高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

晴天率と自由な気分は比例するという話

高城未来研究所【Future Report】Vol.485(2020年10月2日発行)より

今週は、富士五湖周辺にいます。

雨続きの9月でしたが、少しづつ天気が回復したこともありまして、秋の関東中部編の撮影がはじまりました。

もっとも安価な光源である太陽光を有効利用するのが、個人でも大規模撮影でも、また、iPhoneでも1000万円を超えるカメラでも撮影の基本中の基本でして、レンズというアナログな入力装置がある限り、これだけは当面変わる様子がありません。
撮影は、「太陽を味方に出来た者だけが成功する」といまだに言われる理由は、ここにあります。

そのため、撮影に向いた時期と地域に、太陽光を求め、パッと移動するのが、良い映像を作る秘訣です。
国内なら沖縄や小笠原のベストシーズンは、6月最終週から7月10日ぐらいまでの間で、この時期が梅雨明け&台風前で日照時間が長く、年間でもっとも撮影に適したシーズンとなります。

その後、北海道を除く8月の本州は、猛暑のためにマシンやバッテリーの不具合も多く、一方、極寒の2月ロケは、よほど差し迫った撮影以外、効率面からコストがかかります。

そして9月から10月は、本来なら秋晴れが続き、本州を中心に良い時期だったのですが、近年は台風も多く、気候変動から安定して撮影できるのは11月以降になりつつあります。
特に富士山を狙う場合、10月いっぱいまで霧に覆われていることが多く、美しい富士山を撮影することができません。

また、中長期となる撮影隊には、古くから暗黙のルールのようなものがありまして、月曜日を「撮休日」に設定してはならず、というのも、元々男所帯のため、散髪に行くことができないという古き慣習がいまも一部に残っているのが理由です。

一方、土日は学校や病院などのロケ地を貸してくれる日でもありますが、行楽地やキャンプ場は土日を避けるように指定されますゆえ、準備を考えると、必然的に休みは週の半ばに設定されることになるのも慣例です。

さらに、7時以前の集合時には、スタッフに朝食を提供しなければならない不文律があります。
少人数ならまだしも、50人から100人規模の大規模撮影隊だと、食費もばかになりません。
そこで、スケジュールが記載されているコールシートに「7時15分集合」と書かれていたら、この仕事はかなり予算がタイトであると、各人が理解しなければなりません。

これは世界的な傾向でもあるのですが、スタジオで照明を組んで撮影するのではなく、カメラがデジタル化し、高感度になったこともあって、できるだけ照明を使わず、屋外の自然光で撮影することが増えてきました。

「グリーンバック」と呼ばれる合成用素材を撮る際も太陽光を利用することが増え、それは、高品質なテレビが普及したため、違和感のない自然な光源で撮らないと不自然に見えることが背景にあります。
いわば、撮影も「オーガニック」に向かっているのです。
それゆえ、天候の読みと好天に恵まれた時期の地域選びは、より一層大切になってきました。

かつて、なにもなかったロサンゼルスに映画の都ハリウッドが作られたのも、年間300日近くが好天であることが理由でした。
もともと米国経済はニューヨークやシカゴが中心で、映画産業もアメリカの東側で発展していましたが、ニューヨークやシカゴは天候の悪い日が多く、照明技術が発達していなかった当時は、晴れの日を待って撮影しなければなりませんでした。

また、ニューヨークやシカゴには、人種差別や経済的なことを理由に作品づくりができなかったクリエイターたちが大勢いました。
ヨーロッパでもナチスの台頭などで自由な表現ができなくなり、アメリカに亡命してくる俳優や監督は新たな活躍の場を探していました。
そこで選ばれたのが、晴天率が高く、首都ワシントンから物理的な距離が離れていたため、政治的な影響を受けることも少なかったロサンゼルスだったのです。
こうしてハリウッドは、自由に映画づくりができる最高の場所、つまり「映画の都」になっていきました。

多くの方々も実感するところだと思いますが、晴天率と自由な気分は比例するものです。
かつて、僕自身が曇天ばかりのロンドンからバルセロナに移り住んだ時に、心から実感した経験があります。
もしかしたら、自由な気分は、身体のビタミンDレセプターと関係しているのかもしれません。
本当にそうならば、自己のビタミンDの高数値をキープすることが、自由な気分のベースだということになります。
これは、いつか腰を据えて研究したい僕のテーマのひとつです。

さて、富士五湖周辺は、陽が落ちると10度を切り、肌寒くなってきました。
秋の足音が、例年より早く感じる今週です。
(そろそろ、ビタミンD3を多めに飲む時期の到来のお知らせです)。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.485 2020年10月2日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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