元卓球世界王者・山中教子の必勝の方程式

人生を変えるゲームの話 第1回<「負ける」とは「途中下車する」ということ>

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スポーツ、囲碁、将棋……古来から、人間は勝ち負けを競い合うゲームを好んできました。またそれぞれの競技で頂点を極めた王者の言葉に、多くの人が耳を傾けます。

人はなぜゲームに心惹かれ、ゲームに人生を見ようとするのか。「卓球王国」と呼ばれた時代に世界にその名を轟かせた元卓球世界王者・山中教子氏によるゲームと人生を巡る哲学をお届けします。

 

【お知らせその1】山中教子特別講義「ゲームからひもとく 自分を支える力」

およそ1年振りとなる、元卓球世界王者・山中教子による特別講義を2016年1月30日、アープカレッジすがも(JR巣鴨駅徒歩2分)にて行います!

詳細・お申し込みはこちらから

http://arp-theory.com/?p=1677

 

【お知らせその2】卓球世界王者のレッスンを自宅で受ける「アープ卓球通信」スタート!

小手先ではない、「本格的な卓球」を求めるあなたへ。

初心者からトッププレイヤー、指導者まで。アープ理論に基づく卓球の最先端を映像とテキストでお届けします。

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アープ卓球通信

 

「勝ち負け」がすべてではない、というものの……

この連載は「ゲーム」についてのお話です。

「ゲーム」とは何か。いろんな定義があると思いますが、ここではとりあえず、「勝ち負けを競うもの」としておきましょう。

私は卓球選手として現役時代、勝ち続けてきました。もちろん、負けた試合もいっぱいあるけれど、結果として勝った数のほうが、負けた数よりもずっと多かった。

でも、普通はそうじゃありませんね。卓球に限らず、あらゆるスポーツ、あるいは囲碁や将棋などの勝ち負けをつけるゲームでは、「負ける人」のほうが「勝つ人」よりもずっと多いはずです。「一対一の勝負なら、勝つ人と負ける人の数は同じじゃないの?」と思われるかもしれませんが、実際はそうじゃない。例えばトーナメント戦が終わったときに心から「勝ったぞ!」と思える人は、優勝した人だけ。それ以外の人はみんな「(途中で)負けた」と思いながら、家に帰るんじゃないでしょうか。

もちろん、みんながそんなふうに「勝負」という視点だけで考えていたら、そのうち誰もゲームをしなくなってしまいます(笑)。ですから、たとえ負けたとしても「今日は自分の目標を到達できたからいいよね」とか「悔しいから次はがんばろう」というふうに自分を納得させる。もちろん、それはそれでいいんです。でも、純粋に勝ち負けだけをみたときには、ほとんどの人は負けている。これもまた「勝負」あるいは「ゲーム」というものの本質です。その大会で優勝した人だって、次は負けてしまうかもしれない。

そう考えると、ほとんどの人にとって、試合やゲームというのは「負ける」ものだということになる。残酷なようですが「試合」とか「ゲーム」というものは、本来はそういうものなんです。勝つ人よりも、負ける人のほうがずっと多い。これが現実です。

 

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改めて「ゲームとは何か」を考えたい

そういうこともあって私は、これまで卓球の話をするときに「勝ち負け」の話を避けてきました。「アープ理論(※)」を提唱したのも、より多くの人に、卓球の楽しさや魅力を知ってもらうには、「勝ち負け」よりも、「身体運動」を入り口にしたほうがいいと考えたからです。

実際、アープ理論に関心を持ってくださった方の中には、勝ち負けよりも無理や無駄のない身体運動に関心を持ってくださった方が多くいらっしゃったと思います。それはそれでよかったな、と思うのですが、一方で、「アープ理論は<勝ち負け>とは関係のないもの」「ゲームや試合には役に立たないもの」だと思われてしまってはいけないぞ、という懸念も持っていました。

アープ理論はあくまで「卓球の身体運動」をひもといたものですから、本当は、趣味で楽しむ人にも、世界選手権でメダルを狙う人にも、等しく役立つものです。決して「身体運動が美しければそれでいい」「勝ち負けなどどうでもいい」というものではありません。そもそも、ゲームに勝つためには、身体運動の質を高めていくことは絶対条件です。高い身体運動に基づいた技術抜きに、「勝ち負け」は語れませんからね。

しかしその一方で、試合やゲームは、ただ単に「身体運動の質を高めれば勝てる」というような、甘いものではありません。「勝つとはどういうことか」「ゲームとはどういうことか」というテーマを突き詰めていかなければ、ゲームに勝つことはできない。

最初に申し上げた通り、ゲームで勝ち続ける人というのはほんのわずかですし、そこだけにこだわってしまうのは、卓球というスポーツを楽しむ上では、あまり良いことだと思いません。ただ、「勝ち負け」を競うゲームは、スポーツを語る上では絶対に避けては通れない核心でもある。私はこれまで、あえてそれを語ることを避けてきたわけですが、やはり卓球を語る以上、ゲーム、試合、勝ち負けといったテーマについて語らずに済ませるわけにはいかない。

最近、そう覚悟を決めてから、私が主催するアープ卓球カレッジでは「ゲームワークショップ」を中心に、ゲームをテーマにした講座を開くようになりました。

アープ理論が身体運動の大切さを言うあまりに、「勝たなくてもいい」と言っていると誤解されてしまってはいけない。しかしその一方で、昨今当たり前のように語られる「勝てばいい」「勝たなければ無意味」といった考え方についても、私は「それはちょっと違うんじゃないの」と感じている。

そこで、この連載では、勝ち負けを競う「ゲーム」とはそもそも何なのか、というお話を、順を追ってお話させていただこうと考えました。

 

※アープ理論(ARP理論):元卓球世界王者、山中教子が提唱する卓球の身体運動理論。軸(Axis)、リズム(Rhythm)、姿勢(Posture)の三要素から、無理なく、無駄なく、もっとも効率的に身体運動を整理、卓球を総合的かつシンプルに捉えなおす。オリンピック代表の藤井寛子選手、石川佳純選手といったトップアスリートや、岸川聖也選手の指導で知られる石田眞行氏(石田卓球クラブ代表)らの指導者から多くの支持を集める。詳細→アープ卓球カレッジ http://arp-theory.com/

→DVD『軸・リズム・姿勢で必ず上達する 究極の卓球理論ARP(アープ)

 

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