やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

選挙だなあ


 暑いし長いしつまらないし、どうしようもなくても国政選挙は国政選挙なので頑張って調べるし付き合いはするんですけどね。

 しかし、何でしょうこの全体的にどうでもいい感じは。

 今回、新たに泡沫として日本参政党とごぼうの党も参戦し、泡沫の老舗NHK党も出て興味津々ではあるんですが、ネットパネル調査ではうっすら存在が確認できるけど期日前出口ではゼロ。ゼロですよゼロ。ちょっとねえ…。せめてカイ二乗検定で検出可能なレベルまで出てきてくれれば論評のしようもあるんですけど、個票で追いかけようにもそもそも投票をしたという人が出てこない限りどうにもならないのが現実です。

 その意味では、世間的には話題になっていても得票予想の数字さえも誤差のレベルになっている社民党や、それよりはマシだし山本太郎さんは通りそうだけど全国で見るとやっぱり誤差のレベルのれいわ新選組もおりますので、本来なら二大政党制で大胆な政権交代を企図した衆議院と見比べても動物園化した参議院選挙にどれだけの意味があるのかと正面から中学生に問われても「必要なんです…」と力説できない自分がおります。まあ長男から「政治について教えろ。今回の参院選とは何ぞや?」と訊かれて不機嫌になる自分がおるわけですが。

 とはいえ真面目にやれというのもありますので真面目にやっとるんですが、守備範囲的には東京選挙区を見ておりますけれどもまあなかなかダルくてですね。通過する6議席、順当に上5個は埋まっておるようで、既報通り朝日健太郎さん生稲晃子さん蓮舫さん竹谷とし子さん山本太郎さんはほぼ当確の情勢に見えます。もちろん投票箱が全部開くまでは分かりませんが。

 ただ、現況で見てれいわ新選組の山本太郎さんが一部立憲支持や共産支持、あるいは現状批判に回りそうな無党派層の得票もごっそり持っていく状態となり(ごっそりといっても、もともと立憲共産支持があまり多くなく無党派も投票には行かないので全部合わせてもたいした数ではない)、割を食うのが実は野党勢力でエース格と目された共産・山添拓さんだというのはなんとも…。という感じになっています。

 個人的にレッズはあまり好きではありませんが山添拓さんは好きで、某ヒヤリングで二度ほど山添さんともご一緒したことがあるんですがなるほど共産党組織内でも山添さんに対する声望が高いのもなるほどなというぐらいにクレバーだし人間的にもよさそうな御仁でした。好きです、山添拓さん。この前鉄道絡みでなんか書類送検されてましたが、ネタとして鉄分なのは悪くないと思うんですよ。

 その山添さんの支持層が共産なのですが共産支持層だけでは足りず、野党共闘といっても東京は6議席あるため立憲と候補者調整するでもなく、自民党・政権批判票の無党派については東京に関しては当然野党候補者間で奪い合いになるのは仕方がないことです。山添さんと同じく政治実務では非常に優秀だった小川敏夫さんが勇退した後釜がイケメンなのにあまり人気のない松尾明弘さんが立憲二人目だったので、むしろ松尾さんには一度降りてもらって山添さんに票を集めたほうが良かったんじゃねえのぐらいの勢いの話になっています。

 その6議席めに何とか山添さんが潜り込もうというところで立ちはだかっているのが維新の海老沢由紀さんで、日本維新の会としては組織的に全国政党へ拡大していくにあたり何で東京選挙区に元大阪市議立ててるんやバカタレと言いたいところなんですがまあ組織防衛上の妥協の産物だと後で知り、維新でもそういう配慮は存在しているんだなと思った次第であります。

 維新の怖いところはどこかからポロシャツ来た大阪府知事吉村洋文さんが遊説すると、都内なのに東京じゅうの新自由主義者が集まってきて総立ちになり2万票ぐらい積みあがるという謎のテクノロジーが存在しているところです。意味が分かりませんが、実際そうなのだから仕方がないんですよね。これが理由で旧8区で阿部司さんが勝ち、さらに旧1区で小野泰輔さんが議席を確保してしまって、2021衆院選の事前調査では維新ゼロの予想だったのが奇跡の2議席。思い返せば2019年参院選も着外予想だった我らが音喜多駿さんもなんだかんだ港区北区票をたくさん集めて自民・武見敬三さんをまくって何と5位入着と、東京にはこんなにも新自由主義者がいたんだなという想いを強くするわけであります。

 この維新が野党にいるお陰で、野党共闘の本丸であった自民・政権批判票を野党勢力で独占し議席を確保する戦術が崩れ、右側の野党である維新の会に票が入ると一緒になって野党各党が沈没するという素敵事態に拍車がかかってきました。某野党の会議に呼ばれて意見を聞かれたので野党共闘は共産党の延命のためにやるようなもので立憲民主党からすれば罰ゲームを強いられるようなものだけど浮動票で政権批判票を当てにするような政党が野党第一党で支持率10%をうろうろするような体たらくだからお前ら全員クズなんですよという話をしたらみんないやそうな顔をしていたのが印象的です。正直に意見を言えというので正直に意見を言ったら怒られるというのは非常に不愉快ですが、それでも話せと言われれば仕方なく申し上げるのです。

 今回、全国で調査をあれこれやっていますけれども、一番大きいのは国民の政策評価や重視する政策のところで「一番重視する政策は何ですか」というのを今回も入れておりまして、前回「コロナ対策が大事だ」と言っていた人の票がごっそり「外交・安全保障が大事だ」と争点が移っております。よく見てみると、一番その辺にビビッドに反応している層が一日4時間以上テレビを観ているお年寄りであり、要するに2月以降ロシアによるウクライナ侵略で、爆弾を落とされ逃げまどい殺されているウクライナ人を見て日本人が可哀想と思い、ロシア許せないというところで実はロシアって広くて我が国の隣国ですよねとなり、そのロシアの戦争のお陰でエネルギー調達が世界的にうまくいかなくなって物価が上がってけしからんというストーリーを国民が容認しているところにナラティブが存在しています。

 つまり、確かに物価高も電力逼迫も問題だけど、それらの問題の責任は岸田文雄にあるだろバーカという政権批判にはあまり向かわず、むしろ「戦争が起きてしまったのだから仕方がない」という国民理解というか諦めに繋がっているのが印象的です。個人的にはそれだけじゃなくて、安倍ちゃんの時代から反原発であれだけ原子力発電を嫌い、またSDGsだとほざいてLNGや石炭火力の設備更新をしないできたというエネルギー政策の失敗のツケだろと思うわけなんですが、それはあまり国民からすれば問題にはならないようです。むしろ、それまで純粋に原発は良くないとか、石炭は二酸化炭素が出て温暖化するという話を信じてきたことへの反省があるのかもしれません。でも、エネルギー問題があるからといって原発を手放しでやろうやろうというのも思考停止ですし、いまの猛暑にしたって温暖化ガス出しまくった結果クソ暑い夏を迎え、その中で選挙戦をやり、調査させられるワイの身にもなってくれというのが正直な気持ちです。世の中なかなかうまくいきませんね。

 他にも、東京に負けず劣らずナイス動物園となっている神奈川とか、調整失敗で妥協の産物で訳分からなくなってる山形とか、公明党が嫌いだからと突然公認要りませんといって独自の戦いに打って出て勝ってしまいそうな岡山とか、変な選挙区はたくさんあります。なんでこう、変なんでしょう。でもそれも、民主主義なのだからいろんな人が出馬していいのだし、そういう変な人に得票が集まるのもまた日本人の一定の割合は政治的に変な人であることの裏返しであって、これらの意見もしっかりと吸い上げて国民全体の納得のもとで政治ができている証左だとも言えるので、私なんかはこれはこれでいいんじゃないかと思います。

 そんなわけで、皆さん投票に行きましょう。クソ暑いけど。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.373 選挙にまつわるあれこれをぼやきつつ、公的教育費用に関する深刻な問題を論じ、選挙公約にWeb3を持ち出した自民党にツッコミを入れる回
2022年6月30日発行号 目次
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【0. 序文】選挙だなあ
【1. インシデント1】公的教育費用に関する整理
【2. インシデント2】自民党がいよいよ選挙公約にWeb3をぶち込んでしまった件について
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

 
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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員を経て、情報法制研究所・事務局次長、上席研究員として、社会調査や統計分析にも従事。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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