やまもといちろうメルマガ「人間迷路」より

「AV出演強要問題」揺れるオフィシャルの対応



 このところ、毎日新聞の強力なキャンペーンもあって、アダルトビデオへの出演を強要するAVプロダクションや流通の問題がかなり詳しく世の中に出るようになってきました。朝日新聞、産経新聞も大きく問題を取り上げ、問題の所在を明確にしようとさまざまな証言に基づいた記事が出回るようになっています。

 この問題については、大きく筋を分けると二つありまして、ひとつがスカウトされた女性らのアダルトビデオへの出演強要を特定の人権団体が告発した問題と、派遣法などで警察庁・警視庁が具体的にアダルトビデオ業界に対してがさ入れ、摘発も辞さない方向へシフトしている問題とがあります。前者はどちらかというとメディアの文脈、後者は当局対応の文脈であるため、似ているようでまったく異なっていて、実のところ二つの筋は連動していません。実際、特定の人権団体が被害相談を受けているにせよ、話題となっている当該弁護士が警察庁の一連の動きをまったく察知していなかったり、関係会社の捜索にあたった当局担当者が個別の人権問題に発展していることを新聞が報じるまで知らなかったりするわけです。

 アダルトビデオの出演強要問題自体は、個別の事案として業界が女性ときちんと契約を交わせばそれで大人同士なのだから法的に問題ないはずだ、とする業界関係者やAV女優の話を、人権団体、警察庁など当局ともに「仮にその時点でお互いの合意があったとしても、契約書面の中に“成人向け作品への出演も含む”という簡素な文言を紛れ込ませていることをもってアダルトビデオの出演を本人が許諾したと業界がいうのであれば、その業界慣例自体に問題がある」と判断されるなど、かなり煮詰まっている節があります。

 また、アダルトビデオ業界に関しては、Tポイントカードを運営し、一時期は上場企業でもあったカルチャーコンビニエンスクラブ(CCC)や、FX事業や証券、英会話など多角化を強く推し進めるDMMグループなど、非上場ながら実際のビジネスシーンでの影響力の大きい各社の存在が問題をよりややこしくしています。さらには、先日不起訴に終わったものの実態についてはかなり解明されたとされるFC2や、大手AVソフト制作や流通を担うマークス、CA(DMMグループ)といった企業の動向は、最近かなり神経質にウォッチされるようになってきました。

 さすがに被害を申し立てる件数が急増し、NHKまで特集を組むようになってくると、取り締まる法律がないという事態に対する早急な改善を求められるようになります。つまり、アダルトビデオ名指しで問題視された結果、実態を改善させるための新法が作られたり、問題業者に対してある種の「別件」のような対応をし始める危険性が高まります。それだけでなく、その手のアダルトビデオ関連の「商法」については、現段階でも問題視する当局者も多いことから、FC2のようにまずは摘発してみようというような動きがでないとも限りません。

 本来であれば、業界側も然るべき危機意識を持って早々に対処しなければならないはずが、むしろ筋論として微妙なアダルトビデオ業界OBや元AV女優などを前に立てて「業界は悪くない」と喧伝してしまって反省するようにも見えないという点で、神経を逆なでし、解決する意志が乏しいのではないかと思われている始末です。いろんな企業に飛び火するであろう地味に厄介な問題だと思う一方、とっとと対処しておかないと消費者金融なみの業界つぶしになってしまう恐れもあるので、どうにかならんのかなあと思います。

 儲かっている業界が汚い下部構造をもっているからイカンという単純な話で進まないことを祈るほかありません。

 

やまもといちろうメールマガジン「人間迷路」

Vol.160 出演強要問題で揺れるAV業界の今後や混迷極めるポスト都知事選のあれこれを憂えてみる回
2016年7月29日発行号 目次
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【0. 序文】「AV出演強要問題」揺れるオフィシャルの対応
【1. インシデント1】小池新党ムードと有象無象問題
【2. インシデント2】今年は自動運転車の話題が昨年以上に盛り上がりそうですね
【3. 迷子問答】迷路で迷っている者同士のQ&A

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やまもといちろう
個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。サイバーインテリジェンス研究所統計技術主幹など歴任。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。日経ビジネス、文春オンライン、みんなの介護、こどものミライなど多くの媒体に執筆し「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。

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