高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

コロラドで感じた大都市から文化が生まれる時代の終焉

高城未来研究所【Future Report】Vol.306(2017年4月28日発行)より


今週は、ボルダーにいます。

米国コロラド州にあるボルダーは、州都デンバーより車で一時間ほどの場所にある、ロッキー山脈の麓の小さな町です。
人口およそ10万人。
ただ、この街が他の小さな地方都市と違うのは、全米屈指のオルタナティブな先進都市として知られ、高学歴高額所得者が多く集まり、結果的に税収が高い街として知られています。
本メールマガジンでも何度かお話ししておりますように、今後、日本の地方都市も良い地域と悪い地域に二極化されていくのは間違いありません。
その、ひとつの良いモデルが、ここボルダーです。
最近、遺伝子組み換え作物と蜜蜂に有害な殺虫剤の使用を全面的に禁止した街としても知られ、先進都市の名を大きくさらに馳せています。

かつて、全米でもっとも先進的な州と言えば、カリフォルニアでした。
ハリウッドやシリコンバレーを擁し、海辺に面したライフスタイルは、世界中の人々が憧れる地だったのですが、多くの移民が流れ着き、すでにラティーノとアジア系だけで州人口の過半数を締め、「夢のカリフォリニア文化」を作った白人たちは、いまや3割強しかいないマイノリティとなってしまい、様相も変わってしまいました。

このカリフォルニアにとって代わり、いま全米でもっとも先進的な州と言えば、ボルダーがあるコロラド州です。
人口では全米22番目に過ぎませんが、一人当たりの収入は合衆国内ではトップ10に入り、なにより、白人比率が8割を超え、まるで押し出されたように他州から流れ着く白人も多く、いわば彼らの新天地となって様々な試みが行われています。
その典型例が、娯楽大麻解禁なのです。

2014年1月、全米でどこよりも早く州民投票により娯楽大麻を解禁し、その後、他州がコロラドを追いかけ、昨年11月米国大統領選が行われたスーパーチューズデー同日、カリフォルニアも州民投票によって娯楽大麻が解禁され、やっとコロラドに追いつくことができました。
2018年1月からカリフォルニアでも娯楽大麻が解禁されますが、コロラドに遅れる事4年の差は実に大きい。
現在、新産業として大麻関連ビジネスは大きく注目されており、数年で一兆円規模になると試算されるほど大成長する見込みです。
このような伸び率がある新産業は、インターネット普及時をはるかに凌駕すると話されていて、先行者メリットは大きいと考えられています。

全米で最大の大麻畑を持つコロラドの企業「カルディドス」は、2013年まで遺伝子組み換えとうもろこしを農作していましが、2014年にビニールハウスで実験的に取り組み、2015年に300エーカー、2016年に600エーカー、2017年には1400エーカーと、倍々で耕作面積を拡大してきました。
勢いは、当面止まりそうにありません。
いまやコロラドは、世界の大麻産業の巨大集積地になりつつあるのです。

20世紀後半の文化発信地が、カリフォルニアのような「海」だとしたら、21世紀前半の文化発信地は、コロラドのような「山」なのかもしれません。
同時に、大都市から文化が生まれる時代の終焉を、今週はロッキー山脈の麓で感じます。

 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.306 2017年4月28日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 未来放談
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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