やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

弛緩の自民党総裁選、低迷の衆議院選挙見込み


 自民党総裁選が「9月17日告示・同29日開票」で決定し、すでに岸田文雄さん、高市早苗さんの立候補が表明されておりますが、下村博文さんが出馬を早々に発表しながら安倍晋三さんに引導を渡され菅義偉さんに「立候補するなら政調会長を降りろ」と当然の圧力がかかって出馬見送り。逆に一度は出馬見送りを表明したはずが、ここで出なければもう二度と総裁選に出られないかもしれないという話が周辺で渦巻いた結果、煽られて出馬に含みを持たせる発言を石破茂さんがして、これはこれでどうなのだという話になっております。

 どれもこれも非常に素敵な人間ドラマだなあと思いつつも、目の前の感染症対策やそれに伴う経済対策どうするよというところで総裁選の機運があまり盛り上がりません。菅義偉再選で挙党体制にしなければならないと幹事長・二階俊博さんも周辺にかなり言われたようで少し前まで流れていた小池百合子バーター説もやや鳴りを潜めた格好です。

 というのも、新潮に書かれましたが例の太陽光パネル・メガソーラープロジェクトで反社絡みと指摘されて大変な問題となっていたテクノシステムに関して、なぜか日刊ゲンダイにネタが落ちていき前打ちになっていました。

太陽光詐欺事件 菅官邸が糸を引く「小池知事潰し」の怨念

 しかしながら、ここで取り沙汰されるのは小池百合子さんの従兄弟で元公安調査庁、元秘書であった水田昌宏さん関連にすぎず、しかも周辺の話をいくら掘っても水田さんもまったく違法な取引に顔を出していないうえ、小池さんの政治団体「フォーラム・ユーリカ」も政治献金があったまででこれも適法。政界に近づいて巨万の富を生むと融資詐欺をSBIソーシャルレンディング社でやらかして逮捕された一件の小池政界ルートにしては、やや貧弱なうえに、筋違いな気もします。

 むしろ太陽光発電絡みやカジノ絡みで騒ぎになってしまったのは公明党議員のほうで、先に「銀座豪遊」問題で議員辞職に追い込まれた公明党・遠山清彦さんの件は、面白人脈が掘り起こされ、どちらかというとオールド自民党や中国人脈の方面に着火するべきものです。

遠山清彦元議員方面が出火のお陰で森喜朗さん面白人脈が炙り出されるの巻

 さらには、別の公明党議員ルートから着火した長崎カジノ構想で背面調査を押し込まれ撤退に追い込まれたオシドリの話も出ています。このオシドリの資金元は中国共産党のフロント企業として世界的にも注目されている新世界発展グループと見られ、思い切り監視してるところでお金を動かしたので度胸あるなと思ってたわけですよ。

オシドリ 「不合理なルール」と「倫理的懸念」を理由に長崎IRから撤退

 さらに同様な資本ルートで太陽光パネルの設置を行うにあたり、各地でメガソーラー計画を立ち上げ、資金を集めていたのが今回のテクノシステム社の関連でも名前が出ていた複数の人物であって、この絡みの延長線上に先般議員会館の事務所に家宅捜索が入った人物の一人、公明党・太田昌孝さんが入っていました。太田さんに関しては、それと知らずに橋渡しをしてしまっただけであって、何か具体的な受益を目指して動いたとは考えづらいのですが、懸念があったというだけでガサ入れの引責で公認辞退、そしておそらくはそのまま解散か任期満了をもって政界引退という流れになるというのは実にもったいないところではあります。

公明・太田昌孝氏が公認辞退 衆院選、事務所捜索で引責

 それもこれも、一連のメガソーラー開発計画やIR(統合型リゾート;カジノ)計画については明らかに政治問題であり、ここへの食い込みができるか否かで随分変わってくるのだ、というあたりは大事なポイントなのではないかと思っています。

 そのような火種が飛ぶのも総裁選ゆえに… ではなく、本来ならば総裁選が行われ、どういう形かであれ衆議院選挙が行われるこの直前の時期にリークも含めて政界ルート捜査にゴーが出て、よりによって先に連立先である公明党議員を最悪3人も飛ばしかねない事態にしてしまうのは、よほど面倒なことが起きていることの証左じゃないかと思うわけです。

 当然、コロナ下で、臨時国会も開かれていませんので話は広がらないという思惑もあるのかもしれませんが、総裁選が低迷している理由も「それなりに大きい話のはずなのに、政治報道が政治家のクビを取るところまでにはなかなか至らない」という面があるのかもしれません。

 何か総裁選・衆議院選挙前に起爆剤になるような話が出てくるといいのですが。
 「面白い」というだけでなく「政治への国民の参加意欲が高まる」という意味で。
 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.Vol.343 自民党総裁選と衆院選の不毛具合にあれこれと心を痛めつつ、印鑑とNFTを結びつけてしまう我が国のビジネスセンスに感動する回
2021年8月27日発行号 目次
187A8796sm

【0. 序文】弛緩の自民党総裁選、低迷の衆議院選挙見込み
【1. インシデント1】総裁選→衆議院選挙の目玉「コロナ対策」と「経済対策」とがヤバい件で
【2. インシデント2】我が国におけるNFTの行方が若干微妙な方へ向かっている件
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」のご購読はこちらから

やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

その他の記事

ゆとり世代に迫るタイムリミット(岩崎夏海)
AirPodsから考えるBluetoothの「切り換え」問題(西田宗千佳)
女の体を食い物にする「脅し系ナチュラル」との戦い方(若林理砂)
閉鎖性こそがグローバル時代の強みにもなる可能性(高城剛)
睡眠時間を削ってまで散歩がしたくなる、位置情報ゲームIngress(イングレス)って何?(宇野常寛)
旅行者が新天地を探すことができるか試される時代(高城剛)
Netflix訪問で考えた「社内風土」と「働き方」(西田宗千佳)
何でもできる若い時代だから言えていたこと(やまもといちろう)
中国からの謂れなき禁輸でダブつく高級海産物どうしようって話(やまもといちろう)
川上量生さん、KADOKAWA社長時代に高橋治之さんへの資金注入ファインプレー(やまもといちろう)
突然蓮舫が出てきたよ都知事選スペシャル(やまもといちろう)
終わらない「レオパレス騒動」の着地点はどこにあるのか(やまもといちろう)
いわゆる「パパ活」と非モテ成功者の女性への復讐の話について(やまもといちろう)
私が古典とSFをお勧めする理由(名越康文)
英オックスフォード大のフェイクニュースに関する報告書がいろいろと興味深い件(やまもといちろう)
やまもといちろうのメールマガジン
「人間迷路」

[料金(税込)] 770円(税込)/ 月
[発行周期] 月4回前後+号外

ページのトップへ