小寺信良のメールマガジン「金曜ランチボックス」対談:Small Talk

「テキストをwebで売る」のこれからの話をしよう

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宣材写真01sm小寺信良さんのメールマガジン「金曜ランチボックス」が2014年9月からリニューアル! ジャーナリスト西田宗千佳さんが加わり、業界俯瞰型メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」として生まれ変わります。

家電、ガジェット、通信、放送、映像、オーディオ、IT教育など、2人が興味関心のおもむくまま縦横無尽に駆け巡り、「普通そんなこと知らないよね」という情報をお届けします。毎週金曜日12時丁度にお届け。1週ごとにメインパーソナリティを交代。

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テキストメディアは、どこへ向かうのか。

 

今回からお送りする対談は、Engadget日本版編集長の鷹木創氏にお相手いただくことにした。

テキストをネットで売るという方法論は、迷走状態にある。メルマガのエコシステムは、もはや誰でも稼げる時代が過ぎた。では振り返って、Webニュースサイトはどうなのか。現在キュレーションアプリが花盛りだが、そこにソースを供給する1次メディアが、岐路に立っているのではないだろうか。

かつて音楽業界が不調に陥ったときに、これからはアーティスト自身がWebで音楽を手売りする時代の到来だと言われたことがある。RadioHead、平沢進など上手くやれるアーティストはいるものの、そこまでセルフマネージメントできるアーティストは少数で、やはり今まで通りメジャーレーベルのエコシステムに乗っかったままで、全員が沈没しつつある。

テキスト業界も、同じ構造に陥るのではないか。そのとき、ニュースメディアはどう舵取りしていくのか。

そんなお話しを伺うのに、鷹木氏は適任だろうと思う。インプレス「ケータイWatch」で記者となり、「Internet Watch」へ移籍。その後アイティメディアへ転職し、現在の「誠 Biz.ID」の原型となる「Biz.ID」を立ち上げに携わり、2009年より編集長に。2013年にAOLへ移籍し、Engadgetの日本版編集長へ着任した。まさにWebニュースメディアのメインストリームを歩んできた人物である。
※この記事は小寺信良のメールマガジン「金曜ランチボックス」2014年7月25日 Vol.129「対談:Small Talk ニュースメディアはどこへ行く?《第1回》」が初出です。

 

ニュースメディアはどこへ行く?《第1回》 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

メディアによる違い

 

小寺:最近ネットのニュースサイトもそうですけど、テキストをWebで売ることに関して、だんだん厳しくなってきてるのかなという気がしてるんですよね。

僕的に気になってるのは、インプレスの話で。分社化してたのをまた戻したりとか。会社組織を変えないとうまくいかなくなってきてる現状というのがあるのかなと。またメルマガのMAGonも8月で終わりだとか。

まあメルマガはひとつの旬は過ぎたのかな、という見方もあるとは思うんですが、元々インプレスは昔から電子出版には非常に積極的で、2000年過ぎぐらいからすでにトライアルを始めていた。そこが、一時的とは言えブーム化したメルマガ事業を軌道に乗せられなかったというのは、大きいと思ってるんですよね。

経営統合のお知らせ(インプレス)

MAGon 定期購読終了のお知らせ

ま、外側、原稿を出稿する側からすると、これ大丈夫なのかな? という不安感は当然あるわけですよ。そんな中で、ネットのニュースサイトみたいなものって、これからどうなっていくのかな、みたいなお話を鷹木さんとディスカッションできればなと思うんです。

どっからお話を聞こうかな……もう辞めちゃった他社の話はなかなかしづらいと思うんですが、どうでしょう。

 

鷹木:そういうお題をいただいて、ぼんやりちょっと思ってたのは──やっぱりインプレスに入って良かったのって、インプレスってあんまりお金のことは考えないで、好きなことを好きなだけ書きなさい、みたいな感じなんですよね。だからそういう意味では、オタクみたいな人がいっぱいいる中で、好きなことを好きなだけ書くし、好きなことを誰にも邪魔されないんだ、みたいなのはインプレスで習った。「記者のいろは」をインプレスで学べて、それは良かったなと思ってるんですね。

ある種、クライアントの圧力みたいなものからも、守ってくれるわけですよ。お金もらってるんだから書けない! みたいなことは全然ないんですね。

逆に、ITmediaに移ってびっくりしたのって、記者ってほとんどセールスエディター的な役わりとかを負わされたりもしてるわけです。ただそのぶん、儲けてるわけです。これはビジネスモデルとしては画期的だな、と当時思って。

インプレスから入った身で言うと、もう全然なんか、こういう儲け方があったのか、みたいな。まあ考えたら当たり前なんですけど、それをベタにやれる組織で、その中でそういう動きができたのは大きかったかな、と。

僕が来た当時のEngadgetは逆に、現在シニアエディターのIttousaiが一人でやってて、孤立無援みたいな状況だったところ、親会社であるAOLサイドも実はIttousaiをどう扱っていいかわからない、みたいなところがあって。

双方にとって翻訳係が必要なのかなと思って僕が来たわけですけど、Ittousaiと話をしているうちに、「これはいかんな」と。何がいけないかというとふたつの面があって。

第一にまったくお金になってない。もうひとつは、リソースのマネジメントが全然できてない。そういう意味では、原稿の受発注もそうですし、そもそも編集記者を入れるか入れないか、みたいな話もそうで。

Engadgetは、やっぱりちょっと特殊な媒体だと思ってるんですね。なんだろ、インプレスとかITmediaって比較的、“網羅してること”に価値がある。でも、Ittousaiや僕らがやってるEngadgetって、そもそも網羅できない。ガジェットの分野ってめちゃくちゃ広い。それこそ各ジャンルごとにチャンネル立てられるぐらい本当は広いんですけど、そこまで追っかけらんないから、自然とセレクトしていくみたいなところがあって。

そこで、今風に言えばキュレーション的なことだと思うんです。そういうセレクトショップっぽいことをやっていて、僕らのセレクト感に共感してくれる人たちが、今でも読者としてコアなところにいるな、と。その部分がすごく……なんというか、新鮮だったんですね。

インプレスとかITmediaとかでも、ほんとにリリース起こしみたいな記事を普通に書くじゃないですか。埋め草的に。でも、Engadgetはなるべくそれをしないようにしよう、と。ま、昔からやってないんですけど。

で、埋め草的なものをしないと、相対的に面白い記事の数量は増えていくんで、そのぶん読者の期待値が上がっていってるような気はしてるんですね。そういう意味でいうと、僕らがポストした記事に対しての反応がすごくビビッドで、TwitterとかFacebookにシェアされたり、ツイートされる数も、インプレスとかITmediaに比べたらすごく多い。

 

小寺:元々尖ったメディアだったということはたぶんあると思うんですよね。僕はインプレスのAV Watchが始まったときからずっと一緒にやってるんですけど。

 

鷹木:臼田(勤哉:現編集長)さんのとこですよね。

 

小寺:そうです。当時は古川(敦)さんが編集長だったわけですけども、あ、最初デスクだったのかな。ま、当時、AV機器専門のニュースサイト立ち上げると言ったって、そもそも高額なAV機器の貸し出し機なんてあんまりなかったんですよね。WEBニュース自体も今のようにありませんでしたから、そもそもWEB媒体に貸してくれるのか、ということもあって。2000年ぐらいの話なんで。

 

鷹木:そうですね。

 

小寺:インプレスって会社自体、DOS/V時代にPC雑誌で躍進したわけですけど、あれって何がウケたのかっていうと、横並びベンチマークレビューなんですよ。厳密に同じ条件にしてよーいドンでデータとって。データは嘘つかないってことをやった。

でもAV機器では数が揃わないし、そもそも同じ性能を目指してないんで、横並びレビューとか無理だよね。じゃ何やろうか、ということで、1つの製品を根掘り葉掘り、とんがったレビュー記事をどんどん投下していくんだ、と。で、編集部の人間も詳しいので、ライターも記者もどんどん自分たちでとんがったレビューを入れていく、という形で最初は始めたんですよね。

そういう意味では、今でこそメーカーからもニュースリリースがたくさん出るようになって、相当の分量をビュースリリースが埋めてますけど、それを全部剥がしていけば、今でも初期のコアな部分が残る。実はあんまり、方向性的には変わってないんじゃないかなと思うんですよね。

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