高城剛メルマガ「高城未来研究所「Future Report」」より

本当に自分が進みたい未来へ通じる道はどこにあるのか

高城未来研究所【Future Report】Vol.469(2020年6月12日発行)より

今週も、沖縄本島北谷にいます。

例年この時期は、北半球で移動を続け、どなたかにお会いにしに出かけるわけですが、今年は僕が珍しく同じ場所に長く滞在していることもありまして、また、自粛解除になったこともあって、遠方からわざわざ訪ねてくる友人知人が絶えません。

そんな中、久しぶりにお目にかかった知人から、一冊の本をいただきました。
電子版もない、四半世紀近く前の古い本で、「ぜひ、いま読んでください」と、一冊の本を手渡されたのです。

その本には、「ポストコロナ」ならぬ「ポスト日本人」を目指すことが書かれていました。

主旨を要約すれば、

・徳川江戸幕府以来の「みんなで、がんばる」のではなく、これからは、会社組織を脱し、「ひとりで、がんばる」ことをしなければ、生き抜けない時代になること。
・「デジタル」は、単なる情報化ではなく、あたらしい感性や生き方のようなものであり、これが、21世紀に生きるキーワードになること。
・ファミリーの形態が変わり、家電から個電、そして外電に向かうこと。
・家族の団欒もお茶の間ではなく、ハワイ旅行など「外」に向かうこと。
・2010年過ぎには、UDTVと呼ばれる4Kテレビと、メガネにしか見えないゴーグルが登場すること。
・一方、人々は、高画質より、低画質でも多様で選択の幅がある映像を求めるようになること。
・映像ウインドウが増えることにより、誰でも出演者になり、一攫千金を狙えること。
・情報はレイヤー化し、無料なオープンマーケットに、有料で限られた人に限られた情報を提供するクローズド・マーケットが内包されること。
・情報社会の本質は、時間革命であること。
・元来、ネットワーク社会は中央集権型だが、インターネットを正しく活用すれば、それを変える力を持っていること。
・「在宅勤務」は、米国とは異なり、家族と同居する日本の狭い家屋に向かないこと。
・だから、日本では「どこでも勤務」できる体制を個々で作ることが、オンライン社会では求められるようになること。
・そのためには、「自宅」、「会社」とは別の「第三の土地」を、個々が発見する必要があること。
・その「第三の土地」では、環境問題を克服するため、太陽光発電などを装備した「スマートガーデン」作りを目指すこと。
・今後、ますます大情報時代=大映像時代=大移動時代になること。
・単なる国際人ではなく、日本人としてのアイデンティティを持った国際人にならなければ、埋没してしまうこと。
・21世紀の流通革命は、移動とデリバリーにあること。
・サービスそのものをデリバリーする「サービス・デリバリー・サービス」が普及すること。
・デリバリーは、オンラインとオフラインの両面バランスが鍵で、コンビニさえもが生き残るには、デリバリーが鍵を握ること。
・学歴社会が、日本の成長の足をひっぱること。
・日本は知られざるギャンブル大国、風俗大国で、これが、可処分所得をエンターテイメントに向かわせない要因になっていること。
・20世紀は米国の時代だったが、それを脅かすのは、バチカンと中国であること。
・高齢化社会の概念を変え、75歳までを就労人口と再定義すること。
・日本の問題は、国家財政破綻や増税により、人々の生活が苦しくなること。
・今後は、国単位でみるのではなく、都市や地域単位でみること。
・近隣では、シンガポールの金融、韓国や台湾のシリコン生産が、アジアの将来を握っていること。
・2020年に前後して、環太平洋を、ひとつの庭として考える動きが出てくること。

などが、書かれています。

実はこれ、いまから25年近く前に出され、すでに絶版になっている僕の本なんです。

久しぶりにお目にかかった知人は、「いま、これを読んで、本人はどう思うのか」と考えたらしく、わざわざ沖縄までやってきました。

著者に昔の著作について尋ねるのは、なかなか面白いもので、僕も、とある作家に昔の作品について根掘り葉掘り聞いたことがありますが、まさか、僕にその日がやってくるとは、考えたこともなかった上に、元来、忘れっぽい性格なこともあって、まったく内容を覚えていませんでした。
ただ、二十数年ぶりに読む自著は、とても新鮮でした。

知人を前に、バッーと流し読みしながら、「8割ほどは、いまもこの方向に進んでいると思います」と答えたあと、「ただ、ひとつ欠けているものがあって、それは、精神性の成長や魂が成熟するために、個々がなにを行わねばならないのかが、書かれていません。デジタル・トランスフォーメーションが迫りくれば来るほど、より本質に近いものが大切になるはずです」と、お話しました。

それを聞くと、古い知人は安心したように、踵を返し帰路につきました。

この本は、まだ僕が二十代の時に、インタビューや講演会で話していた言説を、数年かかってまとめた一冊です。
たとえ、情報化社会が進んでも天変地異が起きても疫病が流行っても、また、私事で大事があっても、人の本質は変わってはなりませんし、多少の社会変動で右往左往してもなりません。
それがわかるようになったのは、僕自身の精神性の成長や魂が成熟したからなんだと、四半世紀前の自著を見ながら、改めて実感しました。

僕より少し年上で、幅広く飲食業を営んでいた古い知人は、おそらく「ポストコロナの自分の在り方」を探していたんだと思いますが、どんなに時代は変わっても、本当の自分を変えてはいけないと、きっと感じたはずです。

現在、各地方で随時休業要請が解除され、精神的にも自粛解禁が見られ、多くの人たちがやっと落ち着き払って、次の道を探しはじめたように見受けられます。

未来社会を予測するのは、そこまで難しくありません。
しかし、自分の正しい未来へと進むのは、欲や恐れが邪魔して見えなくなるものです。

欲望を横に一度置き、リスク管理も一切忘れて、本当に自分が進みたい未来へ通じる道は、どこにあるのか?

いま、多くの人へ、精神性の成長や魂が成熟するための好機が訪れているのだろうな、と昔の自分を振り返りながら思う今週です。
 

高城未来研究所「Future Report」

Vol.469 2020年6月12日発行

■目次
1. 近況
2. 世界の俯瞰図
3. デュアルライフ、ハイパーノマドのススメ
4. 「病」との対話
5. 身体と意識
6. Q&Aコーナー
7. 連載のお知らせ

23高城未来研究所は、近未来を読み解く総合研究所です。実際に海外を飛び回って現場を見てまわる僕を中心に、世界情勢や経済だけではなく、移住や海外就職のプロフェッショナルなど、多岐にわたる多くの研究員が、企業と個人を顧客に未来を個別にコンサルティングをしていきます。毎週お届けする「FutureReport」は、この研究所の定期レポートで、今後世界はどのように変わっていくのか、そして、何に気をつけ、何をしなくてはいけないのか、をマスでは発言できない私見と俯瞰的視座をあわせてお届けします。

高城剛
1964年葛飾柴又生まれ。日大芸術学部在学中に「東京国際ビデオビエンナーレ」グランプリ受賞後、メディアを超えて横断的に活動。 著書に『ヤバいぜっ! デジタル日本』(集英社)、『「ひきこもり国家」日本』(宝島社)、『オーガニック革命』(集英社)、『私の名前は高城剛。住所不定、職業不明。』(マガジンハウス)などがある。 自身も数多くのメディアに登場し、NTT、パナソニック、プレイステーション、ヴァージン・アトランティックなどの広告に出演。 総務省情報通信審議会専門委員など公職歴任。 2008年より、拠点を欧州へ移し活動。 現在、コミュニケーション戦略と次世代テクノロジーを専門に、創造産業全般にわたって活躍。ファッションTVシニア・クリエイティブ・ディレクターも務めている。 最新刊は『時代を生きる力』(マガジンハウス)を発売。

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