高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

1級市民と2級市民の格差が拡がるフランスの実情

高城未来研究所【Future Report】Vol.642(10月6日)より

今週は、パリ、ルーアン、シノン、オルレアンとフランス国内を移動しています。

パリはファッション・ウィークということもあって煌びやかなように見えますが、フランスの実情は穏やかではありません。

この夏、フランス全土で暴動が起きたのも記憶に新しく、きっかけはパリ郊外で警官による17歳の黒人少年射殺事件でしたが、ショッピングセンターや商店で略奪が公然と行われ、終いには市長の自宅襲撃まで過激化。
最終的に5千人を超える逮捕者が出るほどの大惨事になりました。

この背景には、1級市民と2級市民の根深い格差があります。

フランスでは、デモは日常的に行われており、なにも変わらないどころか日々悪化する社会情勢に多くの人々が業を煮やし、ついにはちょっとしたきっかけから暴動へと発展します。
特に法的根拠なき「2級市民」扱いされるフランス生まれの移民2世3世たちは、一度、暴動になるときっかけはどうでもよくなって、まるで結託するようフランス中で火の手が上がります。
明確な目的を持った意思表示があるデモとは異なって単なる犯罪にも見えますが、実はその行いには政治的メッセージが多分に含まれています。
現在、金融緩和とウクライナ戦争によるインフレが直撃し、主に値上げをしたスーパーやガソリンスタンドなどが暴動で狙われたことからも、略奪の背景には生活苦の解消を政府に求めている「声なき主張」が見てとれます。
いまは、暴動が沈静化しているように見えますが、実態は休火山のように、いつ大爆発してもおかしくない状態が続いています。

また、デモでは社会が変わらないことを実感した若年層を中心に、SNS上で政府を転覆させるほどの暴力革命を呼びかける声が各地で狼煙を上げています。
確かに犯罪行為は大きな問題ですが、(エリート優遇)社会が良くなる他の方法が具体的にあるのかと言われると、非常に難しいフランスの現実もあります。

今回、暴動が起きたパリ周辺都市をまわって様々なお話しをお聞きしましたが、略奪された店舗や飲食店で働いて人たちまで、移民ではなく政府の問題を指摘しているのに驚きました。

先月の世論調査では、昨年と同じくフランス大統領選が決選投票になった場合、得票率は移民排斥を主張し極右と呼ばれるマリーヌ・ルペンが55%、現職マクロンが45%となることが示されました。
昨年の決選投票ではルペンが41.5%に対し、マクロンが得票率58.5%獲得して再選。
現職大統領の再選は20年ぶりでしたが、いま、再投票すると結果が覆る事になります。

また、年金制度改革に抗議するデモやストライキを支持してきた急進左派のジャン=リュック・メランションの支持率も急低下。
2級市民との差別の解消が秩序の維持になると主張をし、それこそ夢物語だと多くの人たちに一蹴されています。

この一年でフランスの世相は大きく変わりました、モチロン悪い方向に。

パリの一部はパーティモードが続きますが、周辺都市に蔓延する貧困、犯罪、人種差別、教育水準の低さは年々悪化しており、1級市民と2級市民の格差は広がるばかり。

いま、フランスの政治力学、いや、国体そのものに大きな変化が起きはじめていると、パリ周辺をまわって感じる今週です。
とても穏やかではありません。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.642 10月6日日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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