※名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」2014年11月17日 Vol.088より
カモシカや鯵は集団になると賢くなるようですが、人間は(たとえ正しいことであっても)集団になった瞬間、馬鹿になるように感じます。言い換えれば、集団で物事に取り組んで何かを成し遂げようと思えば、一人で何かをやるときよりも一段階上の知性を働かせ続けることが必要なのだということです。
大げさにいえば、これができなかったことが、日本現代史の悲哀を今も繰り返しつつある、その一因であるように思うのです。
では、一段階上の知性を働かせる、とは具体的にどういうことを指すのか。
多くの人は、問題が起きるとまず考え、分析しようとします。これは断言しておきたいのですが、順番が違います。まず心を、気持ちを落ち着けてください。考えるのはその後で十分……というよりも、心が落ち着いていなければ、人はまともに考えることすらできないのです。ましてや集団が正しい判断を導きだすことなど、とてもおぼつかないでしょう。
社会には正当な理屈が山のように用意されています。しかしそうした正当な理屈は、人間の内面的な成長の邪魔をします。その人が自分で目の前の問題を解決しようとする力を削ぐのです。
さらに問題なのは、現代的正義のほとんどが「貴方が怒るのは正当だ」という許可証を与えがちである、ということです。この構造には絶えず気付いておく必要があります。
集団になる前に、まず一人になりましょう。
考える前に、まず心を落ち着けましょう。
もし多くの人がそれを心がけるのであれば、人間の集合知が、何かの希望につながるということも起こるかもしれない。そう思うのです。
名越康文メールマガジン「生きるための対話(dialogue)」
目次
00【イントロダクション】人間の場合、集合知は馬鹿になるのかもしれない
01【コラム】大切なことをつい先送りしてしまう。その原因は「弱いトラウマ」!?
02精神科医の備忘録 Key of Life
・「自分の考え」の外側に出よう
03【特別連載】どうせ死ぬのになぜ生きるのか(後編)
04カウンセリングルーム<今回はお休みです>
05読むこころカフェ(26)
・機縁をつかむ内蔵感覚の力
06講座情報・メディア出演予定
【引用・転載規定】
※購読開始から1か月無料! まずはお試しから。
※kindle、epub版同時配信対応!
その他の記事
「甘い誘惑」が多い街、東京(高城剛) | |
物議を醸す電波法改正、実際のところ(小寺信良) | |
ネットリテラシー教育最前線(小寺信良) | |
川端裕人×荒木健太郎<雲を見る、雲を読む〜究極の「雲愛」対談>第2回(川端裕人) | |
子供会にLINEを導入してみた(小寺信良) | |
「2分の1成人式」の是非を考える(小寺信良) | |
いつか著作権を廃止にしないといけない日がくる(紀里谷和明) | |
終わらない「大学生の奨学金論争」と疲弊する学びの現場(やまもといちろう) | |
“リア充”に気後れを感じたら(名越康文) | |
改めて考える「ヘッドホンの音漏れ」問題(西田宗千佳) | |
やっと日本にきた「Spotify」。その特徴はなにか(西田宗千佳) | |
統制される仮想通貨界隈、イギリスがすべての暗号資産を国家管理に(やまもといちろう) | |
「節分」と「立春」(高城剛) | |
アクティブ・ノイズキャンセル・ヘッドフォンと聴力の関係(高城剛) | |
英国のシリコンバレー、エジンバラでスコットランド独立の可能性を考える(高城剛) |