※この記事は、去る3月13日ロフトプラスワンにて行われた家入一真×上祐史浩『リアルお悩み相談室 vol.3』をもとに再構成したものです。全文は家入一真メールマガジン「家入学級」でご覧いただけます。
何かに打ち込みたくても、もう先が見えているものには打ち込めない
家入:震災以後、従来の仕組みが形をなさなくなってきてる気がします。どの時代もそうかもしれませんが、今はみんな不安を抱えている。そうした心のよりどころとして、宗教が機能すると思いますか?
上祐:僕自身、模索しているところもあります。そういった問題意識に対して、今日この場で家入さんや集まったみなさんと、新しく何かを見いだせるといいなという気持ちです。私たちは、何十年か前までの経済大国としての価値観を失いつつあります。経済成長至上主義や、個人で言えば、仕事に命をかけ、マイホーム所有をゴールにし、言わば“会社教”(仕事・会社を宗教のように絶対視する考え方)の信者としての生き方が、バブルの崩壊で終わってしまった。
もう一つ、科学技術によって幸福になるという考え方も、原発事故で弱くなった。つまり、20世紀に揺らぎ始めた「お金」と「科学技術」で人が幸福になるという考え方が、ここに来て、いっそう崩れ始めたという認識になった。
その中で、「心の問題」というテーマが出て来ると思います。お金でも技術でも完全には幸福にはなれないことがだんだんわかってきたとき、忘れていた精神面を考える機会が多くなると思います。それをどう模索していくのか。
家入:お金とか科学で幸せを追い求めた時代はまだよかったのかもしれない。でも、日本がある程度豊かになって、追い求めていたものが「もうダメだね」ってなった今、僕たちは絶望の淵に立たされているような気がします。
上祐:意識調査を見ても、日本人ぐらいの生活水準だと、これ以上給料や所得が増えても、幸福を感じる人は増えないんですよね。
家入:どこかで一定になるんでしたよね。
上祐:横ばいというか、行き詰まるというか。もちろん、日本は問題は多々ありますが、経済や医療など様々な面で、やっぱり途上国と比べれば、物質的にはそうとう恵まれている。しかし、これ以上の幸福は、お金では買えないというのが、最も大きな課題になっていると思います。
家入:今の若い子たちは、大人が「金を持ったら成功だ」とかいろいろ言ってきたけど、結局幸せになれないことがわかっちゃった世代なのかなあと思っています。
上祐:そうですね。私は早稲田大学の出身ということもあり、早稲田や慶応の若い人たちと話をする機会もありますが、彼らは自分たちの親の世代と同じように仕事一筋になって討ち死にしたくないと感じている。
何かに打ち込みたくても、もう先が見えているものには打ち込めない。何に打ち込めばいいのわからなくて、待機状態になっている印象もあります。ただ、だからって何もやらないと、見つかるものも見つからないんじゃないかとも思います。昔はみんな働かないと生きていけなかった。子どもをたくさん産む時代は、好きなことじゃなくても何かしらやらなくてはいけなくて、結果的にそれが自分の好きなことになる人もいた。

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