小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」より

ネットリテラシー教育最前線

※メールマガジン「小寺・西田の金曜ランチビュッフェ」2017年6月2日 Vol.129 <世界は閉じていくのか号>より


6月1日の夜、津田大介メルマガの動画コンテンツ、「津田ブロマガeXtream」に出演してきた。昨年MIAUのサイトをリニューアルして以来、結構な数の子供向けインターネットリテラシー講演依頼が舞い込んでおり、だいたい月に2回ペースで日本中のあちこちに出かけては、子供向けのインターネットリテラシーの授業をおこなっている。動画配信では、そのまとめ的なことを話してきた。今回はちょうどいい機会なので、ネットリテラシー教育の現状についてお話ししてみたい。

 

変わる学校

昨年末から半年の間で僕が依頼された講演を、予定を含め一覧にすると、以下のようになる。

2016年
 11月8日 茨城県日立市立久慈中学校
 12月15日 川崎市立高津高等学校定時制高校
 12月19日 都立江戸川高校定時制髙校
2017年
 1月28日 三鷹市障がい者就労支援センター
 2月2日 吹田市教育委員会 第5回青少年指導者講習会
 3月17日 埼玉県富士見市いじめ防止連絡協議会
 5月22日 静岡市立安倍川中学校
 5月30日 福島県立会津工業高校
 6月17日 東京都昭島市立清水中学校
 6月25日 福島県南あわじ市PTA連絡協議会
 7月15日 東京都昭島市つつじヶ丘小学校

これ以外にも事務局長の香月君の講演や、日程が合わずお断わりしたものもあるので、だいたいこれの2.5倍ぐらいのリクエストがある。

中学・高校向けの講演は、主にLINEに代表されるネットコミュニケーションについてのリクエストが多い。以前は不適切サイトへのアクセスやソーシャルゲーム課金、ネット依存といった、個人の動向に関することが、生活指導の面で問題視されていた時代だった。それがここのところ、ネットによって変化する人間関係に対応する教育のやり直しを、学校が迫られてきているように思う。

小学校ぐらいまでなら、人との付き合いといった道徳的な教育はカリキュラムにはいっているが、中学髙校となるとそこはもう小学校で終わっていることになっているので、教えられる先生もいないし教材もない。そこで我々のような、外の人間を呼んで講演して貰う、という流れになるわけだ。

これまでの講演依頼の傾向としては、10月頃にピークを迎えるということが多かった。それというのも、夏休みに子供達の間でLINEなどでやらかして、それが学校で問題になるのが9月、講演してもらうという話になるのが10月、という流れであった。訪問した学校の校長先生にその辺を突っ込んでお話しを伺うと、「実は…」という話が結構多かった。

ただ、やらかしたあとにどうにかしてくれと言われても、その時点ですでにその事件に対して尾ひれがついた話が出回っており、なかなかそれを講演一発でリセットしてくれと言うのも難しい話である。そのあたりはご了解を頂いて、講演してきた。

だが今年に入ってからの講演の傾向からすると、それも徐々に変わってきた。まずは教育委員会や連絡協議会、PTAなど、指導者向けの講演がそこそこ増えてきている。これまでこうした指導者クラスの講演は、バックに文科省や総務省が控えている安心ネットづくり促進協議会主催の大きなシンポジウムぐらいでしか行なわれてこなかった。ある意味行政が尻を叩いて人を集めて話を聞かせてきたわけだ。それが各地域で自主的に話を聞きたいというアクションに変わってきた点は、かなり大きな構造変化だと思う。

 

金なら「ない」

指導者向けの講演をやったり、ある学校で講演を行なうと、そこから芋ずる式にその地域での講演依頼が増えるという傾向がある。クチコミで評判が拡がるのだろう。静岡、福島あたりは東京からいくとそこそこ遠方にあたるが、交通費は出してくれるので比較的行きやすい。今北海道からの依頼も来ているが、交通費含めた結果を待っているところである。

実際に講演が決まった以外にも多くの講演リクエストが来るわけだが、話がまとまらない理由は日程以外にも、お金の問題が大きい。講演自体は無償だが、遠方になるとさすがに我々のような貧乏団体としては、交通費をいただかないと難しいことになる。

一度宮崎県都城市の学校から講演依頼が来たのだが、交通費は出せないということでお断わりした。僕は実家が宮崎なのでよくわかるが、宮崎までの交通費、しかも空港がある宮崎市内ではなく、鹿児島にちかい都城市までの交通費を考えると、結構な額である。それを東京から自腹で来い、というセンスは、さすがにいかがなものか。

なぜそんなことになるかといえば、学校側に「外から講師を呼ぶ」というセンスがない、ということに尽きる。外部講師による講演費用を年度予算に組み込んでおらず、完全にタダで来てくれるところはないか、という目線でしか講師を探せないわけである。

そもそも外部講師への費用を、どこが負担するのかということも、はっきり決められない。学校が運用費の中から負担するのか、それともPTA予算の中から負担するのか。学校予算であれば、予算の執行はかなり厳しい目で見られるのは当然だが、まずは校長決裁で臨時に使える予備費を最初から付けとくということは必要だろう。

仮に使える予備費はあっても、5月6月の段階でもう使っちゃっていいものなのか、そこの判断ができない。まだ今年度これから半年以上あるのに、何かあったらどうするんだということで、予算はあるが出し渋るわけである。

PTA予算であれば、外部からの講師費用は所属の教育委員会へ請求すれば、限度額はあるものの支給されるケースは多い。ただそういう仕組みがあることは、数年PTA本部役員をやってないとわからない。毎年PTA役員が変わるような学校では、そういう仕組みの存在も、その使い方も知らないままだ。

とにかく1学期中に依頼される講演は、県や市がバックについていない限り、交通費も出してくれない話ばかりだ。静岡、福島は交通費を出してくれるという話をしたが、実は静岡は静岡市生活安心安全課というところの主催ということで、交通費を市が出してくれている。福島は県の復興予算が付いているプロジェクトの一貫として、交通費を頂いている。

誤解があるといけないので繰り返し念押ししとくが、我々の講演は無償だ。首都圏近郊へは、完全無償で出かけている。ただ遠方で往復1万円以上の交通費がかかるようなところは、その負担はお願いしたいというだけのことである。ポケットマネーで月数回1万円越えの交通費を払って活動していくのは、無理がある。

これがアメリカなら、寄付でなんとか回るのだろうが、日本にはそうした文化背景がない。もし今年後半もこうした交通費も出せないような講演依頼が続くのであれば、どこかのネット企業とお話しをして、活動資金を援助してくれるように頭を下げに行かなければならないだろう。

 

小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ

2017年6月2日 Vol.129 <世界は閉じていくのか号> 目次

01 論壇【西田】
 「ヤマダ×FUNAI」から考える日本のテレビ市場」
02 余談【小寺】
 ネットリテラシー教育最前線
03 特集【小寺】
 NAB2017レポート (4)
04 過去記事【西田】
 「テニス部」から生まれた「テニスセンサー」ビジネス
05 ニュースクリップ
06 今週のおたより
07 今週のおしごと

 
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