※高城未来研究所【Future Report】Vol.521(2021年6月11日発行)より
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今週は、トカラ列島の口之島、鹿児島、萩、出雲、小淵沢と移動しています。
鹿児島港からフェリーで6時間南下する、人口わずか128人の口之島。まるで外界から閉ざされたタイムマシーンのような場所で、訪れる観光客もほとんどいません。
ちょうど北緯30度に位置する口之島は、太平洋戦争敗戦後の昭和21年2月2日、いわゆる「二・二宣言」によって、「アメリカ世」ともいわれる米軍統治下に入ります。
この時から日本との航海が全面的に禁止。
食糧入手は自給のほか、米軍に頼るのみとなりました。
そこで生きるための「密航」が行われました。
ちょうど北緯30度の境界線に位置していた口之島が、奄美や他のトカラの島々に住む人たちの密航中継基地となり、奄美の砂糖が本土では10倍以上で売れたため、背中に砂糖を担いだ密航者が続々と集結。
口之島の入江に船がひしめき、人口2000人以上に膨れ上がり、「市」をなすほど活況で、「口之島が一番景気良かった時」と、いまも島人が懐かしそうに話します。
しかし、その港も返還と共に寂れ、現在、当時の面影はまったくなく、再び時が止まったような平穏な島へと戻っています。
さて、今週はスマートフォンに駆逐されたカメラ市場のお話し。
iPhone 6が登場した2014年以降、デジタルカメラ市場は著しく落ち込みます。
出荷台数を見れば、2010年に1億2000万台を突破したのをピークに、2019年には、8分の1まで減少。
特に、初心者向けのコンパクトカメラの影響が大きく、市場はほぼ壊滅しました。
しかし、市場全体が縮小しているカメラ業界のなかでも、ミラーレスカメラの需要だけは伸びました。
この背景には、スマートフォンとの差別化を図ろうと「インスタ映え」を求める人たちを狙い、小型軽量で扱いやすいミラーレスカメラを家電メーカーが毎年何機種も投入。
これがアジアでSNSを利用する女性からのニーズによって急増します。
また、動画機能を搭載しているカメラも躍進。
この背景には、YouTubeの世界的勃興がありました。
一方、スマートフォンは、中国製Android機が急速な伸びを見せます。
先行していたはずの韓国のSamsungを、中国のHuaweiがあっという間に追い抜きます。
そのきっかけは、「P9」と呼ばれたHuwaei渾身のカメラ機能を伴ったディバイスの世界的大ヒットによるところです。
「P9」は、当時はまだ珍しかったデュアルレンズを搭載しただけではなく、なんとレンズは、パナソニックのパートナーだったライカとの共同開発によるものでした。
こうして「Leica」ブランドを冠したことにより、Huaweiは、欧州や日本など先進国で人気をモノにし大ヒット。
僕もはじめて購入したHuawei製品は、この「P9」でした。
その後、スマートフォンのカメラ性能が急激に高まり、デュアルレンズからトリプルレンズ、そしてクアッドレンズへと進化を遂げます。
また、5000万画素以上のセンサーがハイエンド機では当たり前となり、iPhoneのカメラ性能はスペック上見劣りしていき、プロのバックアップ機としても高画素スマートフォンが徐々に活用されるようになりました。
僕もHuaweiのスマートフォンに付いているカメラを使って、自著の撮影を随分行いました。
特にカメラを持ち込めない北米の大麻ショップ内では、Huaweiのスマートフォンが大活躍。
iPhoneで撮った写真は、画素が足りないことからデザイナーから突き返されましたが、急遽、現地で買ったHuaweiのスマートフォンで、無事撮影完了した思い出があります。
しかし、スマートフォンは薄型な構造上の問題からセンサーを小型化できても、物理的なレンズだけは、どうしようもありません。
そんな中、画期的なレンズ技術が登場します。
それが、「液体レンズ」です。
次回、いよいよ「レンズの未来」に続きます!
高城未来研究所「Future Report」
Vol.521 2021年6月11日発行
■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ
高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。


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