川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!」より

見た目はエントリープラグ? 驚異の立ち乗りロケット「ティコ・ブラーエ」を見てきました

川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!」2015年10月2日 Vol.001より

今、民間の宇宙開発がアツい!

 
1960年代生まれのぼくなんぞにしてみると、現実世界の宇宙開発って、じれったい!

子どもの頃には、「大人になる頃には誰でも宇宙に行ける」と言われたものです。少年漫画週刊誌のグラビアページに、月面基地や宇宙ホテルの特集などがありまして、子ども心に「その気になっていた」ので、その後の停滞期には、「騙された!」という気分になりました。

その積年の恨み(?)のために、民間による宇宙開発(ロケット開発)を描いたのが「夏のロケット」(文春文庫)でした。

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しかし、2010年代の今、民間の宇宙開発は当たり前! イーロン・マスクのスペースXは、自社開発のロケットで、国際宇宙ステーションへの物資の輸送を請け負っているし、宇宙飛行士の輸送(つまり有人宇宙飛行)にまで手を伸ばそうとしています。きっと近い将来、実現するはず。

ほかにも、Amazonのジェフ・ベゾスが立ち上げたブルーオリジンやら、すでに物資の輸送を請け負っているオービタル・サイエンシズやら、弾道飛行での宇宙観光を目指す数々の宇宙企業や、小型人工衛星をどんどん飛ばすスタートアップ企業がもう数え切れないくらい。日本でも、株式会社インターステラテクノロジズ(いわゆる「なつのロケット団」の開発会社)が、ガンガン開発を進めているし、国家予算をあてにしない自主的な民間宇宙開発会社がでてきています。

今、宇宙への扉は再び開かれた!

そこで、ぼくは大いに刺激されて、ほとんど20年ぶりくらいに宇宙小説・ロケット小説(SFマガジン連載中の「青い海の宇宙港」)を書いているわけです。本当にエキサイティングな状況なのです。

これは、「開発」だけでなく、「探査」「観測」といったサイエンスに関わる分野もそう。

サイエンスとエンジニアリングは、常に両輪となって進んでいくわけですから。

 

これが「有人宇宙船」ティコ・プラーエだ!

 
最近、コペンハーゲンにでかけた際に、このような有人カプセルが展示されているのに出会った。コペンハーゲンのティコ・ブラーエ・プラネタリウムの展示スペース。いきなりアマチュア小型ロケットが展示してあった。
 
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<ロケットの燃焼試験に失敗すると、こんなふうに記録カメラが黒こげになる……>

中央駅から徒歩5分くらいのところにあるティコ・ブラーエ・プラネタリウムの展示スペースだ。そして、このカプセルの名もティコ・ブラーエ!

いやあ、びっくりした。噂には聞いていた「有人宇宙船」、それも実物に出会うとは。

実は、この宇宙船を作った人たちと連絡を取り合っていて、タイミングが会えば会おうということになっていた。世界的に有名な(しかし謎に包まれた)、コペンハーゲンサブオービタルズ(以下、CS)というアマチュアロケット開発グループだ。

けれど、CSはこの夏、新しいロケットの打ち上げに取り組んでいて、非常に忙しく、予定が合わなかった。

失意のまま、ふらりとプラネタリウムを訪ねたら、いきなり、出会ったのである。

いわゆる、テンション上がる! 状態になってしまった。

なお、ティコ・ブラーエとは、16世紀に活躍したデンマークの偉大な天文学者(もちろん占星術師、当時としては)で、地元の誇りだ。

彼は、生涯をかけて詳細な天体観測を行ったことで知られる。のちにヨハンネス・ケプラーが、惑星の軌道にまつわる「ケプラーの法則」を見出したのは、ティコ・ブラーエの観測データがあってこそだった。

だから、「ケプラーの法則」を「ケプラー・ブラーエの法則」と呼ぶべきだという話を、プラネタリウムの解説員が真顔で言っていた。

 

「立ち乗りロケット」の乗り心地は?

 
さて、この有人カプセル、ティコ・ブラーエは、写真でもわかるとおり、小さい。細い。
 

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<この細長いものに人が入る。外観のイメージはエヴァのエントリープラグだ>
 

もっとも、エントリープラグよりも、はるかに小さく、搭乗する人は相当きゅうくつな思いをすることになる。

ふつう、宇宙船というと、宇宙飛行士はシートに座って打ち上げられるというイメージだが、この有人カプセルは違う。

細長いチューブの中に、人が立ったまま入り、そのままの状態でハーネスで体を固定して打ち上げられるのである。

立ち乗りロケット! なのである。

こういう「立ち乗り」のアイデアは、旅客機では、たしか中国のLCCが導入しようとラフスケッチを発表していたと思うが、狭さのでいえば比較にならない。

本当に、体格のよい北欧の人など「横も縦も」入らないんじゃないだろうか。

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<カプセルの中はこんな感じ。びろんと外に出ているのが、ハーネスというか、シートベルトである>

エコノミークラス症候群では済みそうにない、この狭さを理解してもらえるだろう。

2011年にこのカプセルが打ち上げられた時、だいたい3キロくらいの高度まで達したそうで、中にはダミーの人形が入っていた。

バルト海から船上打ち上げする、独特の趣きを持ったやり方で、動画もあがっている。

http://copenhagensuborbitals.com/history/spacecraft-2/tycho-brahe/

このリンクの動画には、カプセルのラフスケッチも出ているけれど、これはよほど小柄の人をモデルに描いている。実物を見ると、こんなに膝を曲げている余裕なんてあるのだろうか、というほどだ。

いかにデモンストレーションとはいえ、よくもこのコンセプトで打ち上げたものだ。弾道飛行はほんの数分のものだから、待機時間を考えなければ、これでも人が搭乗しても大丈夫なのかもしれない、とは思う。

もっとも、デモ打ち上げでは、パラシュートがうまく開かず、水面に叩き付けられて、結構、破損してしまった。

乗っていたのはダミーの人形だったので、大事には至らなかったわけだが。

ぼくは、これをしげしげと見ていて、激しい葛藤にとらわれた。

これに乗っていいと言われたら、乗る? 乗らない?

どっちよ??

宇宙には行ってみたい。放っておいたら、一生、行けないかもしれないので、チャンスがあれば、捕まえたい。

しかし、この究極・小型宇宙船はきつい。
 
いや、それでもチャンスはチャンスだ。
と勝手に想像し、妄想し、葛藤していたわけである。
 
みなさん、いかがですか? 
 
こういうのでも、乗ってみたい人。
 
どれくらいいるんだろ。
 
 

(記事後半に続く)

<この記事は川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!」Vol.001(2015年10月2日発行)からの抜粋です。続きは下記メールマガジンをご購読してご覧ください!>

 

川端裕人メールマガジン「秘密基地からハッシン!

Vol.001(2015年10月2日発行)目次

01:本日のサプリ:ニュージーランド南島で出合ったキガシラペンギン
02:秘密基地で考える:日本のイルカ飼育の常識は「世界水準」と違うらしい
03:宇宙通信(1)究極!アマチュアおっさん有人宇宙ロケット開発@コペンハー
ゲン
04:移動式!(1)ナイチンゲールはプレゼンの鬼だった!?~ロンドン公衆衛生
の旅
05:連載・ドードーをめぐる堂々めぐり(1)17世紀、ドードーが来日していた!
06:keep me posted~ニュースの時間:次の取材はこれだ!
07:せかいに広がれ~記憶の中の1枚:ルワンダの学校から
08:著書のご案内・予定など
09:メルマガ創刊記念・特別付録:新刊『天空の約束』第一章

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川端裕人
1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。普段は小説書き。生き物好きで、宇宙好きで、サイエンス好き。東京大学・教養学科卒業後、日本テレビに勤務して8年で退社。コロンビア大学ジャーナリズムスクールに籍を置いたりしつつ、文筆活動を本格化する。デビュー小説『夏のロケット』(文春文庫)は元祖民間ロケット開発物語として、ノンフィクション『動物園にできること』(文春文庫)は動物園入門書として、今も読まれている。目下、1年の3分の1は、旅の空。主な作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、アニメ化された『銀河のワールドカップ』(集英社文庫)、動物小説集『星と半月の海』(講談社)など。最新刊は、天気を先行きを見る"空の一族"を描いた伝奇的科学ファンタジー『雲の王』(集英社文庫)『天空の約束』(集英社)のシリーズ。

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