本田雅一
@rokuzouhonda

メルマガ「本田雅一の IT・ネット直球リポート」より

ソニー平井CEOの引き際。なぜソニーは復活できたのか

※この記事は本田雅一さんのメールマガジン「本田雅一の IT・ネット直球リポート」 Vol.014(2018年2月9日)からの抜粋です。




平井氏は、どん底の大赤字を出したソニー暗黒時代に社長兼CEOとなり、2期目に掲げた収益目標を達成。過去最高益が確実になった、まさに“何をやっても許される”我が世の春を迎えたところで、子会社の経営を立て直し、自ら三顧の礼で迎えた吉田氏に社長を譲ることになった。平井氏が、どのような道程でソニーを立て直したのか。過去の取材メモを掘り起こしながら、ふだんは記事化していない意外な側面について書いてみることにした。
 


ソニー・平井社長と初めて話をしたのは、ソニー・コンピュータ・エンターテイメント(SCE、現在のSIE)の米国法人社長から昇格し、SCE全体の社長となった直後のことだ。すなわち、プレイステーションの生みの親であった久夛良木健氏が一線を退く際、その後任となったのだ。この時、平井氏はソニー本社・副社長としての役職も引き受けた。

米国でコンピュータゲーム関連のイベントがあると、必ずノリノリで記者会見に登壇し、まるでDJのような立ち振る舞いで来場者を乗せ、盛り上げていく“楽しい日系米国人”のKazu Hirai氏がグローバルのSCE社長になるのか! と、当時は驚いた記憶がある。日本で開発系チームをリードしてきた人物が昇格するのでは? と予想していたからというのもあるが、日本企業なのだから日本語をしゃべる人のほうがいいのでは? という気持ちもあった。

ところが設定されたインタビュー現場に行くと、平井氏は流暢な日本語を喋り始めた。いや、そもそも日本で生まれ育ち、途中、米国に家族で住んでいた時期はあるものの、大学は国際基督教大学。ジョン・カビラ氏と同級生で、大学時代は二人してクラブイベントを学園祭でやって盛り上げたという。実はこのときまで、平井氏に“日本語でインタビュー”した人はおらず、海外でもイベント中はずっと英語でまくし立てていたため、まさか日本で生まれ育ったなどとは思いもよらなかったのだ。

これは僕だけではない。他の記者も平井氏のネイティブ言語は英語だと思っていたという。今では懐かしい思い出だが「米国市場が担当なのだから、日本の記者は全体を束ねる人か日本市場の担当が語るべき」であり、「米国に対してメッセージを発信するならば、すべて英語コミュニケーションすべき」と考えていたからだ。

平井氏がSCE米国法人の社長時代、何度かインタビューを申し込んだものの、そのたびに断られていた。自分の役割の外で余分な情報を発信することが組織にとってマイナスにしかならないとわかっていたからだろう。「日本向けのメッセージについては、本社のほうで」と断りのメールに記されていた。今、振り返ってみると平井一夫という経営者は、視野が広く、自分を取り巻く環境や人物がよく見える、極めて良い観察眼を持つ人物だったのだと思う。

 
●自信を感じるが、過剰ではない

「平井さん、日本語しゃべるんですね。驚きました」と開口一番に言うと、「よくそう言われるのだけど、もうバリバリ日本人ですよ。米国人のふりをしているつもりもない。子どもたち(息子と娘がひとりずつ)は米国の環境に馴染んで育ってきたけれど、僕は日本生まれ、日本育ちですよ」と話し始めた。


(この続きは、本田雅一メールマガジン 「本田雅一の IT・ネット直球リポート」で)

 

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2014年よりお届けしていたメルマガ「続・モバイル通信リターンズ」 を、2017年7月にリニューアル。IT、AV、カメラなどの深い知識とユーザー体験、評論家としての画、音へのこだわりをベースに、開発の現場、経営の最前線から、ハリウッド関係者など幅広いネットワークを生かして取材。市場の今と次を読み解く本田雅一による活動レポート。

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本田雅一
PCハードウェアのトレンドから企業向けネットワーク製品、アプリケーションソフトウェア、Web関連サービスなど、テクノロジ関連の取材記事・コラムを執筆するほか、デジタルカメラ関連のコラムやインタビュー、経済誌への市場分析記事などを担当している。 AV関係では次世代光ディスク関連の動向や映像圧縮技術、製品評論をインターネット、専門誌で展開。日本で発売されているテレビ、プロジェクタ、AVアンプ、レコーダなどの主要製品は、そのほとんどを試聴している。 仕事がら映像機器やソフトを解析的に見る事が多いが、本人曰く「根っからのオーディオ機器好き」。ディスプレイは映像エンターテイメントは投写型、情報系は直視型と使い分け、SACDやDVD-Audioを愛しつつも、ポピュラー系は携帯型デジタルオーディオで楽しむなど、その場に応じて幅広くAVコンテンツを楽しんでいる。

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