生活しているなかで出来る一番簡単な趾エクササイズはどんなことでしょう。
中村 一番簡単なのは歩く時に二つのことを意識するだけで大丈夫です。
編集 それは?
中村 これは本の中でも文章では説明しているのですが、「小指の頭」が地面についているのを意識しながらカンペル平面(鼻の下と耳の穴を結んだ線)を水平にして歩くことです。実際に試して見て頂くと分かるのですが、猫背で骨盤を後傾させている人でも、この二つを意識するだけで自然に骨盤が前傾した前重心の歩き方になるはずです。
編集 「小指の頭、小指の頭」と意識しがら歩くわけですね。
中村 そうです。最初のうちはなかなか小指の頭に意識がいかないと思いますので、そこは本書を読んで頂けると嬉しいです(笑)。でも本当に趾エクササイズで足の指に血が巡る、あの温かくなる感じを多くの人に味わって欲しいですね。
編集 エクササイズの順番として趾が先ですか?
中村 先です。中国武術でも「足三年」という流派があるそうですが、それは正しいと思います。
編集 この本をどんな人に読んで欲しいですか?
中村 それはもう土台の話をしているので二本足で立つ皆さんです。でももし敢えて言うなら学生さん……と、いうか学生さんを教えておられる指導者の方ですね。やっぱり足をテーピングやシューズで固めて、趾を遊ばせたまま練習をして壊れている生徒・選手が多いんですよ。あとはジョギングなどをされている方ですね。治療士として見ていても走られている方で足を壊しているケースは多いです。やっぱり母趾球加重が原因でしょう。だから走ることが精神的な健康には良くても、肉体面では良くないという人も多いと思います。
編集 そんなに悪い人が多いですか?
中村 多いですね。木村(東吉氏 本書の特別編の鼎談に参加されている)さんみたいな方は珍しいでしょう。やっぱり体の中の「ローギア」を知っておくのが重要ですよ。
編集 一番力の出るトルクフルな状態を体に覚えさせるわけですね。
中村 そうです。そのローギアで坂道を登ったり、物を持ったりすれば全然動きが変わって来ますよ。
編集 是非それを一人でも多くの方に感じて欲しいですね。本日はありがとうございました。
中村・奥様 ありがとうございました。
著者・中村考宏(Nakamura Takahiro)
1968年9月25日生まれ。愛知県出身。愛知学院大学卒業後、米田中部柔整入学。卒業後柔道整復師の仕事をしながら中和医療専門学校へ通い鍼灸師、按摩マッサージ指圧師の資格も得る。現在、えにし治療院院長、スポーツ・股割り研究所所長。MATAWARI JAPAN代表。柔道四段。
2002年に運動の本質が重心の移動であることに気づき、治療から動作改善の指導へと大きく方向転換をする。その間、大腰筋と動作の関係を研究。2007年に骨盤のポジション(骨盤後傾→骨盤立位→骨盤前傾)と股関節運動の関係(股関節ロックと股関節フリー)に着目し、「骨盤おこしトレーニング」として名古屋、東京、大阪などで講習会を開催。朝日カルチャーセンター、栄中日文化センターなどの講師も務める。2009年に関節運動全体を視野に入れ、名称を「構造動作(アナトミカル・アクティビティ)トレーニング」とする。2010年には治療士として「えにし式軽擦法」と動作改善指導を組み合わせた治療を開始。2012年、全国各地の講習会を積極的に開催、株式会社MATAWARI JAPAN設立。
著作には『人は「骨盤」から健康になる』(マキノ出版)、『DVDでレッスン!骨盤おこしエクササイズ』(カンゼン)、『「骨盤おこし」で身体が目覚める 1日3分、驚異の「割り」メソッド』(春秋社)、『構造動作トレーニング "股割り"を極める DVD』(BABジャパン)、監修・『女性のための骨盤おこし』(春秋社)著中村よし子など多数
著者HP:http://www.eni4.net/
ブログ :http://ameblo.jp/eni4/
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