※高城未来研究所【Future Report】Vol.433(2019年10月04日発行)より
今週は、バンクーバーにいます。
もうすっかり秋模様のカナダですが、街を歩くと「みっつの団体」に日々出会います。
ひとつめの団体は、ハリウッド大作映画の撮影隊。
バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州では、クリエイティブ産業に向けて他地域よりも魅力的な税制優遇制度を設けていることから、わざわざ旅費を支払って訪れても安価に制作することが可能な地として知られています。
この街で撮影された「ミッションインポッシブル」をはじめ、バンクーバーの街並みは良くも悪くも没個性的ゆえ、米国のような街並みを撮ることができ、匿名的な「どこかで見た都会」を描くのに丁度いいことが、映像制作者たちに重宝されている理由でもあります。
また、警察が協力的で、道路を封鎖するなど撮影に全面協力するのも魅力のひとつ。
それもそのはず、撮影は市の大きな収入源となっており、バンクーバー郊外で二ヶ月にわたって撮影を行った「デッドプール」は、40億円を超える経済効果があったと試算され、地域経済を潤す役目を果たしました。
地元でキャスティングされた俳優やエキストラ、そして撮影クルーは延べ2000人以上にのぼり、その賃金としておよそ20億円が支払われています。
現在、1年間に市内で撮影された作品数は、400を超えています。
どうりで、日々撮影クルーを目撃するわけです。
映画産業関連ビジネスの賃金としてバンクーバー市民に支払われた金額は、年間200億円以上。
撮影誘致と撮影許可が、街おこしとして大成功しています。
ふたつめの団体は、学生による気候デモです。
この数週間にわたり、北欧の16歳の環境活動家に共感した学生を中心とする環境デモが行われまして、参加者およそ10万人。
ニューヨークで開催された国連気候行動サミットに合わせ、バンクーバーでは温暖化について考える各種イベントを数多く開催し、「未来のための金曜日(Fridays for Future)」と名打った学校ストライキを実施。
この日、学校を休んで参加した学生たちは「学校という大切なものを休んでまでも地球を守りたい」と大人たちに訴えますが、実際は「季節の良い時期に学校を休めて、皆で騒げて楽しい!」という声が多かったのが正直なところです。
このデモは、先々週滞在してましたベルリンでも行われ、街中大渋滞。
デモ回避のための(彼らが主張する)車のアイドリングが、どれほど環境を破壊しているか冷静に計りたいところですが、人為的影響による気候変動の成否は別の機会に譲るとして、他国同様カナダメディアでも概ね美談だけが語られています。
そしてみっつめの集団は、インド人の団体です。
少し前まで、バンクーバーは「ホンクーバー」と揶揄されるほど香港人ばかりでしたが、この数年、街を歩いて目にするのはインド人の集団です。
それもそのはず、カナダ移民局の発表によれば、ダントツの移民出身国第一位はインド。
米国と真逆にカナダでは、2019年から2021年までの今後3年間で、約100万人の移民を受け入れる計画をカナダ政府は発表していますが、その大半がインド人になると思われます。
すでに、第一言語が英語以外の人々が、過半数を超えたバンクーバー。
ありきたりのハードウェアのような一見特徴のない小さな町は、静かにOSが入れ替わっているように思える今週です。
高城未来研究所「Future Report」
Vol.433 2019年10月04日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。
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