高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

ヒトの進化と食事の関係

高城未来研究所【Future Report】Vol.596(11月18日)より

今週も、東京にいます。

晩秋に食事を変えてmTOR遺伝子の切り替えを行うと先週お伝えしましたが、今週は多くのご質問を頂戴していることもありまして、もう少し食事についてお話ししたいと思います。

ホモ・サピエンスは、単に二足歩行できるだけでなく、進化の過程でそれまでよりまっすぐな姿勢で歩けるようになり、長距離走に適すよう進化しました。
他の動物と比べて短距離走は得意ではありませんでしたが、動物を追跡して狩るのに必要だった長い距離を歩いたり走ったりすることには、非常に長けていました。

今年、タンザニアに渡航した際、いまも伝統的な暮らしを守るマサイ族やハッザ族にお話しを伺いまして、地上最速と言われる時速120kmで走るチータを捕獲する際、瞬発力では敵わないが、何時間も追いかけることでチータを捕まえられると話していたのを思い出します。

つまり、人間の持つ基本走行性能は、瞬発力ではなく持久力に他なりません。
この持久力のエネルギー源が、ケトン体なのです。

ところが、現代人はお米やパン、麺などの糖質をエネルギー源にして活動しており、これらは本来人間が持つエネルギー回路=ケトン体を正しく動かすのを邪魔します。
人間は遺伝子的にも糖に弱く、すぐにインシュリン抵抗性に問題が生じ、他の病気を誘発します。
恐ろしい話ですが、現在、先進国の成人88%にインシュリン抵抗性と代謝機能に問題がみられています。

米国の進化生物学者で、「銃・病原菌・鉄」など他に類を見ない人類史を紐解くベストセラー作家ジャレド・ダイアモンドは言います。
「農業の導入が多くの点で大惨事であり、我々はそこからずっと立ち直れずにいる。
農業に伴い、我々の存在を呪う著しい社会的・性的不平等と病気と圧政が訪れたのだ。人は農耕民になるために進化したのではない」と。

ここで、人類の脳の進化を振り返ってみましょう。
およそ200万年前、突如として脳が、それまでよりはるかに大きなサイズへと急拡大しはじめました。
これにより、大脳新皮質が複雑になって感覚が鋭敏になり、知能が発達し、コミュニケーション能力の向上が目覚ましくなりました。

いったい、なぜ脳は突然大きくなったのでしょうか?

我々の祖先であるホモ・ハビリスが登場した250万年前は、石器を使用し、動物を狩っていたことを伺わせる最初の痕跡が見られる時代でした。
この時期の動物の骨の化石には、武器による損傷や最古の屠畜による切断跡が見られます。
どうやら人類は、動物を食べて多くのタンパク質と脂質を吸収したことによって脳が大きくなり、「ホモサピエンス」に進化したのだ、と現在では考えられています。

しかし、肉食だった人類が、菜食主義に転向せざるを得ない出来事が起きます。
それが約1万3000年前、地球に彗星が衝突したことによって多くの大型動物が絶滅。1000年以上続いた「ヤンガードリアス」(Younger Dryas)と呼ばれる小氷河期(気候寒冷期)が地球全土を襲います。この時、大型動物を捕獲できなくなった人類は、狩猟採集生活から農業を中心とした生活に移行し、定住地を作りました。ここから、メイズ(古代トウモロコシ)や小麦の栽培、稲作、野菜の生産がはじまります。

こうして安定的な食生活(と糖)に陥った人類は、わずか250年間で人口が十倍に膨れ上がりました。
ただし、農業導入以前と以後では、人類の健康状態が著しく悪化したことが近年の調査でわかっています。
調査によれば、農業導入以後は糖代謝の問題から抵抗力が落ち、集団で暮らしはじめたことで感染症が蔓延しました。

この様相は、現在と似ています。

現代社会では、コーンシロップや小麦は、糖と混じって形を変えてどこでも安価で購入できるようになり、都市に密集する生活スタイルが構築されました。
このような糖質過多な生活により、免疫力が激減し成人病が急増。
なにより、この350年間で人口は15倍以上に膨らんでいるのです。
こうして、感染症が拡大する下地が出来上がりました。

今週、新型コロナウィルス感染拡大するニュースを幾度となく街中で目撃しましたが、問題はウィルスなのか人間の社会なのか?

いま吹き荒れる新型コロナウィルス感染拡大から身を守るためにも、人間本来の食事に戻し、良質な牧草牛だけを食べる今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.596 11月18日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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