高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

5年すればいまの世界はまったく違う世界に変わっている

高城未来研究所【Future Report】Vol.672(5月3日)より

今週は、東京にいます。

毎年春になって太陽光が降り注ぎ始めた頃、今年の撮影で使うカメラテストを行なっています。

ラージセンサーと呼ばれるハッセルブラッドなどの中判カメラから、ここ数年、動画機として愛用しているソニーのα1、そしてライカQ3やリコーのGR lllなど、センサーの大きさに限らず、あらゆるカメラをテストして今年使う機材をを選びます。
まるで古い友人と再会するかのように、カメラたちと対話しながら今年の旅の相棒を選ぶ、そんな特別な時間なのですが、今回は例年とは違う新しい仲間がこのカメラテストに参加することになりました。

それが、初めて加わったスマートフォンです。

朝から日が沈むまで、1日かけてあらゆるシーンを撮影するのですが、その結果は驚くべきものでした。
静止画のクオリティーでは、圧倒的にラージセンサーと呼ばれるハッセルブラッドとライカレンズ(アポ50mm)の組み合わせが優れており、動画撮影ではSONYのα1と純正のGマスターレンズの組み合わせが卓越していました。
この結果は、この二年ほど変わることなく、揺るぎないものとなっています。
堅牢性では、ライカQシリーズに及ぶものはありません。

しかし、コンパクト機部門では、これまで王者の座にあったリコーGR lllやSONYのRXシリーズを押さえて、なんと「Xiaomi 14 Ultra」が最も美しい絵を描き出したのです。
これは、まさに驚きの結果でした!

ラージセンサーによる静止画の優位性やオートフォーカスを含めた動画性能は、それなりに事前からハッセルブラッドやソニーが有利だろうと予測していましたが、近年のスマートフォン、特に中国製のスマートフォンには目を見張るべき機能が搭載されています。
センサーもiPhone等より大きな1インチセンサーを積んでいることから明らかに画質が良くなって、ついにスマートフォンの小さなレンズに物理的な可変絞りが搭載されるようになりました。
これもSONYが新しく開発した1型センサー「LYT-900」ならではです。

長年バックアップ用のコンパクトカメラとして、ソニーのRX100シリーズやリコーのGRシリーズを使ってきましたが、一年半ほど前に画素が増えてRAWも撮れるようになったことから、広角に関してはiPhoneで充分ではないかと考えるようになり、実際、自著でも多用しています。
ところが広角のみならず、1インチセンサーを積んだことによってスマートフォンでもセンサーの真ん中部分を切り出した35ミリや50ミリなどの写真でもかなりの絵を描くようになりました。

また近年、「ポートレートモード」と言われる人工的にボケをつける機能が各スマートフォンに搭載されてきましたが、実際それが使えるかと言うとまだまだ怪しいところがありました。
しかし、「Xiaomi 14 Ultra」ではかなり自然にボケを人工的に作れるように進化しています。

これはLiDARセンサーの大きな進歩と画像エンジンのマッチングがうまくいっている証拠であり、ここ数年お話ししておりますように、あと4〜5年もすれば静止画も動画も一部のプロはスマートフォンをメインにするのではないかと予測しています

ただし、「Xiaomi 14 Ultra」に搭載されている「プロモード」設定で、露出やシャッタースピードなどを手動で切り替えなければ良い絵になりません。
この辺は一般的なコンデジと同じで、単にオートで撮るのも構わないのですが、もう少し追い込んで自分でマニュアル設定した方が良い絵が取れるのは明らかです。

また、「Xiaomi 14 Ultra」はライカが監修しているだけあって、カラーレンダリングが極めて秀逸ですが、またまだ処理速度が追いつかずに小さい画素じゃなければ記録できません。
ところが、この数年でAIアプリケーションが急速に進化したことによって、多少画素が小さくてもAIが拡大し、最終的なアガリが見分けがつかない綺麗な仕上がりになります。
どこかで、いままでのスマートフォンで一番いい写真を描いたZeissのアポレンズを搭載した「vivo x100」と「Xiaomi 14 Ultra」を対決させたいと思っています。

正直、スマートフォンの動画性能はまだまだですが、静止画に関してはかなり「カメラ」を凌駕するようになってきたと感じています。
今回、テスト撮影に立ち会ったカメラマンも驚愕すると同時に、僕も含め、各々自分の身の振り方を考える1日になりました。

単にスマートフォンの進化だけでなく中国の開発能力に驚嘆し、韓国の先行きさえ考えてしまった今年のテスト撮影。

カメラに限らず、価値観含め5年すればいまの世界はまったく違う世界に変わるんだろうな、と強く実感する今週です。

Sweetest day of May!
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.672 5月3日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 大ビジュアルコミュニケーション時代を生き抜く方法
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

その他の記事

パニック的なコロナウイルス騒動が今後社会にもたらすもの(やまもといちろう)
「なぜかモテる人たち」のたったひとつの共通点(岩崎夏海)
ZOZOSUITのビジネススーツ仕上がりが予想以上に残念だった理由を考える(本田雅一)
日経ほかが書き始めた「デジタル庁アカン」話と身近に起きたこと(やまもといちろう)
「電気グルーヴ配信停止」に見るデジタル配信と消費者保護(西田宗千佳)
本気のアマチュアカメラマンが選ぶ一眼レフの不思議(高城剛)
全てを飲み込む神仏習合こそが日本の本質(高城剛)
ネット時代に習近平が呼びかける「群衆闘争」(ふるまいよしこ)
自分の「生き方」を職業から独立させるということ(紀里谷和明)
東京15区裏問題、つばさの党選挙妨害事件をどう判断するか(やまもといちろう)
格闘ゲームなどについて最近思うこと(やまもといちろう)
コタツ記事問題(やまもといちろう)
出口が見えない我が国のコロナ対策の現状(やまもといちろう)
迷う40代には『仮面ライダー』が効く(名越康文)
なぜ『フィナンシャル・タイムズ』は売られたのか(ふるまいよしこ)
高城剛のメールマガジン
「高城未来研究所「Future Report」」

[料金(税込)] 880円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回配信(第1~4金曜日配信予定。12月,1月は3回になる可能性あり)

ページのトップへ