高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

「ふたつの暦」を持って生きることの楽しみ

高城未来研究所【Future Report】Vol.393(2018年12月28日発行)より

今週は、奈良にいます。

いままでにも何度かお話ししましたように、僕は、いくつかの古い暦を頼りに生活しており、そのひとつが太陰太陽暦です。

かつて人々は、季節を知る手がかりとして、自らが住む場所で見る星の位置や、その星の見える時期をもって、今がいつごろの季節なのかを判断していました。

その大きな判断基準が、太陽です。

夏は日が長く暑く、冬は日が短く寒い日が続くのは、気候変動はあってもいまも昔も同じで、その一年のうちのなかでも、一番日の長いのはいつか、一番日の短いのはいつかといった事を、人類は長い年月をかけて見出し、それがのちに「夏至」や「冬至」といわれるようになります。

なかでも、もっとも日が短い「冬至」は、太陽が生まれかわる時、つまり新年のはじまりだと考えられていました。
この「冬至」が、古い暦の基準日になります。
中国大陸でも有史以来、朔望月による「太陰暦」が使われ、メトン周期の原理が知られるより前には、暦にいつ閏月を入れるかについても、「冬至」を基準にして定めたと記録にあります。

さて、僕は長年にわたってこのメールマガジンで、「ふたつの地域」や「ふたつの仕事」を持つことを提唱してきたのと同じように、「ふたつの暦」を持つことで、まるで、失ってしまった「なにか」を少し取り戻せるように考えています。

誰もが知っている暦は、いつの時代も為政者によって書き換えられてきました。
ローマ時代には、キリスト教を普及させるために、それまで主流だった太陽神やミトラ教と習合させ、「冬至祭」を、キリストが生まれた日に書き換え、「クリスマス」が生まれました。
それに、ギリシャの聖人「サンタクロース」の物語が付加され、今日の資本家中心主義下においては、すっかり「消費の日」になったことは、ご存知の通りです。

また、明治政府は、明治5年旧暦の12月3日を、新暦(グレゴリオ暦)の明治6年1月1日として、突然改暦しました。
この改暦は、布告がその一カ月前にも満たない旧暦11月9日という、非常に慌しいものでした。

すでに翌年のカレンダーの販売がはじまっていた時期に、いったい、なぜ明治政府は改暦を急いだのでしょうか。

これほど急な新暦導入は、当時参議であった大隈重信の回顧録によれば、政府の財政状況が逼迫していたことによる、つまり、旧暦のままでは明治6年は閏月があるため13か月となると、月給制に移行したばかりの官吏への報酬を1年間に13回支給しなければならないが、新暦を導入してしまえば閏月はなくなり12か月分の支給ですむ。
また、明治5年も12月が2日しかないので、11か月分しか給料を支給せずに済ますことができるのが目的だった、とのちに語っています。

このように、時の為政者の都合によって、暦をはじめとする「時間」は、書き換えられてきた歴史的事実があります。
結果、暦は不自然となるのです。

だからといって、「古い暦」だけで現代社会を生きることはできませんし、また、楽しくもありません。

今週、このメールマガジンをお読みの方々のなかで、きっと誰よりも僕が街中で「消費」し、きっと誰よりも僕が自然の中で「古い暦」を楽しんだと自負します。

「ふたつの世界」を生きることは、難しいことではありません。
日常のちょっとした考えを変えるだけでも、可能なのです。

もう何十年も、冬至の日に時間があれば、奈良の三輪山に出向きます。

日本最古で本来の太陽神を祀る三輪山に昇る冬至の朝日は、大和と伊勢の国境・高見山の彼方、伊勢の方角にあることから、山を御神体とする冬至の朝日を拝する日向の地であったと解されています。
ここ三輪祭祀の原点に、「日本」という名のもとになる日神信仰があったのです。

街ゆく多くの人たちが、「メリークリスマス!」、「良いお年を!」と高らかに声を上げている中、僕の新年はこっそり明けています。

「今年」も、誰より「一歩先の未来」に生きていたいと思います!
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.393 2018年12月28日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 著書のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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